ファルカナンド→ホレイーズ
20万ユニークアクセス突破いたしました。
これだけ多くの方に閲覧していただけたことをうれしく思います。
また本日、連載開始から丁度一年が経ちました。当初のように毎日の連載でなくなり、最近は定期なのか不定期なのか曖昧になっておりますが、これからも楽しんで頂ければ幸いです。
「ぼふ」
修学旅行から帰ってきてそうそうお土産をリビングに置いた私は荷物をいち早く整理すると、すぐさま自分の部屋のベッドへと飛び込んだ。
夜ご飯の前のほんのわずかな休息のうちに修学旅行の思い出がよみがえってくる。
スキーは滑れるようになった。リフトも最初は怖かったけど慣れればそこからの景色を眺める余裕もあった。
すっかり運動しまくっている気分になっていたけど、VRではそこまで運動したと現実の身体は判断してはくれないみたいで、スキー2日目は筋肉痛との戦いでもあり、今もその痛みはとれていない。
夜ご飯の準備ができたというお母さんの声が聞こえたので部屋から出て一階へと降りていく。その時に失敗に気づいた。
「痛タタタタ」
階段を上る時は感じなかった痛みは降りるときには猛威を振るう。
「ちょ、うぐ!」
慎重に降りてみても結果は変わらない。
「何やってんだ?」
「筋肉痛が…」
夜ご飯の時間と見越してゲームをやめていたのか、部屋から出てきたお兄ちゃんに背後から声をかけられる。
「…邪魔なんだけど」
「いぎ!」
そろりと降りる私を見守るようにお兄ちゃんは後ろをついてくる。お兄ちゃんを通すために避けてやる余裕もない。
「仕方ねえ、抱っこしてやるから掴まれ」
「うげ!」
「嫌そうな顔をするなよ」
向かい合って抱き合い、私の足が少し浮く程度に持ち上げてお兄ちゃんは階下まで運んでくれた。
夜ご飯を食べた後、お風呂に入って頃合いの時間にベッドに入ってそのまま眠りについた。
翌日。週末の二日を挟んだために振り替え休日も二日。筋肉痛で痛む体を一生懸命起こして一階へと降りていく。
背後には誰もいなかったのでマイペースでゆっくり一階へと降りた。
朝食をとった後着替え等を済ませた後二階へは上がらず、一階でのんびりする。
夕方ごろになって漸く自分の部屋と向かいゲームへとログインする。
修学旅行前にたどり着いた王都ファルカナンドの空は快晴。ゲーム内の時間は昼だ。フレンドリストを確認すると、ファルカナンドへ向かい隊のメンバーでログインしているのは舞浜君ぐらいだった。
そういえば修学旅行中に舞浜君とも一度だけ話をすることがあった。まぁ大した話はしてないけど。
早速舞浜君にコールをかける。
『舞浜君どこにいますか?』
『秘密、すぐそっちに行くから待ってて』
丁寧に尋ねたのにまさかの秘密だった。そろそろクゥちゃん達がログインしてもおかしくない時間になりつつあるのでそれを見計らって用事を済ませていたのかもしれない。
「お待たせしました」
コールから数分。舞浜君はやってきた。
「修学旅行、お疲れ様です」
「それを言うならナギさんも」
と舞浜君は笑う。
「っていうか舞浜君平気そうだね?」
「何が?」
「筋肉痛」
現実では私があんなにつらい思いをして、ゲームでも動くときにびくびくしてしまっているというのに彼はケロッとしている。これが男女の違いと言うやつか。
「え? 結構つらいよ、階段下りるときマジきつい」
どうやら私の仲間だったらしい。
「リアルじゃ体動かないからこっちに来たんだよね、ナギさんは昨日もログインしなかったし、今日もみんなが来る時間帯に合わせて来てるよね?」
「私も階段下りるの辛かったから一階へと降りる回数を減らすには一階にいればいいと思ってたから、…舞浜君は昨日もログインしてたんだね」
「えっ? あぁ、って言っても少しだけ、帰って来たよって顔出す程度」
と会話をしているうちにクゥちゃんがログインしてきたようでコールが入った。
