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ナギ記  作者: 竜顔
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ウルフ

 ついに「カルマ」を倒した後、「サタン」「アニマ」の他の巨大モンスターとの同時撃破の達成がアナウンスされた。そして同時に新たなメッセージが送られてくる。



<過去の悪夢開戦>


「カルマ」「アニマ」「サタン」の三体の巨大モンスターの同時撃破を確認しました。


これより、第二ステージに移行します。



 という簡潔なメッセージだった。どうやらあの三体を倒すまでが第一ステージだったみたいだ。


 このメッセージにあちこちでざわつきが起こるも結局次の戦いまで知りようがない、という結論に至る人がほとんどだった。その中でもあれやこれやと予想してみる人もいて、私と一緒だったメンバーもその部類の人達らしい。さっきからあれやこれやと話している。


「破壊のダンジョンに出てくるような奴もいたからアーサーでも出てくるんですかね?」


 最初の始まりは「カルマ」にやられた話をしてくれた男性だったけど、それから熱を帯びたように色々と推測を始めたのは誰に対しても敬語の男性。


「もっと強い奴が出てくるんだったら面倒だな…ただでさえ夜に巨大モンスターが出てくるエリアは初心者が追い出されてるってのに」


「それにNPCの事もありますしね」


「NPCがどうなろうと知ったこっちゃない、て最初は思ってたが数の問題もあるし、人が揃わない時に一緒に戦うのはあいつらなんだもんな…極力死んでほしくはないな」


 そうやってどこか打算的に言うも、その表情からは打算的な部分は感じない。


「見かけなくなった北エリアの棺桶の骸骨も出てくるんじゃないですか?」


「それもありそうだな」


 ちょっとしんみりした空気になったところで思い出したようにまた第二ステージに何が起こるのかの予想へと戻っていく。次に行われる戦いは深夜。彼らはそれに参加するつもりらしいのでこの議論も全くの無意味とは言えない。参加するつもりのない私は積極的になれないけれど。


 防壁の上から戻ってきてそれぞれ解散。私はカッサと合流し、たまたま東に配置されていたミカちゃんとも合流。その後残りの三人とも合流した。


「なんかクゥちゃんがすごいことになってる」


「それを言うならナギちゃんだって装備が変わってるし」


 ラズベリーさんは私に新し装備を渡すとき言わなかったけど同時に作っていたクゥちゃんの新しい装備も完成していたらしく、お互い新しい装備で初対面だ。


「俺も見た時一瞬誰か気づかなかったんだよぉ、それが今再び起こったわけだけど」


「それはこっちも同じだ」


 カッサの発言に舞浜君も頷く。実際合流するときカッサに気付いてもらえなかった。クゥちゃんも同じような経験をしたのかもしれない。


「ナギさんを見た時、ちょっとそういう趣味に目覚めたのかな? って思いましたよ」


 ミカちゃんは地味に失礼なことを言う。そういう趣味って何?


 そう思っていると彼女はそのまま舞浜君に耳打ちをする。それを聞いて舞浜君がちょっとあたふたしてるのでまた何か変なことを吹き込まれたらしい。


「ボクもゆうくんに気づいてもらえなかった…」


 クゥちゃんはぽつりと漏らす。舞浜君と合流した後、ゆうくんが助っ人を連れてきたときに、「後はクゥさんだけですか」という発言をしたらしい。


「う、後ろ姿しか見てませんでしたから…」


 慌てるゆうくんの言葉を聞きながら確かに、と気づかなかったゆうくんの気持ちもわかる。クゥちゃんの装備は後ろからじゃ誰かわからない。ファンタジーでの野生児のイメージ。頭に乗っける狼の口、その上あごはまるでクゥちゃんの頭を噛んでいるかのようだ。その後頭部から続く狼の毛皮はクゥちゃんの背中を覆っている。


 正面から見るとその毛皮以外はくのいち衣装を現代風にアレンジした感じでパッと見てクゥちゃんだとわかる…はず。


 新しい装備の話でワイワイやった後ログアウトし、明日の準備を済ませてベッドに入った。


 


