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ナギ記  作者: 竜顔
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ホーネー

 剣を持ったスケルトンの後に現れた槍を持ったスケルトン部隊。その数は30~50ほどに見える。


 その姿は先ほどまでのスケルトンと微妙に違う。まず手に持つ盾は剣を持っているスケルトンよりも一回り小さく見てくれは盾というよりも石版という方が正しいような、よく分からない文字が円形に沿う形で刻まれている。


 槍の見た目は普通の槍。木製の柄の先端に金属製の穂が取り付けてある。兜や腰当はあまり変わらないけれど背中にマントをはためかせている。


 名前を確認すると「ヒロイック・スケルトン」と表記されていて、他のスケルトンと表記が違っている。動きにもその違いはある。魔法部隊や弓矢部隊の一斉攻撃を手に持っている盾で防いでいる。悠々としていた歩調で近づいていたけど、未だ普通のスケルトンと遊撃部隊が交戦しているところに「ヒロイック・スケルトン」が辿り着く。


 交戦中の場が近づいた瞬間彼らも合わせていた歩調を乱して軽やかに自らが定めた標的へと文字通り「飛びかかって」行く。


「うぐぉ!」


「おわぁ!」


「うらぁ!!」


 普通のスケルトンと交戦していたPTは突如の乱入者に対応できず攻撃を許す。そして対応し、盾を構えたプレイヤーが攻撃を受けることに成功しても、奇襲された人達と同じような声を上げている。


「槍持ちは貫通持ちだ! 盾も注意しろ!!」


 前線で戦うプレイヤー達が叫ぶ。この場合の盾はタンカーのことで後ろで遊撃部隊の撃ち漏らしを刈り取る私達だけをさす言葉じゃない。


 ヒロイック・スケルトンの乱入は遊撃部隊として前線で戦う人たちに大きなダメージを与えた。前線に出ていた遊撃部隊はそのほとんどがギルド所属者であり、だからこそできるPTがある。上級者や中級者と初心者が同じPTで戦う、とか。


 上級者だけ、中級者だけ、初心者だけで組まれたPTも当然あるとは思うけど、崩れていくのは「初心者」が含まれるPT。初心者だけのPTはすぐに消えていき、初心者が含まれていたPTもバランスは崩れ形成は悪くなる。


 「ヒロイック・スケルトン」はそれなりに強い。厄介なのは貫通の特性を持ち防御力が当てにならない攻撃と、一撃目を当てた後すぐに繰り出される同じ相手を狙う二撃目。特にこの軽快なステップで繰り広げられる二連撃は脅威だ。というのも一撃を食らうだけではHPが高くなりがちなタンカーならたとえ貫通攻撃でも耐えることができる。だけど二連撃を決められてしまうと、装備を考えると上級者と思われるタンカーですら危険域にまで達するほど。


 一方で攻撃は盾で受けて、時々流してはその隙を突き、華麗に二連撃を当てていく。そして大抵の場合それは死を意味する。


 乱戦のような状況で他の標的を相手取りながら戦うような相手とは言いづらい。


 そして、もう一つ厄介なところを言えば、普通のスケルトンが町に向かっていくのに対してヒロイック・スケルトンは人に向かっていく。なので場合によっては一つのPTに複数体が群がることもある。


「冷静になれ!!」


 号令係が声を張り上げるけど、私達の前方では次々と遊撃部隊の誰かが消えていく。そしてそれに呼応するようにさっきまで減っていたはずのスケルトンが私達の目の前に密集する。交戦していたPTが崩れて、またはヒロイック・スケルトンに標的を変えたために撃ち漏らされたせいだ。


「前の方がやべぇな! こっちからも回収に行かなきゃいけないんじゃねぇか?」


「さぁな!」


 私達の会話に参加しがちな盾さんが叫ぶと、珍しく彼のPTメンバーからの返事の声が上がる。


「遊撃部隊! 退却! 壁部隊はスケルトンが漏れないようにスペースを空けてくれ!」


「「「おう!」」」


 号令の指示に従って一気に退却してくるプレイヤー達を迎え入れながら普通のスケルトンを刈り取り、ヒロイック・スケルトンと壁部隊がついに交戦する。


「遊撃部隊! 退却したら列を整えてスケルトンを倒せ! 壁部隊はヒロイック・スケルトンを受け持て!」


「後方にスケルトン部隊を確認! 範囲に入り次第魔法部隊への指示を!」


 号令の指示に前線に残っていたヒロイック・スケルトンと交戦中のPTから号令へと声が上がる。次の波が来ているらしい。


 私達はそれを耳にしながらも対峙する「ヒロイック・スケルトン」へと意識を向ける。


 ハートショットで一体を「親衛隊」状態にしてわずかな時間こちら側の駒になっていただいている隙に、後ろから飛びかかってきたヒロイック・スケルトンへ誘惑を当てて動きを封じる。


 これまで特に出番がなかったクゥちゃんが「とりあえず溜めといた」らしい攻撃を叩きこむ。後ろによろめくヒロイック・スケルトンを見て小技の連続で相手に主導権は渡さない。


 だけど数発当てたところで対応されて、クゥちゃんの爪がヒロイック・スケルトンの盾に当たる。かと思えばそのまま盾を動かして流す。【盾】のアーツにある【パリィ】に似ている。


 だけどクゥちゃんも前線で戦う遊撃部隊を見て分かっている。小技に終始したのもできるだけ受け流された時に体勢が大きく崩れないためだ。


 二連撃を当てられた人たちは、大きく体勢を崩されたり、踏みとどまって振り返ろうとしたりしているうちにやられるパターンがほとんどだった。だからクゥちゃんは流された時の勢いそのままに足を踏み込み駆け抜けて槍の追撃を躱す。


 クゥちゃんを槍で追ったヒロイック・スケルトンは私達に背中を見せることになる。ここで【スーパーアイドル】Lv15で習得したアーツ【パワーイグニッション】を発動する。これはPTメンバーの【パワー○○】というアーツの威力を2倍にするアーツ。私で言えば【パワースロー】なんかが当てはまる。


 対象がPTメンバーなので、私には効果がないのと、敵の意識を集めているメンバーにも効果がないのが難点だけど、今はクゥちゃんがその意識を持って行っているので、舞浜君とゆうくんにその効果を与えることができる。


 そして【パワー○○】系は私の記憶が正しければ全ての武器で習得するはずのアーツで、当然舞浜君とゆうくんが使っている剣系も習得する。


 その二人がほとんど同時に発動して、ヒロイック・スケルトンのがら空きの背中を斬りつける。


 その一撃にヒロイック・スケルトンは膝をつき顔を上げて咆哮する。そのまま地面に伏すと光となって消えていった。


 丁度そのぐらいに私が「親衛隊」状態にしておいたやつがうまい具合に他のプレイヤーをサポートした後普通の状態に戻って私達に襲い掛かってきたので、今度は誘惑で足止めした後舞浜君達【パワー○○】系の攻撃を当てて、そのあと背後からクゥちゃんがちまちま攻撃するというやり方で倒した。


 その頃にはヒロイック・スケルトンはほとんどの数がいなくなっていて、魔法部隊による攻撃を抜けてきたスケルトンの第二の波が押し寄せてきていた。


 未だ設定時間の半分にも至っていない。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン玄人】Lv25【STR強化】Lv21【ATK強化】Lv6【SPD強化】Lv19【言語学】Lv41【遠目】Lv25【体術】Lv40【二刀流】Lv58【祝福】Lv11【スーパーアイドル】Lv17


控え

【水泳】Lv28


 SP15


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主 かまくら職人

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