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ナギ記  作者: 竜顔
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ダウジングマッシーン

 ホレイーズイベントの時にちょいちょい出てきた車掌さんのラドムスさんと蜃気楼の村の村長さんの以外すぎる接点を知った翌日。


 午前中から昼過ぎにかけて夜の時間であることや、村長さんの家で作ってもらっている光の果実を使った何かができるのが夜の時間帯が終わるころなので、それまでの間に現実のできることを済ませる。


 丁度夜の時間が終わるのを見計らってログインする。すでに舞浜君はログインしていた。


 どうせ蜃気楼の村にいるだろうと思いコールは使わずに探す。もしかしたらすでに村長さんの家にいるかもしれないし、いなくてもすぐに来るだろう。と村長さんの家へと向かう。


 村長さんの家に行くと、いつものように高床の玄関の下に村長さんは立っていた。遠目から見ても舞浜君がいる気配はない。ここじゃなかったんだろうか。


「どうかしたの?」


「うわぁ!」


 不意に後ろからかけられた声に思わず大きな声を上げてしまう。その声で村長さんは私に気づきこちらの方を向く。私はそれにお構いなく背後の人物へと振り返る。


「驚かせるつもりはなかったんだけど…」


 申し訳なさそうに佇む舞浜君がいた。


「いつの間に背後に!?」


「えーっとついさっきかな? 気づいてるかと思ってたんだけど…」


 と私の問いかけに舞浜君は答える。どうやら村長さんの家に向かう途中からついてきているみたいだ。私を見つけて慌てて近寄り、声をかけようと思うと私の歩くペースが上がったので気づいたんだと思ったそうだ。


「それからは声をかけたら負けな気がして」


 と彼は視線を逸らした。


 ここ数日と比べて今日はプレイヤーも多く、一応今目に入る範囲にはそれらしき人は見当たらないけど村の大きさを考えるとさっきの大きな声は他のプレイヤー達にも効かれている可能性は高く恥ずかしい。


「それよりもほら、村長さんがこっち見てるし、行こう」


「それよりも?」


「えっ、あ、いや、村長さんを待たせるのも悪いよねぇ、あははは」


 そそくさと村長さんの方へと向かうごまかしが下手くそな舞浜君の背中を睨みながらついていく。


「仲がよろしいですなぁ」


 私達が目の前にやってくると村長さんは優しく微笑みながら出迎えてくれた。


「それで、あの…昨日言っていたあれは」


「もう完成していると思いますよ、中に妻がいるはずですから聞いてみるといいですよ」


 と言われたので村長さんはそのままに家の中に入る。ちゃんとノックもしましたよ。


「はーい、いらっしゃい」


 おばあさんはドアを開け私達を出迎えるとそのまま家に上がるように促すので、促されるがままにお邪魔する。


「ちょっと待っててね、今持ってくるから」


 と昨日と同じ部屋に案内された私達をおいて暖簾の向こう側へと行ってしまった。昨日は詮索しなかったものの今思えばあの奥がどうなっているのか見てみたい。


「あの奥ってどうなってるんだろうね」


 私と同じようなことを考えたらしい舞浜君が口に出す。とりあえず恥ずかしい思いをさせられた仕返しでスルーだ。


「……えっと、聞いてる?」


 返事のない私に不安になったのか舞浜君は再度話しかけてくる。


「ちゃんといるよね? 放置状態とかじゃない、よね?」


 確かにログアウトしなくても現実へと戻る方法はある。だけど残念。舞浜君の言葉は全て私の耳に届いている。


 ふと目だけで隣に立つ彼の方を見ると何やら真剣に悩んでいる。何を考えているんだろう? もしかして今度は一言しゃべった方が負けみたいなこと考えてるんじゃないだろうか。それとも何か一言を引き出すために考えをめぐらせているのか。ここら辺で何か喋っておいた方が変なことが起きるのを回避できそうな気がする。


「お待たせ」


 探り合い(?)の切り所が分からず困惑しているといいタイミングでおばあさんが暖簾の向こうから出てきた。その手には弱弱しく光を放つ光の果実に棒がついているだけの…提灯のようなものを持っていた。


「これが…例の?」


「そうですよ、何の変哲もない提灯があら不思議! キノミントゥルースの居場所を教えてくれる探知機っていうのかしらねぇ? になるんですよ」


 戸惑う私達をよそにおばあさんは手に持っている物の説明をしてくれる。今聞き捨てならないことを言った気がするよ?