『ナギちゃんお帰り!』
『ただいま~』
『今どこ? ファルカナンド?』
『うんそうだよ』
『分かった』
とクゥちゃんはいつになく言葉が前のめりな雰囲気だった。
クゥちゃんは別の場所に行っていたらしく、私達が修学旅行から帰ってくるからと事前にファルカナンドでログアウトしていたバカップルよりも到着は後になった。
シンセさんが合流したところでファルカナンドから出発する。次の目的地はホレイーズだ。
ファルカナンド王国領内のモンスターは「ファルカナンド・○○」というモンスターが多い。その代表でもある「ファルカナンド・ウルフ」は動きがすばしっこいくせに口からビームを撃ってくるので一旦距離を取ろうとするにも一苦労だ。
外見は至って普通のモンスターが多い。ファルカナンド・ウルフにしてもビギの東にいるノーマルな「ウルフ」と同じ外見だ。
食物連鎖も意識されているらしく、草食動物も見かけることができる。草食動物系はノンアクティブなモンスターしかいない。
ホレイーズは遷都した王都ファルカナンドの北に位置している。そして同時にホレイーズに近づくほど草原のさわやかな緑がまばらになり、荒野へと続いていく。
聞いた話によるとホレイーズはそのイベント時の範囲からさらにその周辺一帯を巻き込んで大きな建物と化してしまい、その建物からはみでた地域まで含めてホレイーズと呼ばれるようになっているらしい。
地面の緑が完全に消える頃、荒野の向こうに異様に大きな建物が目に映り始める。そして同時に出現するモンスターにも変化が現れ、ゴーレムや鷲っぽい鳥系モンスターが徘徊するようになる。これらはほとんどがアクティブモンスターで、頭上から攻撃してくるモンスターには私やシンセさんの空飛ぶモンスターぐらいしか有効だがなく、ゴーレムは土でできているとはいえ物理系には強いみたいでこれまたミカちゃんの魔法やシンセさんの魔法が使えるモンスターに頼らざるを得ない。
大きな建物が近づくと荒れ果てた土地だったはずが気づけば作物などが育てられている土地へと変化する。目に見えてはっきりとわかる区切りがなかったせいで気づかなかったけど、どうやらホレイーズに到達したらしい。
シンセさんに案内されて建物の中へとつながる列車に乗り込む。この建物は一階部分だけでイベント時のホレイーズの監獄棟と同じ高さだという。そしてそれが三階層分。しかも一階部分と二階部分は監獄として使われているらしいし…。これだけ大きくしてはたして囚人はどれほどいるのだろうか。余分なのでは、と思う大きさだ。
列車に乗って思い出したんだんけど、王都ファルカナンドからホレイーズの「処刑の谷」まで直通の鉄道があったはずだ。もっと早く思い出していれば時間をもっと短縮できたのに、と歯がゆく思う。
数分のうちにホレイーズへと到着する。ホレイーズ三階「交易街」。ホレイーズへとやってきた旅人やお客さんが最初に訪れることになる地域だ。
「転移ポータルはこっちにあるのよぉ」
シンセさんはふわふわとした足取りで転移ポータルの方へと案内してくれる。
転移ポータルに乗って王都ファルカナンドへ再び戻ってきてそこで本日はおしまい。一度解散する。私は夜ご飯の時間が近かったのでログアウトした。
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NAME:ナギ
【ブーメラン玄人】Lv40【STR強化】Lv42【ATK強化】Lv35【SPD強化】Lv35【言語学】Lv41【遠目】Lv42【体術】Lv49【二刀流】Lv60【祝福】Lv29【スーパーアイドル】Lv38
控え
【水泳】Lv28
SP60
称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主 かまくら職人




