カップルイベントー!!!
「いたのかぁーーーーー!!!!!!」
絶叫とともに膝から崩れ落ちる男性。私は何も悪くない。本当だからね。
しばらくして立ち上がりフラフラになった男性を見送りながら、彼にも相手が見つかるように心の中で祈っておいた。
「知り合い…だったのか?」
「いや、一人だったから声をかけられただけで…」
「そうか」
きっとあの戦いは相当に辛いものなのだろう。私もホムラがいなければあんな風になっていたのかもしれない。
――っと、それはさておき
「こんなに人が多いのに、どうやって私を見つけたの?」
さすがにこの人の量では特定の待ち合わせ場所でなければ見つけることすらできないと思うのに。
「さっきのやつのおかげだな、騒がしいから行ってみたら、ナギがいただけだ」
あの鎧姿の男性が無残にも散った意味があったらしい。私は心の中で彼に感謝しておいた。
そのあとPTを組んで二人で村を散策して、料理を食べて満腹度と渇水度のケアをする。それから備品のチェック、をしていると
「ナギは…その、前と装備が変わらないな」
「え? うん、そうだね」
正直最初にマキセさんから作ってもらった装備を愛用している。耐久度は攻撃を受けるたびに減っていくけど、相当なダメージをくらわなければ減るスピードは極端に遅い。なにせ一発も受けたことがなかった私だもの。と誇らしく思っていたら
「生産職に素材を売り渡すだけじゃなくて、装備も強いものに変えていかないとそのうち困るぞ」
とアドバイスされた。
「じゃあ、イベントが終わったら誰かに頼んでみるね」
そういうと、頭をぽんとされる。
それから、ホムラから出されていた課題の経過を話す。正直最近狩りができてないのでなまってるかもしれないといったら、
「地道にやればいい、心がけが大事だ」
と言われた。そんなことをしているうちに夜ご飯の時間が近づいてくる。するとホムラが
「俺は晩飯を食うからログアウトして、今日はもうそのままにするつもりだが…ナギはどうする?」
「えっと…じゃあ私もそうしようかな」
「そうか、明日の集合場所はどうする?」
「ここで」
「わかった」
――ログアウトして、ご飯を食べてお風呂に入り、ベッドに入る。少し疑問ができたけどまぁいいかと思ってそのまま眠る。
――――――――――
翌日、朝食を食べ、10時になるのを待った。そしてすぐにログインした。
ホムラはまだいないらしい。正直待たせないようにサービス再開とほぼ同時にログインしたけど私が待つ側になってしまった。
しばらく待っても来ない。もしかしてすっぽかされた? 体調が悪いとか? いろいろ考えたり、もしかしてもうログインしてるんじゃ…と何度もフレンドリストを確認した。
30分後ぐらいにホムラがやってきた。
「遅い!」
「ん? あぁ、悪かった」
私が30分前に来たことを教えると、まさかサービス再開と同時にログインするとは思ってなかった、と言われた。
私は少しふくれたまま昨日気になったことを聞いてみた。
「昨日私に言ってたけど、ホムラも前と装備変わってないよね?」
するとホムラは
「始めたばかりのナギと一緒にするなよ」
といって頭をぽんっとされそうになったので躱す。
「えらくご立腹だな、とりあえず原っぱに行くか」
ホムラにとって私の頭をぽんとすることは機嫌を窺うバロメーターらしい。
私が早く来すぎたのかもしれないけど、実際私は心配してたんだもん。と不機嫌な表情のまま二人で原っぱに向かう。
村は昨日よりも人が増えていた。昨日の鎧姿の男性は相手を見つけることができたのだろうか…。
原っぱに着くとそこには尋常じゃない人の数。ぎゅうぎゅう詰めでエリアに留まっておくことすら困難では、と思う人の量だ。っていうかこんなにたくさんの人がプレイしてるんだ、これで全員でないだろうしもっといるのか、とかちょっとイベントとは別のことで驚いた。
少し遠くにロマンさんを見つけた、その横にはエルダさんがいる、どうやら二人がペアらしく、近くにはロマンさんの言っていた「洞窟バカ仲間」と思われる人達もいる。だが、あえて声はかけない、というより人ごみをかき分けてまであそこに行く勇気は私にはない。それほど人が多い。