「キノミントゥルースの居場所を教えてくれる? …んですか?」


「そうですよ、こうして先についている玉を小突くとね」


 私の質問に答えながらおばあさんはそれを実践する。棒の先についている提灯部分――光の果実に見えるけどどうやら違うらしい――を小突くと一瞬眩い強力な光を放ち、それから一定のリズムで強弱の明滅を3回ほど繰り返す。明滅の時の強い光は元々の弱弱しい光に比べてなので目に優しいレベルだ。


「これに近い木の実から順番に一緒にチカチカし始めて、その終着点がキノミントゥルースになるんですよ」


「へぇ、そうなんですか」


「一度森に出てみればわかると思いますよ、はい、どうぞ」


 分かったような分からないような態度で返事をする舞浜君におばあさんは優しく微笑みながら提灯もどきを渡す。


「じゃあ行ってきます」


「いってらっしゃい、気を付けて」


 提灯もどきを受け取った後おばあさんに挨拶して村長さんの家を出る。階段を下りた先の村長さんにも軽く挨拶を交わして森の方へと向かう。


「本当に役に立つのかな? それ」


 森に入る前に私は今舞浜君の手にあるそれを半信半疑の視線で見つめる。


「話を聞いただけだと結構使えそうだけど…」


 舞浜君もまだ半ば疑いを持っている感じだ。


 森に入ると早速木の実を発見。一つどころか近くにいくつか実っている。


「じゃあ使ってみるから、ナギさんは周囲の木の実をよく見ててね」


「はーい」


 私は提灯もどきから視線を外して周囲の木の実に目を凝らす。


 すぐに視界から外れた提灯もどきの光が私の視界にも侵入する。目線を外した分だけ光の強さもマイルドになっている。


 私が目を凝らしていた木の実はどうやら三番目の距離になるようで、同じアングルから見える木の実の明滅を追うように明滅する。


 するとその明滅は奥にある木の実へと移り、どんどん奥の木の実に伝播していく。


「こっち」


「あっちも明滅してるんだけど」


「え?」


 奥に進もうとした矢先、背後からの舞浜君の声に振り替える。確かに舞浜君の言うとおり私が目で追っていた方向と反対側の木の実たちも順々に明滅し始める。


「ルートが二つってことは追って行けばキノミントゥルースが二つ?」


「……でもどっちも見失っちゃったよ」


 舞浜君は少し興奮するように言うけど、そんなことをしているうちに明滅のルートを見失う。


「二兎を追う者一兎も得ず…だけどどっちを優先しようか?」


「じゃあ舞浜君側で」


「了解、じゃあもう一度いきます」


 再び極力視線を提灯もどきから外して適当な一個を見つめる。少しして横で何かが強く光ったのを感じて先ほどのルート上の木の実に目を移す。


「こっち」


「あっ」


 ふと見たら舞浜君の視界は回復しきってなかったみたいなので手を引っ張って木の実の明滅を追う。


「分岐はしてないみたいだね」


「一本道なら楽勝…?」


 と舞浜君が調子に乗った結果。


「終着点ってどこ?」


「さぁ?」


 問題点が一つ。明滅は延々に起こるわけじゃなく、どれも一律に3回ほど。秒数で言えば10秒もない時間だ。しかも1回目の明が終わり、滅になるタイミングで次の木の実の明滅が始まる。明滅を見失うとそれが時間切れによるものなのか、それとも終着点というやつなのかわからない。


「でもここまでは来たんだよね」


「じゃあもう一回やります」


 と再度同じ手順で行う。すると光は二手に分かれた。


「どっち?」


「両方…?」


「元々私達が追ってた方の話」


「両方? …いや、そんな睨まれても」


 舞浜君はあんまり頼りにならない。


「あ、でも一つは追ってきたルートと逆行しているみたいだから…こっちなんじゃない?」


 舞浜君が思いついたように言うも、すでに明滅のリレーは見えない。


「多分この提灯を中心にしてキノミントゥルースの所まで導いてくれる感じなんじゃないかな? だからさっきの場所で二つに分かれたようにここでやっても二つに分かれるんだよ」


 明滅リレーを見失ったと思っている私とは違い、舞浜君は提灯の分析に入った。


「じゃあ次はこれまで通りのルートを追って、見失ったところで始めたらまた分岐するか調べてみよっか」


 舞浜君の仮説を実証する方向でもう一度トライ。


「30分提灯使えないみたいだね…何度もポンポン使えたらすぐキノミントゥルース見つかっちゃうしね、あははは……」


「このルート上をくまなく探せば見つかるんじゃないかな?」


「採取はもちろん…」


「舞浜君」


「ですよねぇ…」


 こうして採取活動が始まった。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン玄人】Lv43【STR強化】Lv43【ATK強化】Lv38【SPD強化】Lv36【言語学】Lv41【遠目】Lv42【体術】Lv49【二刀流】Lv60【祝福】Lv30【スーパーアイドル】Lv39


控え

【水泳】Lv28


 SP63


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主 かまくら職

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