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ナギ記  作者: 竜顔
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夜戦

 最初の防衛戦が終わってからしばらく。準備を整えた後はログアウトして現実世界でリフレッシュした。


 再びログインすると、光魔法を使える人がかき集められていた。夜の戦闘に向けた準備だ。ミカちゃんや来栖さんが使っていた巨大な光の玉を作り出す魔法――名前知らないけど――を使える人の数がある程度確保されたということで一応舞浜君は戻ってきた。


 ミカちゃんは魔法部隊に組み込まれてしまったので別行動になる。北のエリアは上級者ですら死に戻るプレイヤーが多く、そのほとんどがやられた敵がなんなのかよく分かってなかったらしい。夜の戦いではそのモンスターが姿を現すかもしれない、現さなくても炙り出してやる、という気合で臨むみたいだ。


 そしてどこまであの巨大な玉の光が届くかわからないことから、光魔法が使えるプレイヤーは極力北エリアに来てほしいということで、夜の防衛戦は北側のエリアに参戦することにした。


 城の跡は未だ手つかずのままだけど、町の建物は所々再建され、生産系のプレイヤーがすでに工房をいくつか作ってしまったらしい。NPCが多く滞在することもあって、宿屋もでき、中心の人達が作戦会議を行う建物までできているらしい。


 そしてさらに、先ほど町の防護壁は9割ほど再建され、門が完成したそうだ。いよいよ防衛失敗するわけにはいかなくなる。


 活気を取り戻す町を橙色の光が照らす。夕日のエフェクトなんて夜の時間へのカウントダウンができそうな頃くらいにしかないのに、この町では夜の時間に少し余裕があるころからこのエフェクトが出るらしい。


 普段は一瞬で黒く染まる橙色に染まる景色をゆっくりと堪能する。


「それで、何故このメンツに?」


「拙者に文句が?」


 少し町の景観を眺めながら逃避してみたけどそうもいかないらしい。もう一度PTのみんなの方を見ながら尋ねると当の本人は堂々とした態度で私に問い返す。


「そういうわけでは」


 相手のその堂々とした態度に私はたじろぐ。実際彼が一緒なら心強い。でもなんかこう、場違いな感じが…。


「まぁまぁ、こっちは丁度一人足りないし、一人寂しそうな人(?)が丁度いたんだから」


 カッサが苦笑いを浮かべながら言う。その視線はやや下を向いている。


 それもそのはず。


「寂しそうとは失敬な!」


 そうやって叫ぶ彼に周囲の視線が集まる。大抵の人は二度見する。彼を知っている人は「なぜここに!?」という表情で二度目は視線を下げ、初めて見る人は視線が胴体の上あたりに釘付けになり人によっては足をふらつかせる。


「えーっとなんて呼べばいい…んですか?」


「好きに呼ぶといい」


 舞浜君の困った表情にも動じない。


「それより先ほどからクゥ殿が睨んでおられるのだが、何故か誰か知らぬだろうか」


「それは以前のことがあるからかと」


 私の顔より下の方から聞こえる声にゆうくんが答える。そしてクゥちゃんはそれに頷く。


 ミカちゃんの代わりにカッサが連れてきた相手、それは盾に顔がついた首なし鎧のデュラハーンだ。


「むむ、ナギ殿、拙者は『面盾』のデュラハーンであるぞ」


 いつからAIはエスパーに。


「盾役が三人いれば俺が配給するポーションでも回復は間に合うだろ」


 とカッサが話を切る。そして北側の門をくぐって戦場へと出る。


「先に出た斥候の話じゃ、周囲にまだ敵はいないらしい、一体どこから湧いて出るんだか…」


 カッサが集めた情報を教えてくれる。作戦ではこのまま一気に森の中に入っていく予定だそうで、私達もその人達の後に続く。


「湧いて出るも何も、夢の中だからその時間にだけしか敵も存在せんのではないか?」


「「「「は?」」」」


 一瞬遅れた私以外の全員がデュラハーンの言葉に疑問符を飛ばす。


「ん、いや、ネタバレというやつになるのか、よし! 拙者は何も言ってない」


 絶対言ってた。今いるのは夢の中? 誰の? と思い浮かぶのはこの廃城跡につながる小屋の中で寝ていた人しか思い当たらないけど。デュラハーンはその辺の事情を知っているらしい。


