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ナギ記  作者: 竜顔
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エイロー二日目:地下通路

 休憩時間が終わり、準備の手伝いのため今度はダンスホールへと向かう。ダンスホールは二階の3分の1くらいのスペースを使った広さで、ダンスホールとはいうものの用途は多岐にわたり、今回は個人主催の立食パーティーが開かれるそうだ。


 っというか拘束時間が長い。隠しクエストだから?


 まずは掃除。床を箒で掃き、雑巾がけ。それからパーティー用の飾り付けが行われる。事前に用意された紙テープや、造花などで飾り付けていく。


 男性スタッフによりテーブルが運び込まれると、そこにも飾り付けを邪魔にならない程度に行う。


 会場準備の作業が終わり、数人のスタッフは残ってパーティーの際の打ち合わせが行われる。関係のない私たちはスタッフルームへ戻り次の現場へ。


「次は何ですか?」


「お風呂掃除です」


 お風呂なんてあるの? と思いながらついていく。


 一階から大広間へ出て、恥ずかしい思いをしつつ進む。カジノへ向う階段の反対側に下へ下りる階段だけがあり、そこを下りて地下へ、こちらの階段も折り返しがあるので本来は右に曲がるはずだけど、なんと左に通路がある。


「地下通路です、ここを使って大浴場に向かいます」


 私の疑問を察してくれたのかメルサさんが答えてくれる。メイド数人で移動しているけどメルサさんの横をぴったりついていく。


 一度右に曲がって進む。まだ時間ではないらしく人はあまりいない、営業時間というものがあるらしい。


「いつでもお風呂に入りたいという人はいないんですか?」


 疑問に思ったので聞いてみる。それとも「いつでも」はカードが必要なパターンとか?


「そういう人もいるかもしれませんね、実は大浴場はホテルからしか行けないのですが、カードは必要ないんです、そこが怪しいと考えてる人もいるみたいですね」


 メルサさんもそう考える一人だそうだ。あと――と続けて


「バニードールへ行く地下通路はまた他にあるみたいなんです、だからその通路を使えば上から二番目のランクのカードが必要な場所にも行けると思うんです、それが大浴場と関係がある場所だというのが私の推理です!」


 メンバーズカードの話となるとメルサさんは目の色が変わる。私と仕事をしているときはいわゆる「困り顔」とむっとした表情の混ざった顔なのに…原因は私だけど。


 バニードールとヘルオアヘブン(カジノ&ホテル)と大浴場、地下でつながる三つの建物、確かに怪しい。あとで検証してみようと思う。


 話しているうちに階段の前に着く、この階段を上がった先に大浴場があるようで、上へ。


 大浴場はまずロビーがあって正面にはカウンター、カウンターの両脇に入り口があり、右が男で左が女と書いたのれんがかかっている。


 私とメルサさんは女湯の方の担当なので、男湯担当の人たちと別れる。のれんの先は脱衣所となっている。


「私とナギさんは浴場の方のようですね」


 メルサさんと他二人とともに浴場の方へ――


 浴場は入って右はすぐ壁で、壁には鏡とシャワーがいくつか並んで取り付けられている。左ななめ前は大きな浴槽があり、左奥にはそれより小さい浴槽がある。小さいほうの浴槽にまっすぐ向かうと途中から左側にスペースができる、そちらを向くとサウナ室があった。


 私はシャワー周辺を任され、残り少ないシャンプーや、小さくなった石鹸を、カウンターのNPCから新品と交換してもらう。


 お風呂掃除が終わり、地下通路を通って再びスタッフルームに返ってくる。


「次は何ですか?」


 そうやって聞くとメルサさんは微笑みを返し、


「これでナギさんに手伝ってもらう分は終了です、ホムラさんの方ももうしばらくしたら終わりますのでお待ちください」


 と言われ、やっと終わったという解放感がやってくる。足を引っ張りまくっていたので達成感はあってはいけない気がする。


 しばらくしてホムラが戻ってきて、依頼主でもあるホテルのスタッフから「助かりました」の一言をいただいた。メルサさんに「ほんとに助かりましたか?」って聞いたら、「普段は一人なので助かりましたよ」と笑顔で返された。それが本音であることを祈ろう。


