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ナギ記  作者: 竜顔
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ゴブリンネットワーク

 ジェーンダークを倒した。


 群がるように集まってくる敵兵は近くにいる味方が蹴散らし、クゥちゃんのダメージを肩代わりして瀕死の舞浜君にも回復魔法がかかり死に戻るメンバーは誰一人いなかった。最前線からは下がったものの時間いっぱい戦い続けた。


「ごめんなさい、舞浜さん」


「いやいや、別にいいよ」


 戦いが終わった後すぐにミカちゃんが舞浜君に謝る。攻撃に転じたせいであわや舞浜君が死に戻ってしまうところだったからだろう。でも、ミカちゃんの攻撃魔法が無ければ再びジェーンダークに逃げられていたかもしれないので…。


「終わりよければすべてよし!」


 と言ってやった。


「ナギさん、舞浜さんだからって雑な扱いもいいとか思ってませんか?」


「ええっ!?」


 ミカちゃんの疑うような言葉と視線に、舞浜君がひどく動揺している。


「違うから! 舞浜君が真に受けちゃってるじゃない!」


 否定の言葉と文句の言葉を同時に言う。それを聞いて舞浜君はほっとしたらしい。…ちょっと単純すぎやしませんか?


 次の夜の戦いは現実での時間帯も割と遅い時間だったので、各自で参加ということになった。私は宿題があったので参加は見送った。




 いよいよ本格的に修学旅行の話が展開される学校を終えてゲームにログイン――。修学旅行はスキー体験がメインの二泊三日。すでに班決めも終了している。出席番号順なので仲良し三人組で、とはいかなかった。


 そんなことよりゲーム内はもうじき夜が来る。そして夜の到来とともに戦闘が始まることになっている。夜の戦いと参加人数を考えればまた大変なことに…ってあれ?


「ここどこ? …あ、ビギか」


 私がいるのは廃城跡ではなかった。それなりに人も多いけど、新規と思われるプレイヤーの人や、防衛イベントに不参加の生産系の人とがやり取りしている平和な光景が広がっていた。


 何があったのかは何となく想像がつくけれど、もしかしたら何らかの不具合かもしれないし、とエイローを経由して廃城跡へと行くことができる小屋を目指す。


 私以外にも小屋を目指す人が多いような気がしたので、やっぱりそういうことなのだろう。昨日の夜の戦いは私のように夜更かしをしないような学生にとっては遅めの時間でも、社会人の人にとってはまだまだ、という時間帯だった。だから参加人数もそれなりに多かったかもしれない。


 そして、参加人数が多いときの夜の戦いのタフさは分かっている。バジルさんと戦った時だって終わった後の町の様子じゃ本当に防衛成功したのか不思議だったし。


 私が寝る前にせっせと宿題をやっているころ、防衛に失敗したらしい。


 小屋に入って廃城跡へと転移する。小屋の中で眠っている人はうなされているようにも見えた。デュラハーンが言っていた「夢の中」が本当なら悪夢を見ているんだろう。


 廃城跡…というより今は立派な城に到着する。城の形状は上から見ると口のようになっているようで、真ん中にある庭とあの小屋がつながっているらしい。


 城が立派ということは防衛に失敗しても第二ステージとやらはそのまま継続していたらしい。


 もしかしたらプレイヤー達がその意地にかけて敗北後の昼を戦い、夜を戦い三体の巨大モンスターを倒して再び第二ステージまでもってきたのかもしれないけど、多分そうじゃないと思う。


 とにかく情報を集めないと…。城の庭を飛び出し町に出る。防壁は見れるようにはなっているけど、遠目でも見ることができた壁の上の砲台は東側に一つ取り付けられているだけでそれ以外の方角にはまだ取り付けられていない。