 森に着いた頃、夜が訪れる。事前に舞浜君がライトを使って周囲を若干明るく照らす。大きな光の玉の明かりが届くところだったけど、どうやら奥に入るとそんなに届かないみたいだ。


「来るぞ! 油断せぬように!」


 デュラハーンは一言つぶやくと茂みから音もなく近づいた何か、見覚えのある姿に斬りかかった。破壊のダンジョンでも出てきた「スケルトン・ストーカー」だ。


「破壊攻撃がある、備えがなければ触れぬように!」


 何この優秀なナビ。デュラハーンの指示に従うようにすかさず舞浜君とゆうくんは破壊攻撃を無効にする盾を取り出す。昼のことを踏まえてゆうくんも準備していた。


「索敵レーダーには?」


「引っかからなかった」


 私がクゥちゃんに尋ねると、クゥちゃんは首を横に振る。そのやり取りをしながらも近くのスケルトン・ストーカーに攻撃を加える。


「スケルトンだ!」


「ジャミングで索敵はうまく使えぬ! よく見るのだ!」


 カッサがスケルトン襲来を告げ、デュラハーンは索敵が機能しない理由を教えてくれる。


「カアアアァァァァァッッッッッツ!!」


 デュラハーンが叫ぶと周囲のスケルトン、スケルトン・ストーカーの足が止まる。


「今のうちに!」


 そのデュラハーンの言葉よりも先に【ビッグブーメラン】を発動し、構える。急いでそれを放つ。巨大なブーメランは軌道上の敵をなぎ倒しながらまっすぐ進み消える。


「光魔法完成!」


「こっちのやつはやっといた」


 舞浜君が宣言しながら近くのスケルトンを蹴散らし、クゥちゃんも近くにいるスケルトンを次々殴り飛ばす。


「昼ほど悠長ではないぞ! 気をつけよ!」


「公式ナビがいると役に立つな」


 頼もしい首なし鎧の言葉を聞いてカッサは声を弾ませる。ちょっとずるいかも、とは思うけどNPCと組むプレイヤーは他にもいるみたいだし、中にはデュラハーンみたいな存在とPTを組んでる人もいるだろう、と都合のいい方向へと考えて、再びやってきた骸骨集団を迎え撃つ。


「そこぉ!」


 デュラハーンが唐突に剣を投げる。その先にいたのは棺桶…?


 その棺桶が開き、中からぼろ布を纏った骸骨が現れる。骸骨だから見分けが効かないだけかもしれないけど、「スケルトン・アーサー」に似てる気がする。


「よくぞ見破った、しかしそれでどうなる?」


 フアアアァァァ


 ホラー映画の幽霊のような声でなにかが迫ってくる。


 黒いローブのようなものに身を包む黒い髑髏。頭と両手しか目にすることはできず、その体にと思われる部分は黒い煙が飛行機雲のように流れながら宙を這うようにしながら、私の方向に髑髏が近づく。頭の大きさだけで私よりやや大きいくらいだ。


 髑髏の目の青い炎が一瞬その光を強めたかと思うと、私の身体が動かなくなる。


「えっ?」


「まずい!」


 私が戸惑っていると、棺桶から出てきた骸骨に気を取られていたデュラハーンが振り返る。他のメンバーはちょっとここからじゃ位置が分からない。ただ何となく、こいつが昼の戦場で猛威を振るった奴だと直感的に思った。


 大きな髑髏は迫り、その目の青い炎と黒色しか映らなくなった。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン玄人】Lv25【STR強化】Lv23【ATK強化】Lv9【SPD強化】Lv20【言語学】Lv41【遠目】Lv26【体術】Lv40【二刀流】Lv58【祝福】Lv12【スーパーアイドル】Lv18


控え

【水泳】Lv28


 SP17


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主 かまくら職人

次回は金曜日になります。

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