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ナギ記  作者: 竜顔
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昼の姿と夜の姿

「夜の…街?」


「欲望の女神の街の方がいいかしら?」


「その女神というのはもちろん「あたしだよ!」――ですよねぇ」


 危ない、つい地雷を踏んでしまうところだった。バーンさんはまた顔をイラつかせてこちらをにらんでくる。


「――っと、そういえばさっきイベント期間中はどうのって言ってなかったか?」


 ホムラの口調が元に戻っている。


「ええ、そうよ、この街は実装される前の試運転的な感じね」


 ホムラの予想の一つ、「この街は先行お披露目」説、が立証された。


 そしてホムラが気になることを次々と質問していき、バーンさんが答えていく。


 スキルのLvが簡単に上がることに関しては、


「この街のコンセプトは『欲望渦巻く街』ってところかしら」


 エイローの中心には大きな建物があり、その地下がカジノになっているらしい。その建物の2階以降もホテルとなっているけど、建物の周辺もホテルや宿が立ち並びある種のホテル街のようになっているとか。あくまでコンセプトの雰囲気を出すためで、変なことはできないようになっているとのこと。


 イベントではほとんどのプレイヤーがこのホテル街に指定宿があるらしい。


 カジノは「金」という欲望を表現し、ホテル街は「口では言えないこと」という欲望を表現しているとのこと。そして、「力」という欲望を表現してスキルのLvが上がりやすくなっているとか。


「スキルLvの高さに関係なくLvが上がりやすいクエストも何か意味が?」


「それは単純にパートナーとの兼ね合いね」


 第三陣受付開始からまだ二週間ほどしか経ってないことと、今回のイベントでは基本二人一組での行動ということもあって、運営は実力に差がない者同士で組む確率が高いと考えていたらしく、能力の高いプレイヤーが実力差がある相手と組んだ場合のメリットとして、スキルの上がりやすさを能力の低い方のプレイヤーを基準にしたクエストも用意したとこと。


 また、ホムラはクエストでも木材運びのように何回も受けられるクエストがあったり、薪割りのように一度しか受けられないはずなのに頼めば何回も受けることができることが気になったようだった。


 薪割りのように掲示板に貼ってある内容分以上でも融通が利くクエストがあるということは、掲示板に貼ってないクエストも存在すると考えていたらしい。


「坊や、勘が鋭いのね、坊やの言ってる事は間違ってないわ、ここまで言えば話の流れからわかると思うけど」


「ああ、要するに掲示板に貼ってある依頼は昼の姿にかかわる内容、貼ってないのは夜の姿にかかわる内容ってことだろ? そして隠しクエストはポイントも高いってことでいいのか?」


「ポイントに関しては言及しちゃいけない決まりだから何とも言えないわ」


 そしてバーンさんは他にも、何回でも受けられるクエストもそのうち受けられなくなると教えてくれた。


「どうして受けられなくなるようにしたんですか?」


「他人の強くなるチャンスを潰したければ潰せるし、逆に自分が強くなるチャンスを潰されたくなければ早めにそのクエストを消化しときな! ってこと」


 自分が最強でありたいという意味での「力」の欲望だとか。


 そしてしばらくホムラの質問が続く。カジノがある建物は地下を抜いて四階建てで、二階と三階はNPC専用の部屋しかないらしい。四階へと続く階段はなく、四階に行くにはこの宿のポータルを使わなければならない。つまり私たちが泊まっている部屋はエイローで最も大きな建物の最上階にある部屋ということになる。


「夜の姿に近づくなら、これが必要よ」


 質問が一通り終わるとそういってバーンさんはカードを渡してくれる。それはメンバーズカードで、カジノへ入ることができたり街の店の値段が安くなるといった特典があるなど、エイローの街の至る所で使える代物とのこと。


「いいのか? 俺達だけが特別となるとトラブルになったりするんじゃないか?」


「大丈夫よ、一応条件を満たせば誰でももらえるものだから、あとここに来た記念に、はいこれ」


 バニーさんが私の前に何かを差し出す…バニースーツのように見えるので確認をとる。


「バニースーツですよね?」


「あん? 何か問題でも?」


「いえ、ありません!」


 顔が怖い!


