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ナギ記  作者: 竜顔
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防衛イベント

 防衛イベント――


 MMOでは割とよくある種類のイベントらしいけど通称「俺記」こと『○○記』においては初めての防衛イベントらしい。


 ゴブリン王国開放のときのあれは防衛イベントと呼ぶべきか微妙なものだそうだ。というのもそもそもクエストであってイベントじゃないという意見があり、同時に新エリア解放のためのボス戦みたいなものと捉える人が多いというのもある。


 まぁ、イベントという意識が薄く、防衛したというより侵略したという意識が強いということだと思う。


 と初めての防衛イベントと呼ぶべきかはここらへんにして、防衛イベントと言えば大抵の場合元々利用できるエリアを守るようにして戦い、失敗すればそのエリアが利用できなくなるなどのデメリットがあるらしい。そして大規模な戦いになり、ただのPT単位ではない動きが求められるそうだ。


 対象となるエリアは既存のエリアで、しかも利用できないと多少は困るというエリアが多いらしいけど今回は新しくてしかも防衛イベントのために造られたステージなので成功時のメリット、失敗時のデメリットがイマイチわからないという問題はある。


 だけど多くのプレイヤーはそんなことを気にする様子もなく大規模戦に向けての準備を進めている。装備を見直したり、ギルドに所属しているプレイヤーはギルド単位での動きを確認してみたりしながら各エリアで戦ったりレイドボスに挑んでみたりしている。


「……災難だったね」


 クゥちゃんが若干引きつった表情で口を動かす。防衛イベントについて思いをはせいていた傍ら、私は昨日のおしゃべりな生産プレイヤーと会話を楽しんだ(?)後知らないうちにインベントリに扱いに困るアイテムが増えていたことをクゥちゃんに話した。


 実は今日ログインしてあの店主がいる露店を遠くから少しだけ観察してみたんだけど中には私のような人も見かけたので、あの店主の技量が高いわけであって決して私の心が弱いわけではない、と自信を保った。


 イベントに向けて準備する人が大勢いる中、私達だって例外じゃない。ローエスさんの装備を身に着けてると知ったベリーワーカーズの二人が私のために何か防具と武器の一式を作ってくれるらしいし、クゥちゃんの装備も同様に作っているらしい。


 クゥちゃんは未だにあのジャージを愛用しているみたいなので何とかしてあげてほしい。と思っていた時期もあったけど一体感が生まれるなどの理由で防衛イベントに向けて準備するギルドのメンバーが同じようなジャージを装備して駆け回ったり、今空前のジャージブームが来ている。


 そういうのもあって「Berry Workers」は忙しそうで私達の装備が間に合うのか不安だ。


 この日は私達二人に舞浜君、バカップル、そしてシンセさんの6人で聖樹へと狩りに出かけた。今は広いエリアが人で溢れているので、私達みたいなギルドに所属していないようなプレイヤー達はダンジョンなど比較的狭い場所で狩りを行うのが主流らしい。幸い今はほとんどのプレイヤーがお金に余裕があるのでほしい素材は買えばいい、と狩場が重なるようなトラブルは目立たない。


 シンセさんが使役しているクゥちゃんもいよいよ普段から虎の姿になった。その成長ぶりには困惑してしまうところもあるけどじゃれてくるのは相変わらずで、だけど私のゲームステータスのSTRでも抱えることができない重さになっていた。


「シンセさん、これ太ってるとかじゃないよね」


「筋肉は脂肪よりも重たいって言うものねぇ」


 クゥちゃんはマッチョなようだ。あ、飛びかかるようにじゃれてくるのやめて。


 こういうこともありながら狩りを終えてログアウトした。




 翌日。防衛イベントの細かな情報が載せられていた。


 エイロー北に英雄の末裔の小屋という建物が実装されるらしく、そこから廃城跡に行けるらしい。防衛イベントの拠点は廃城跡とその城下町。期間中はその小屋にたどり着くまでに出現するモンスターは弱体化していて、初心者でも参加自体はできるようになっているそうだ。


 防衛戦が行われる時間は決められており、昼の時間夜の時間関係なく行われ、防衛失敗は城下町へと一定数侵入を許すか、廃城跡に一体でも侵入を許した時点で敗戦。時間帯によってはプレイヤーの参加が少ないことも考慮してこのイベントにはNPCも参加するそうだ。


 廃城跡は防衛イベント開始の前日に実装され、プレイヤー達で防壁の補修や強化等を行って開戦を待つことができる。防衛成功時には終了時点での防護が残り、失敗時には初期状態にリセットされる上に次の開戦の直前まで廃城跡への出入りができなくなるらしい。


 最終的に防衛成功状態でイベントを終えることが今回の目的で、成功時にはプレイヤーにとってプラスになる事が用意されているらしいけど、そこは伏せられている。気になるなら参加して成功させろということだろう。


 注意すべき点として特にプレイヤーの参加が多い場合は強力な敵が出現し、またNPCを消滅させることができる敵も出現するとのこと。なのでプレイヤーが多いときはNPCにも注意しないと戦力が厳しくなっていくことが書かれていた。


 これらの情報が開示されて戦闘系プレイヤーよりも生産系プレイヤーが一層あわただしくなった。廃城跡の防護設備はボロボロで皆無に近い状態という話がNPC達に噂されていて、その補修等には生産で使うような素材が当然必要になってくるからだ。


 戦闘系プレイヤーの装備づくりに拠点の防壁補修のための準備と生産系プレイヤーは大忙しだ。いよいよ私達の装備は間に合うのだろうかと考えてしまった。


 まぁ、戦闘系プレイヤーである私達一行はそんなことなど気にも留めずに狩りに出かけてレベルアップに力を注いだ。





 金曜日。午前中にアップデートが行われており、学校が終わって家に帰るとすでに終わっていた。


 ログインすると時間は昼。エイローの北に小屋が設置されるということで前日はエイローでログアウトしていたわけだけど、エイローは人で溢れかえっていた。


 様々な種族が入り乱れている様子を見ると、どうやら半分ぐらいはNPCのように見受けられる。


 さて、向こうで物資に困らないか心配なのでインベントリを整理しておく。結局ベリーワーカーズの装備製作は間に合わなかった。もしかしたらあとで届けられるかもしれないけどひとまずは普段通りの防具に武器はメインのブーメランとダガー系。今回は大斧は見送る。回収しそびれると面倒だし。


 最近あんまり使ってないけど少人数なら頼りになる【ファルカナンド・エンブレム】は大人数の戦いではどうなんだろう。ただの壁で味方の攻撃も止めてしまうから邪魔になるかもしれない、と使いこなすために必要なリーステスの剣は倉庫へ。


 そしてNPCを消滅させるような敵は闇属性っぽいなと考えてオスカーこと邪心の人形をインベントリへ。さらにPTメンバーの能力を引き上げてくれる【勇者の力】を入れておけばあとは回復アイテムなんかで埋めて問題なさそうだ。


 何を持っていくか悩んでいるうちにクゥちゃんや舞浜君達がログインしてきた。それぞれ一応アイテムの整理をして、私達は小屋へと向かった。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン玄人】Lv25【STR強化】Lv20【ATK強化】Lv4【SPD強化】Lv18【言語学】Lv41【遠目】Lv25【体術】Lv40【二刀流】Lv58【祝福】Lv11【スーパーアイドル】Lv17


控え

【水泳】Lv28


 SP15


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主 かまくら職人

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