 学校が終わるとゲームにログイン――


 時間を確認すると夜の戦闘が始まる時間が迫っている。夜の戦いだ。


「ナギちゃん?」


「あ、どうも」


 他のみんながログインしているか確認しようと思っていると声をかけられる。お兄ちゃんと仲がいいバジルさんだ。


「アッキー今日ログインできないって言ってたけどなんかあんの?」


「バイトみたいです」


「なるほど」


 バジルさんは私とアッキーが兄妹であることを知っている数少ない人だ。どこまでリアルのことを言っていいか悩んだけどお兄ちゃんのリアルの事は同じPTで行動してる人なら少しは知ってるだろうし、と簡単に伝える。


「あれ? でもあいつやめてなかったっけ?」


 どうやらバジルさんはその辺のことは元から知ってるみたいだったので悩んだのは取り越し苦労だった、と安心する。


「また始めたみたいですよ、今日から? だと思います」


「急だな、しかも俺らに隠してるなんて」


 とバジルさんは険しい表情をした後に何かを思いついたのか瞳に不気味な光が灯った気がする。よし、お兄ちゃんにこのことは内緒だ。


「アッキーも来ないんじゃ次も一人だな」


「次も?」


 何かを企んだ後、どこか遠い方を見るようにしてバジルさんはつぶやく。次も、ということは前があるはずで、私はそれが気になった。


「ああ、今日は昼の方も時間があってさ、途中からだったんだけど」


「じゃあ以前との違いとか分かるんですか?」


「まぁ、多少はね」


 とりあえず他のメンバーのことは一度おいて少しだけ第二ステージがどうなってるのかを聞く。バジルさんによると、昨日の夜戦の後昼の時間帯が来るとなんと廃城跡が立派な城になったらしい。


「うああ!」


「今気づいたんだ…」


 城の方を見てびっくり、巨大な建物が建設されていた。この町の住民を心底信頼しているかのように、城の周辺には堀も、塀もない。


 私が落ち着きを取り戻してからバジルさんは話を続ける。出現する敵はスケルトンから普通の兵隊に変化したらしく、参加人数の問題か強敵らしい強敵は出てこなかったそうだ。


「夜については分からないけど…昼間の戦いも同じだったかな、兵隊はスケルトンよりタフってところ以外はあんまり違いはないかな」


 バジルさんもさすがに夜のことまでは把握してないみたいだ。今から始まるのが夜の戦いのため少し残念だ。とはいえ昼の戦いの情報を聞くことができただけで十分だ。


 それからバジルさんと話をしていると他のメンバーも集まってきた。夜の戦闘ではミカちゃんが連行されてしまう。


「私一人いなくてもいいかなって思ってたんですけど…今日から第二ステージだし、人数も多い時間帯だし」


 彼女は寂しそうに恋人のゆうくんに別れを告げて持ち場へと向かって行った。


「というわけでよろしく」


 こうして流れでバジルさんがPTに加わった。


「なんか前戦ってるときにも獣じみてると思ってたけど獣感が増してるね」


「ん」


 とバジルさんに言われてクゥちゃんも頷く。一度会っただけなのにお互いに覚えていたらしい。一瞬で終わったけど聖樹10階の「ボス」と戦った仲だからかもしれない。


 それと、昨日話してるときから思ったけど、様子からしてクゥちゃんは今の装備を大層気に入っているに違いない。見た目は狼、動きはネコ科。


 どのエリアに向かうか悩んだけれど、どこを選んでも初めて――バジルさんも夜戦は初めて――なので、バジルさん曰く見晴らしがよくて戦いやすそうな、南エリアへと決めた。


「でも見晴らしがいいから戦いやすいとは限らないんじゃないですか?」


 決めた後、舞浜君が尋ねる。


「防衛イベントが始まって最初の戦いでも、うちのリーダーがそう言って南で戦うことになったんだけど、戦えたから問題ない!」


 …急に不安になってきた。


 とにかく、第二ステージとやらの夜戦が始まる。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン玄人】Lv26【STR強化】Lv26【ATK強化】Lv15【SPD強化】Lv21【言語学】Lv41【遠目】Lv31【体術】Lv41【二刀流】Lv59【祝福】Lv15【スーパーアイドル】Lv19


控え

【水泳】Lv28


 SP21


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主 かまくら職人

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