「ここら辺で待つか…まぁ身動きできそうにもないけどな」
しばらく待っていると11時が近づき、カウントダウンが始まる。
「「「3!」」」
「「「2!」」」
「「「「「1!」」」」
0はなかった。その瞬間に私たちは光に包まれて、気が付けば見慣れない土地にいた。おそらくここは「エイロー」、その名が「エロイ」だからと指定の宿でならばできる(何がとは言わない)と男どもを獣に変えた街。
飛ばされてきたプレイヤーたちもどうしていいのかわからず立ち尽くしていた。するとアナウンスが始まる。
「皆様、本日はイベント『恋の試練の街エイロー』に参加していただきありがとうございます、これよりいくつかイベントにおけるルールの説明をさせて頂きます」
アナウンスされた内容は事前に発表された内容がほとんどで、一週間の間この特殊な空間でプレイすること、基本的に二人PTでの行動がメインであること、クエストもそれに基づいたものとなっていること。街の外に出ることやクエストを受けるには二人そろってないといけないということ。相手がいなくても街を歩き回ることはできるらしい。そして、指定された自室でないとログアウトできないこと。
「HPが0になった場合は元の空間に戻され復帰ができなくなってしまいます、またそのパートナーも同様に元の空間へと戻され復帰ができませんので、二人で力を合わせて生き残ってください、しかしそれまでに得ていたポイントは有効ですので完全にリタイアとなるわけではございません」
「昼夜に関しては特に時間に関係なく常に昼となっております、ただし一日だけ夜の日がございますが、それがいつなのかということは控えさせていただきます」
夜の日は何かがありそうな予感がする。でも常に昼ってことはいつでもログインしたときに気軽に遊べるってことか。
「皆様の左腕に腕輪が装着されていると思いますが、それは自室の鍵、そしてその他のイベントで役立つ機能がついておりますので後でご確認ください、また、腕輪は左右関係なく装着可能ですので違和感がある方は自由に付け替えて頂いて結構です、しかしイベントリ内にしまうことはできませんのでご了承ください」
「それでは皆様、パートナーとともにランキング上位を目指して頑張ってください」
そういってアナウンスが終了するとともに街の門が開く。門をくぐりぬけ後ろを振り返ると、さっきまでいた広場のような空間はなくなり普通の平原が広がっていた。
「とりあえず、まずは宿の確認に行こう」
ホムラに言われて宿に向かう。最初どうすればいいのか戸惑っていたけど近くのNPCに聞いたら腕輪が案内してくれるとのこと。
腕輪には画面がついておりタッチ操作が可能になっている。主な機能は
・宿の位置を教えてくれる
・パートナーの位置を教えてくれる
・現在受けているクエストの詳細がわかる(らしい)
他にもあるらしいけど今わかるのはこれぐらいだ。
宿についてまずはカウンターへ、受付の人に腕輪を見せると
「では、こちらに腕輪の画面をかざしてください」
とカウンターに置かれている装置に案内された。そして腕輪をかざすと、部屋の番号がでてきてナビゲート機能が起動した。
「ご飯なんかは宿でも食べれるのか?」
ホムラが聞くと、ええ、と受付の人が答えて、ルーペを取出しそこから私たちを覗く。私の胸元が光る、【猛者の証】だ。それを見た受付の人から
「ナギ様とそのお連れ様なら無料でいくつかのサービスを提供いたしますよ」
といわれた。サービスの内容も気になるところだが、今は指定の部屋がどういうものか気になるので後回し。部屋に向かう途中ホムラからさっきのは何だ、と聞かれたけど内緒とだけいっておいた。
そして、ついにナビゲートされた部屋の前に着く。
――――――――――
NAME:ナギ
【投擲】Lv28【STR補正】Lv23【幸運】Lv19【SPD補正】Lv22【言語学】Lv32【視力】Lv13【】【】【】【】
SP23
称号 ゴブリン族の友




