熱戦
休日を骸骨達と戯れて過ごした後の平日。殺伐とした環境で過ごしていたこともあってか、普段の日常の様子を見てホッと和む。
余裕もなく。
「うぅ…寒い」
「渚、おはよう」
「おは、おはよう」
「ものすごく凍えてるね」
学校へ向かう途中に結衣ちゃんと一緒になる。耳あて、マフラー、コート、と完全防備でも凍える私をよそに結衣ちゃんは普段通りだ。
「きょ、今日は一段と寒いねぇ…」
「そうだね、…渚の場合風邪なんじゃ…」
「そそ、そんな、ことはないよ」
震えだすと止まらない。今の状態は家を出た直後からで、家の中にいるときはこんなんじゃなかった。だから多分風邪ではないはず。でもこのままだと風邪をひきそうではある。
心配そうな結衣ちゃんに大丈夫なことを声を震わせて全く説得力がないまま伝えて、寒さに余裕そうな結衣ちゃんの方を見る。
「なな、なんで、結衣ちゃんは平気なの?」
「さあ? 朝ご飯があったかいスープだったし、家出る前にホットココア飲んで体の内側から寒さ対策したからかな?」
その余裕っぷりも無策ではなかったらしい。これが外側ばかり固めた私と内側から攻めていった結衣ちゃんとの差なのか!
「…渚の場合、同じことしても平気かどうか怪しいけど」
結衣ちゃんと自分を交互に見ながら目を丸くする私に結衣ちゃんは少し呆れたような表情を向ける。
寒さに凍えながら学校に到着。暖房が入ってすでに暖かい空間と化した教室に入ることで私の状態異常「凍える」は無事に治った。
しかし私が完全防備で震えていたところを京ちゃんに見られてしまったためまた笑いものだ。
「面白さなら竜ちゃん並み!」
どうやら彼氏と並んだらしい。二人であんまり話したこととかはないけど仲間意識が、芽生えたり芽生えなかったり。
帰りは凍えることもなく無事に帰りついた。
着替えを済ませてログイン――。
ゲーム内は昼。そしてついさっき昼の防衛戦が始まったみたいで、人々が忙しなく動き回っている。夕方の時間なので帰ってきてすぐログインしたばっかりの私みたいな人も多いみたいだ。徐々に参加人数が増える場合にも後々強敵が出現するみたいなので、この時間帯も割とハードになりそうだ。
私よりも先にカッサとクゥちゃんはログインしていた。二人の今いる場所を聞いて合流する。
「これまでの3回の戦いも一応成功してるみたいだな」
カッサが私達がいない間に行われた防衛戦闘の状況を教えてくれる。昨日私が参加した最後の戦いの後、今に至るまで三度戦いが行われている。そのどれもで防衛成功してるみたいだ。
その後舞浜君とバカップルの二人がログインし、いつものメンバーで挑む。
昼の戦いでは一度も行ったことのない北エリアへと向かう。
門を開けてもらって、私達のように外に出ようとするプレイヤー達と一緒に戦場へと赴く。
まだ人が少ないと判断されているのか、普通のスケルトン軍団がただ進軍するだけの状態だった。今のうちに森の中に入り、これから出てくるであろう森から攻撃してくる部隊に対して準備を始める。そのついでに進軍中のスケルトン軍団をできるだけ倒して数を減らしておく。
しばらくするとゲリラ戦を行うスケルトン達が現れ始めた。ヒーラーがいないPTなうえに耐久力はみんな低いので、面と向かって対峙すれば脅威というほどでもない。ただし、戦ってる最中に別のスケルトンPTからちまちま攻撃されたり、進軍中の普通のスケルトンが入り込んでくるとそれだけで厄介さは一気に増す。
――ああ! もうイライラする! 進軍中のスケルトンもゲリラ戦スケルトンPTも全部同じ「スケルトン」だから説明がややこしい!