 町の建物の復旧もおぼつかない状態で、健全な姿で聳え立つ城だけが浮いて見えるような景色になっている。


 情報屋のカッサは未だ小屋の前だそうで、彼の持つ情報のネットワークによると、やっぱり第二ステージは継続されたままらしい。


 私より遅れてすぐにクゥちゃんがこちらにやってきたので合流、そして私達よりも先に来ていた舞浜君とも合流する。


「舞浜君、昨日防衛失敗したこと学校で教えてくれなかったね」


 舞浜君は昨日の夜の戦いに参加したはずだ。なのに学校では一言も言ってくれなかった。


「え、いやだって、ナギさんの周囲には俺よりプレイ期間が長い人たちがいるみたいだから知ってるかなぁ、とか…あとは話しかけるタイミング、がわかんなかったし」


 と言われて考えてみればそうだった。京ちゃんがいるんだった。とりあえず舞浜君への大して持ってない怒りの矛を下げる。


「で、どうして失敗したの?」


 とクゥちゃんが尋ねる。どうやらクゥちゃんも夜の戦いには参加しなかったみたいだ。


「えっと前の時に北側の被害がすごかったから北の人数を増やしたんだったかな、結果的に北の方は何とか防壁までたどり着かせずに済んでたんだけど…南側が受け止めきれなくてそこからだね」


 敗因は北側ではなく、南側だったらしい。


「他の方角の巨大モンスターは進行が遅いから、町に出るモンスターにも対応できるように防壁の目の前でがっちり守るようにしてたらしいんだけどデストロイヤーがすぐに防壁の前に来て簡単に壁壊されて突破されたらしい」


 と詳しい経緯を教えてくれる。


「舞浜は別の方角?」


「うん、戦ってる途中に急に景色が変わったから焦ったよ」


 クゥちゃんの質問に舞浜君は頷く。防衛に失敗したことに気づくのに少し時間がかかったらしい。


「丁度隣にいた人が南側で戦ってた人みたいで、表情が自分と全然違うから話聞いたらこんな感じだったかな」


 事情が分かって悔しそうな表情をする人と、事情が分からずぽかんとする舞浜君が並んでいる姿を想像すると笑いがこみあげてきそうになったのをこらえる。


「で、…フフ、でも北は進軍に積極的で、南は手当たり次第に襲い掛かる、じゃなかったっけ? 防壁前を固めてたからデストロイヤーがすぐに壁の前まで来たんじゃないの?」


「何それ…? そういうのがあるの!?」


 私の言葉に初耳、と言わんばかりに舞浜君が尋ねてくる。よかったこらえきれなかったのはスルーしてもらえた。


 それよりも、舞浜君は知らない? というか他のプレイヤーも知らなかったっぽい。


 手当たり次第に襲い掛かる、ってことは進行ルート上に標的がいれば足を止めて攻撃に転じると考えられる。実際あの時の魔人族の戦い方を思い返せば標的を見つけたら一目散に飛びかかる印象だ。デストロイヤーも同じと考えれば防壁の前をがちがちに固める標的に一目散に飛びかかるはずだ。


 当然一瞬で壁の前にやってくるだろうし、プレイヤーがそれを知らないのであれば何の対策もなくおびき寄せることになる。デストロイヤーの攻撃範囲を考えれば防壁前の防衛軍は一瞬にして大きな被害を受けるだろうし、そこに魔人族部隊が手当たり次第に襲い掛かれば立て直す時間もない。一方的な展開が想像できてしまう。


「えっと…ゴブリンが言ってたんだけど」


 と夜の戦いにおける各方角の特徴を教える。クゥちゃんもその話は聞いたことがなかったらしい。とりあえず言えるのはゴブリンネットワークってすごいんだね。


「じゃあやっぱり、何の対策もなしに…」


 この情報は広めた方がいいかも。


 その考えに行きつくも、防衛戦開始時間が迫っていた。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン玄人】Lv29【STR強化】Lv33【ATK強化】Lv25【SPD強化】Lv28【言語学】Lv41【遠目】Lv34【体術】Lv46【二刀流】Lv59【祝福】Lv19【スーパーアイドル】Lv25


控え

【水泳】Lv28


 SP28


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主 かまくら職人

次回は火曜日です。

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