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ナギ記  作者: 竜顔
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拮抗

 お兄ちゃん達との共闘を終えて、次の戦闘はとても起きていられないような時間だったのでお兄ちゃんのパーティの人と多少会話をした後は基本のんびりと過ごした。


 どの方角の巨大モンスターも倒されたという情報はなく、プレイヤー達もバランスがおかしいんじゃないのか、と考える人もちらほら出てきているみたいだ。だけどお兄ちゃんのパーティにはそんな人はいない。強い敵が出てくると燃え上がる…ちょっと危ない人たちだった。





「そういえば京ちゃんはイベントで戦ってるの?」


 学校の昼休み、大人数の防衛戦なので姿を見ないのも当たり前だけど、気になったので聞いてみた。


「戦ってるわよ、カルマと初めて遭遇した時はすぐやられちゃったけど」


 となぜかちょっと顎を上げて得意げなポーズをとって言う。


「なんでそんな得意げなの…」


「カルマにちゃーんとお返ししてあげたから、真・カルマはまだ倒してないけど、私も倒されてないし」


 身勝手な因縁を自ら断ちきったらしい…そして次の標的へ。女豹のような姿にうちのネコ科系を思い出す。全然雰囲気が違うけど、そういえばクゥちゃんの憧れって京ちゃんだったんだっけ、とか思うとなんか複雑な気がしてくる。


「どうかした? 私の顔をじっと見て、あ、京ちゃんに負けたぁ~、とか思ってるんでしょ」


「思ってない!」


 また変なことを言って…。隣で結衣ちゃんが笑ってる。京ちゃんがやった私の物まねが地味に似ていたらしい。


「ま、来週の今頃は修学旅行だし、スキーの前に存分に体動かしとかないとね!」


 京ちゃんは約一週間かけて体の調整を行うみたいだ。私にはそんなアスリートみたいな発想はない。




 そのあとは他愛のない話をするぐらいで、学校が終わって帰ってくるとログインする。


 ゲーム内は夜。冬の寒さにゆっくり帰ってくる失態を犯してしまったのでちょっといつもより遅れた。


 すでに戦いは始まっていて、半分近い時間が経とうとしている。珍しく私が最後だった。


「お、ナギちゃん来たよ」


「ほんとだ、事故に巻き込まれたかも、と思って心配したよ」


「舞浜、それは心配しすぎだろ」


 クゥちゃんはいつも通り、舞浜君は冗談を言うような表情で、カッサはあっけらかんと出迎えてくれる。


「ごめん、寒さに弱くて」


「「温めましょうか?」」


「結構です」


 あなた方のアツアツは逆に冷めるんです。


「今ナイトメアが出てきたところだな」


 私がログインしたのを確認した後、カッサが空見る。それにつられるように空を見上げると、夜の闇よりも一際深い黒色のローブが姿を現す。


「また街の中で夜戦ですね」


 ミカちゃんの言葉にはどこかうんざりした雰囲気が感じられた。最近は光要員として連れ出されなくなったけど、よく考えれば夜の戦闘をこのメンバーで戦ったのは昨日が初めてで、おそらくミカちゃんが町の外であんな風に戦ったのも初めてなのかもしれない。


 でもどうやらうんざりした雰囲気の理由はそれではなく、攻撃魔法を使い続けなきゃいけないことだったらしい。


 ナイトメアより湧き出る「レイス」を葬るために、小さな光魔法から大きな光魔法までを延々と繰り返し、時折ゆうくんがその口にポーションを突っ込む。


 防衛には成功したものの、今回はナイトメアを倒すこともできず、各方角の巨大モンスターも倒しきることができなかったみたいだ。


「ミカちゃんおつかれさま」


「ゆうくんありがとう」


 戦いが終わるといつにもまして別世界がバカップルの周囲に完成している。


「でもポーション口に突っ込まれてるのって外から見てると女の子としてどうなのかなって思うんだけど…」


 とクゥちゃんが戸惑うように口にする。言われてみればそんな気もするけど。


「考えるんだ! ああやってかわいくない姿を外にさらけ出させることで他の男から興味をもたれないようにする作戦なんだと!」


「ゆうくんがそこまで頭が回るとは思えないけど」


 カッサの謎の熱を帯びた発言に、舞浜君はゆうくんはそんな奴じゃないと言いたいのかもしれないけど言い方がひどいような。


「え? あ、違う違う! ほら、ミカちゃんのために、って考えだけでいっぱいなんじゃないかと」


 私の視線に何か感じるところがあったのか舞浜君は慌てて言い回しを変える。


「あの二人って現実でどうなんだろうね」


 クゥちゃんの疑問には誰も答えることができず、みんな首を傾げるしかなかった。私もあの二人の現実での姿を想像しようとして、あのまま以外は想像できず、仮にあのままで現実を過ごす人がいたら、と思うといないような気がした。


「もう、ゆうくん、みんな見てるよぅ~」


 うん、やっぱり現実でもこんな感じならこの二人は多分生きていないに違いない。


「はは、とりあえずまた夜に昼の戦いがあるからそれに備えるか、町に人が戻ってこないうちに」


「そうだね」


 カッサの言葉に頷いて、みんな生産系プレイヤーの露店などがある一角へと向かう。


「「ちょ、ちょっと待ってくださいよー!!」」


 仲のいい二人を置いていこうとしたのは二人の仲睦まじい時間を邪魔するのは野暮だと思ったからで、それ以外の感情なんて何もない。いや、むしろ二人に対する感情そのものがなかったかもしれない。


 アツアツを控えたバカップルも含めた全員でアイテムの補充なんかを済ませてログアウト。


 次の昼の戦いでは、南ばっかりだから、と西に行って生きているクルトームさんと別のパーティとの戦いっぷりを見ながらその傍らで敵兵を倒していった。


 ただ、ジェーンダークとの戦い方を知っている人がいなかったらしくて南はジェーンダークが猛威を振るい、死に戻ってはまた戦場へと向かう、いわゆるゾンビアタックというものを駆使しなければならないほどの厳しい戦いになったみたいだ。


 その戦いに参加した人曰く、最終的には10秒生きていれば上出来だったそうだ。


 ジェーンダークとの戦い方急募。の掲示板が立つほどまでプレイヤーにトラウマを与えていた。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン玄人】Lv32【STR強化】Lv36【ATK強化】Lv28【SPD強化】Lv29【言語学】Lv41【遠目】Lv34【体術】Lv47【二刀流】Lv59【祝福】Lv24【スーパーアイドル】Lv29


控え

【水泳】Lv28


 SP33


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主 かまくら職人

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