一戦目
「ヒロイック・スケルトン」を退けたら再びやってくる普通のスケルトンの波。その波に紛れる黒い骸骨。その一団の途中から乱入してくる狼にまたがった骸骨に、大柄な体格の骸骨。
黒い骸骨は「ブラックボーン」とそのままな名前で、狼は破壊のダンジョンの奥の方で出現する「ブラッケンウルフ」。それにまたがるのは「スケルトン・ライダー」、大柄なのは「スケルトン・ジェネラル」、そして全身真っ黒の甲冑に身を包んだ顔は骸骨の「スケルトン・クルトーム」。
これらの連中はもう、初心者じゃ手に負えないレベルになっていた。ギルドに所属しているプレイヤー達も初心者は初心者だけで固めるようにPTを再編していた。それもあって完全に人でできた壁はスカスカになり、あちこちで交戦するモンスターとプレイヤーやNPCが入り乱れるようになった。
ブラックボーンは純粋に棍棒を持って黒ずんだ兜を被った黒い骸骨というだけなもので、大して脅威になるような特性もない。だけどブラッケンウルフ、スケルトン・ジェネラル、スケルトン・クルトームは破壊の効果を持つ攻撃を仕掛けてくる。
ブラッケンウルフもまだスケルトン・ライダーが乗っているときは所詮ただの乗り物でしかないので注意をすれば厄介なことにはならない。スケルトン・ライダーは添え物感がすごいけど盾はヒロイック・スケルトンと見た目は全く同じで、武器も槍。あの二連撃はできないみたいだけど今度は衝撃波持ちなので相変わらず攻撃は防ぎづらい。
スケルトン・ジェネラルは普通のスケルトンと違うのはその大柄な体格に合わせて盾も大きくなっていて、形も円形ではなくて五角形に近い形になっている。そしてその分タフにもなっている。攻撃に破壊効果がついているので耐性の無い装備だと大変なことになる。
スケルトン・クルトームの大きさはスケルトン・ジェネラルと同じくらい。さっきも言った通り全身を黒い装備で固めていて、骸骨と言えるのは唯一露出している顔の部分が骸骨だからだ。一体しかいないため、ボスになるんだろう。こいつは破壊攻撃ができるだけでなく、魔法も使える。おそらく当たれば壊される。
よく見たらスケルトン・クルトームの鎧の色は黒というよりも濃紺に近いかも、とか思いながら対峙するスケルトン・ジェネラルを倒す。
私達がいるのはスケルトン・クルトームと戦う一団の近く。その一団に近づこう、または近くを通りそうな骸骨どもを駆除する係りだ。
ブラックボーン以外はヒロイック・スケルトン同様近くの人に向かっていくのでボス戦中の人達の方へ行かないようにするのも大切な役割だ。どちらかといえば破壊攻撃に耐性のある装備を今持ち合わせてるのが舞浜君ぐらいしかいないのでボスとの戦闘を避けてるんだけども。
スケルトン・ジェネラルなら動きが遅いし魔法も使えないので破壊攻撃の餌食になるリスクは低い。舞浜君も破壊攻撃に耐性のある装備を身に着けているので、いざとなれば彼に受け持ってもらえればしのげる。
誘惑、ハートショットあたりで動きを止めて、その間にクゥちゃんが強力な攻撃を。ゆうくんも攻撃役に回って、スケルトン・ライダーが来た時に対処する形になっている。
ミカちゃんの光魔法なら骸骨相手には相当なアドバンテージになるんだけど、防御しづらい相手が多いだけに回復と、そのためのMP温存に専念してもらわないと。
こうして敵味方入り乱れる戦闘を行っていると、スケルトン・クルトームを倒せないうちに2時間に及ぶ初戦が終了し、骸骨軍団は一斉に消えていった。
「とりあえずお疲れー!!」
号令さんが叫ぶ。さっきまで戦っていた人々はそれに威勢のいい声で返したり、身近な人にお疲れと声をかけたりしながら街の方へと戻っていく。
「全方向防衛成功だ!」
「「「おー!」」」
「っしゃああ!!」
「いいのか?」