 今回の報酬はお金とホテルの制服、つまり私の場合水色のメイド服だ。なんかコスプレ用の品ばかりもらってる気がする。一応性能は私の現在の装備よりはいいんだけど。


 報酬を受け取り、ホムラと互いに何をしていたか報告…の前に


「このホテルからバニードールへ行ける方はいませんか?」


 依頼主に尋ねると、しばしお待ちを、と言ってその場を離れ、しばらくたって一人の男性を連れてやってきた。


 180cm前後のホムラより微妙に背が高く痩せ形、白髪頭の老スタッフだった。


「では、ご案内いたします」


 その老スタッフの手にはカンテラのようなものがある。不思議に思ったので一応聞いてみる。


「カンテラですか?」


「ええ、今はカジノが休業中でして…私はカジノを管轄できる立場にございませんのでカジノの明かりをつけることさえできません、ですから別の明かりが必要となるのです」


 説明しながら歩いていく、階段を下り真っ暗なカジノへ、カジノに入って左に曲がりカウンターがあるけど素通りし、カウンターの横にある扉へ、老スタッフはそのカギを開けて扉を開き


「この先へは私は入れませんので、ここからはお二人でお進みください、道に沿って行けばバニードールへ着くはずです」


 私たちは地下通路へ、道は一本道、そう思ってまっすぐ進んでいると右へ向かう分かれ道が一つ。地下通路を右に曲がる、そこの行き着く先に心当たりがあったので右に曲がる。ホムラが一度止めたが、確認だけさせてとお願いした。


「ここから先は会員様でなければだめだ」


 どっかで聞いたセリフを吐く人物がいた。もっともここを通るつもりはないのでメンバーズカードを見せて質問する。


「この先って上から二番目のランクのカードが必要ですよね? それと、大浴場と関係していますよね?」


「そうです、この先には大浴場の二階につながる階段があります、大浴場の二階からは『エンジェルプレイス』となっています」


 カードを見せたせいか口調が丁寧になっている。「エンジェルプレイス」は大浴場の二階部分と三階部分を使っていて、二階部分は主にリラックススペースとなっており、ダーツやビリヤードといった遊技場、エステサロンなんかがあり、三階部分は個人用のやや広めの風呂がある。


 そして夜になると「シャングリラナイト」と呼ばれる空中大浴場に行くことができるらしい。全面ガラス張りのようになっていながら外にいる人からはその存在を認識されない特殊空間で、空から夜のエイローを眺めることができるものだとか。


 つまり、メルサさんの予想は当たっていた。今度そのことだけでも教えてあげよう。


 今は用がないのでエンジェルプレイスへは行かず元の道に戻る。進んだ先にバニードールの店があった。


「あら、今日はそっちからなのね」


 バニー・バーンさんはNPCと何か話していたけど、その話を打ち切り私たちの方へ寄ってくる。


「こっちから来たってことは、リラックススペースへ行ったの?」


 よらなかったことを伝えると、「小娘にはまだ早いわよね」と言われる。今日は忙しいからと追い出されるようにして私たちは宿側から出る。


 宿の食堂で食事をとりつつホムラと互いに今日の報告を行う、っといってもほとんど私が話す側だった。


 ホムラはこれから用事があるみたいなのでこの後はまた明日、明日は街の外に出てみようということになった。


 私も夜ご飯の時間が近づいていたのでログアウトした。


――――――――――

NAME:ナギ

 【投擲】Lv28【STR上昇】Lv3【幸運】Lv19【SPD補正】Lv22【言語学】Lv32【視力】Lv13【】【】【】【】


 SP21


称号 ゴブリン族の友

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