それに合わせてさっきから四つの団体さんに囲まれて、弓矢や魔法でちまちま攻撃されて煩わしい。
「舞浜、ナギちゃんが荒れてる、何かあった?」
「え! お俺、に聞かれても…」
どうやらイライラが顔に出いていたみたいで、クゥちゃんが舞浜君に問い詰めていた。もちろん学校でのことは関係がないので舞浜君にはわかるはずもない。
「スケルトンに囲まれてるからか、な!!」
と言いながら舞浜君はスケルトンPTの前衛役の攻撃を受け止める。――正解! リアルが関係ないということに気づければおのずと回答は導ける。
とわかるはずもない、と思った矢先に言い当てられてどこぞの模試の解答集の解説を一人でやりながら、陰からこそこそと攻撃してくる団体一つに向かって【サークルスラッシュ】を発動する。軌道上に遠距離攻撃に欠かせない魔法使いと弓矢使いがいるのが見えたからとりあえず潰すつもりだ。
弓矢使いには耐えられたけど魔法使いを倒すことに成功したころ、対峙していたスケルトン達をクゥちゃん達が倒していた。
すぐにターゲットを私が魔法使いを倒した団体の方に向ける。それでもまだ残っている団体さんの攻撃が煩わしいので一つの団体さんの攻撃はゆうくんが受け持ち、カッサが弓矢を取り出して応戦する。
「そっちの団体は任せた! こっちはゆうくんと俺で何とかする、他の方向は!」
カッサが指示を飛ばす。無言で各々が動く。舞浜君は前衛とぶつかり、クゥちゃんはすぐにその後ろにいる弓矢使いに飛びかかる。ミカちゃんは絶え間なくやってくる陰からの攻撃をうまく避けながら回復魔法の詠唱を続けて、舞浜君と反対側に位置するように立つゆうくんは間に挟まれているカッサ、私、ミカちゃんにその方向からの攻撃が当たらないように構え、カッサはゆうくんの背後から攻撃を放ってくるスケルトンの団体さんに攻撃を仕掛けて少しでも削る。
私はすでにクゥちゃん達も、カッサ達も向いていない方向の団体さんに目を向け、【ビッグブーメラン】を発動。巨大なブーメランが前衛に当たると、ボーリングのように次々となぎ倒していく。多少は威力をそがれたようで、数は減っていない。でもスケルトン達はヒーラーがいないのでこれで十分戦力をそぐことができる。
クゥちゃん達が次にビッグブーメランを与えた団体。そしてカッサが相手していた団体。最後に残った団体、と順に倒していく。
「はぁはぁ、ちょっとボク休憩がほしい」
現実に肉体が疲れるわけじゃないけど一番動き回ったクゥちゃんは疲れた様子で言う。
「団体に囲まれない限りはいいんじゃないか」
と言いながらカッサは周囲を見渡す。以前進軍中の骸骨さんだらけだ。油断するとこの中に埋もれてどこからかよく分からない場所から団体さんが攻撃してくるから面倒なのだ。
しばらくすると骸骨の団体さんの代わりに味方の団体さんが増えてきた。こうなるとそうそう囲まれることもないし、囲まれても他のPTが援護してくれるので厄介さは急激に減る。
無事に防衛を成功させた後、最終的に一番近くで戦ってたPTからあの棺桶の骸骨や、棺桶の骸骨が発生させる髑髏を見なかったか、と聞かれた。私達が孤立したのも他のPTがあの髑髏がまた現れるかも、と森の中に入っていくのを控えたためだったみたいだ。なんでも、倒されて以来棺桶の骸骨は復活してないそうだ。
「まぁ、見かけなかったらいいんだ、厄介な存在が一つ減ったって単純に考えられるだけだし」
といい残し、町に戻ってそのPTとは別れた。クールタイムを挟んだら次は夜戦だ。
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NAME:ナギ
【ブーメラン玄人】Lv26【STR強化】Lv26【ATK強化】Lv15【SPD強化】Lv21【言語学】Lv41【遠目】Lv28【体術】Lv41【二刀流】Lv59【祝福】Lv15【スーパーアイドル】Lv19
控え
【水泳】Lv28
SP18
称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主 かまくら職人
次回は金曜日に更新します。