 ホムラには男性ホールスタッフの制服が渡された、こっちは割とまともなデザインとなっている。


 それからもしかしたら「夜の日」に手伝ってもらうかもしれないからと、腕輪に連絡先登録を施すことになった。こちら側から連絡を取ることはできないけど、バーンさんからは連絡ができるようになるというものらしい。


 まずはホムラ、カードのようなものを腕輪にかざしている。そして次に私、


「いたたっ! 痛いです! 痛いです!」


 ものすごく強い力で手首を掴まれる。


「このくらい我慢しなさい!」


 そういって歯をギリギリさせるようにしながら、ギラギラした目つきで睨みつけてくる。


 ――ホムラにはあんなにやさしいのに、差別だ。


 もう用がないなら出て行けと言われ出ていく、そして一度ポータルを使い二人の部屋へ、椅子に腰かけ今後の活動方針を先ほどのバニー・バーンとのやり取りを思い返しながら話し合う。


「今日はとりあえず時間的に晩御飯だろ? それからやるんなら普通のクエストをやって、隠しクエストは明日にしよう」


「うん、わかった」


 じゃあ、と再ログインすることを伝えて一旦ログアウトするために自室へ、バニースーツは金庫に押し込みログアウトする。あれを着る機会なんてないだろう。


 ……ないことを祈ろう


 現実に帰還して、少し左手首を気にしながら下の階にあるダイニングへ、ちょうど出来上がったところらしくすでに皿が並び、一足先に兄だけが食べていた。


 食事を終えた後ホムラに伝えた再ログイン時間に間に合うか不安になりつつ、兄がお風呂からあがるのを待つ。


 兄が上がったらすばやくお風呂へ、そのあと髪を乾かし、再ログイン――


 自室から出るとすでにホムラがきていて椅子に座っていた。


「ナギ、クエストの前にメンバーズカードがどんなものか調べようと思うんだが」


 その提案を了承し外へ出る。この宿で調べようにも、【猛者の証】の効果なのかメンバーズカードの恩恵なのかいまいちわからないからだ。


 外へ出てすぐアイテム屋が見つかり、そこでメンバーズカードをちらつかせると安値で売ると言ってくれた。


 次に大きな建物へ向かう、上から見れば正方形の形をした建物のドアは透明なガラス製で両スライドの自動ドア、中に入ると少し広めの部屋があり正面に受付のカウンター。扉は見当たらず、広めと言っても外から見た建物の広さよりはるかに狭い。


「すみません、こちらは会員様しか利用できない施設となっております」


 受付のスタッフの男性からそういわれ、メンバーズカードを見せる、「会員様でしたか」と驚いたあとカウンターで何かすると、部屋の左の壁がなくなり通路が現れる。「お通りください」と言われたのでその道を通る。一度右に曲がり進む。


 その先は広間となっていた。広間には高級そうなテーブルや椅子があちこちに置かれ、高級そうな衣服を身に纏った方々が談笑している。広間に入って右をまっすぐ行くと食堂がある。広間に入って右後ろ、先ほどのカウンターの裏もカウンターになっている。こっちは部屋割りや面倒事が起こった際の雑用なんかを受け持つのだろう。


 どちらにも用はないので広間に入ってまっすぐ突き進む。正方形の建物の左上の隅あたりだろうか、右に向くと幅の広い階段があるので、下の階へ降りる。


 また左上の隅に出るので、左を向く、その先にカジノが…明かりがついていない。上の階に戻りカウンターで質問すると


「申し訳ございません、現在休業中でございます、再開までもうしばらくお待ちください」


 とのことだった。宿に戻りバニー・バーンさんに聞くと


「あら? 言ってなかったかしら、カジノは三日目からって」


 ・・・言ってないし。


 その後は結局クエストをせずにログアウトした。


――――――――――

NAME:ナギ

 【投擲】Lv28【STR上昇】Lv3【幸運】Lv19【SPD補正】Lv22【言語学】Lv32【視力】Lv13【】【】【】【】


 SP21


称号 ゴブリン族の友

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