号令のさらなる情報に、感嘆の声を上げる人、喜ぶ人、まだ最初だろ? という雰囲気の人と様々だった。でも、次の戦いまで防護壁が残っているのは生産系のプレイヤーからしてみればいいことじゃないかな。
「お疲れ」
周囲の騒音が少し止んだ後、ようやく、という感じで舞浜君がみんなに声をかける。
「お疲れ様です」
ミカちゃんもお辞儀をするようにしてみんなに声をかける。
「お疲れぇ、ミカちゃんMPポーション大丈夫? 分けようか?」
「あ、ありがとうございます」
「カッサさん、俺にもポーション念のために」
「オッケー」
パシリ…じゃなくてポーション配給係、アイテム係(?)のカッサはバカップルの二人にポーションを渡す。西側しか知らないけど初戦の様子を見る限りポーション確保のための競争が激しくなりそうなので、必要なメンバーに十分な量持たせておくっていう考えなのかもしれない。
「結局強い敵ってスケルトン・クルトームのことなのかねぇ」
防護壁の、かつて門があったはずの現在何もないぽっかり空いたスペースを越えて街に入ったころカッサが首を傾げながら呟く。
「夜もあるし、他の方角だと違うのかも」
クゥちゃんがそれに返す。
「確かに、もっと大きいモンスターとかイメージしてたから、あれだとちょっと拍子抜け、というか」
クゥちゃんの言葉にカッサが頷く。
「でも破壊のダンジョンと関係がありそうなこと考えたら…あんまり大きいモンスターって出てこないんじゃないかな」
私はあの戦いの最中に感じたことを言いながら考えを述べる。破壊のダンジョンで大型と言えば…ビッグメタルンと、見たことはないけどブレイクスパダー・クイーンぐらいだろうか。
「まぁ、その辺も含めて俺は情報交換に行ってくる」
「はーい」
「行ってらっしゃい」
カッサをPTのみんなで見送る。斥候仲間かその伝手を使うつもりだろう。さて私達は。
「ていうかみんなドロップ確認した?」
「あ」
「あっ」
「まだしてないです」
「俺もまだです、ドロップ確認しようと思ってポーションが足りないな、って気づいて…」
舞浜君の質問に全員が首を横に振る。忘れていたというか、あとでいいやと思っていたというか。あれだ! あとでいいやと思っているうちに忘れてたパターンだ。
「なんか珍しい物でもあったの?」
「まぁね」
舞浜君に尋ねるけど詳しくは自分で見ろということだろう。
【魔石版の盾】
装備カテゴリー:盾
DEF+80
REG+120
効果:魔法完全防御可
魔石で作られた石版を使った盾。魔法に強く、普通の攻撃にも強い。
【ホーネットスピア】
装備カテゴリー:スピア
ATK+18
効果:貫通
連撃
とある精鋭部隊が愛用した槍。雀蜂のように二度刺すのだ。
おそらくヒロイック・スケルトンのドロップと思われる装備が二つ。他のモンスターは素材なので素材としての価値がよく分からないけど、これらの装備は今まで聞いたことがないようなタイプの装備だ。
「直接装備がドロップするなんて珍しいね、効果も珍しいし」
クゥちゃんがドロップを確認しながら言う。
「ばらしたら幅が広がりそうですよね、連撃なんて目の前で威力見せられてますからね」
ゆうくんは素材としてすでに考え始めている。
私達がドロップを確認している中で、周囲はすでに次の戦いに向けて各々の準備が始まっていた。
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NAME:ナギ
【ブーメラン玄人】Lv25【STR強化】Lv23【ATK強化】Lv9【SPD強化】Lv20【言語学】Lv41【遠目】Lv26【体術】Lv40【二刀流】Lv58【祝福】Lv12【スーパーアイドル】Lv18
控え
【水泳】Lv28
SP17
称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主 かまくら職人




