クリスマス島の冒険
月曜日の朝。早めに起きてすぐにログインした。朝食は後でもいい、10時からメンテナンスが始まるのでそれから遅めの朝食をとるのだってありだ。
最低一回は「雪だるまの楽園」へいけるだろう、ということでの早朝ログイン。寝坊はだれ一人いなかったけど皆眠気が完全に吹き飛んでいる様子はなかった。
完全に頭が回らないことで瞬時の判断が遅れる。張り切ったはいいものの、まぁ…悲惨な結果になった。ものの数分で第五の村に戻ってきた。
「やっぱり駄目だったね~」
酒場の空いていた席に座ってクゥちゃんがあくびをしながら言う。クゥちゃんは朝が苦手なようで動きのキレも見る影がなかった。
「ですねぇ~」
「諦めててもよかったんじゃないですかね?」
それに呼応するようにバカップルが続く。実際ユキダルマーをこれ以上倒したところでそこまで大きな恩恵を受けるわけでもないのは事実。そして二人とも若干のまどろみの中見つめあって微笑んでいる。あっ、こういう画いいなぁ、と私の心が穏やかなのも朝だからだろう。
「っていうか! お前らシャキッとしろよ!」
マルセスさんの喝が入る。彼だけが「雪だるまの楽園」にたどり着くまでにはしっかりと「起きて」いた。
「無理ですよ、俺も死に戻る直前に目が覚めた感じですし」
舞浜君がマルセスさんを宥める。
「ていうかお前のせいだろ!」
「ええ!」
「ですね」
「ですね」
「だよね」
宥められたマルセスさんは舞浜君の方を向いて口撃。それを皮切りにバカップルとクゥちゃんが追撃する。まぁ舞浜君側のユキダルマーからの砲撃でこうなってるわけだしね。
みんなに責め立てられた舞浜君が私の顔を見る。
「舞浜君のせいかな?」
そういうと彼はガクッと肩を落とした。【鉄壁】の発動タイミングをミスった彼のせいだろう、うん。決して私がゆうくん側見ているときにあくびした隙に砲撃がきたせいでは…ない。
「とりあえずポイント最終チェックしよ」
そう言ってクゥちゃんは席を立って酒場に併設されているサンタ協会の方へと向かっていった。それにつられるようにみんなも席を立ってサンタ協会の方へ行く中舞浜君だけ動かなかった。
「舞浜君は?」
「場所取り」
動かない彼に気づいて振り向いて尋ねると椅子の背もたれに体を預けるようにして彼は答える。みんなに責められて責任を感じてるとかではなさそうだ。
「席はちゃんと守ってね」
「了解」
私の言葉に姿勢を正した彼を後ろに、サンタ協会の方へと向かった。
さて、最終的にどうなったかと言いますと
トナ・カーイ討伐47体×2pt
スノーマソ討伐105体×2pt
ユキダルマー討伐725体×3pt
ドッペルゲンガー討伐1体×10pt+5pt
お悩み解決30pt
相部屋許可15pt
かまくら設置500pt
かまくら回収計625pt
プレゼント50pt
合計3714pt
ジングルベルの合計は昨日みんなにプレゼントした分を引いて29個だ。メンテナンスまでの時間にすべて使い切ってしまわなければ…。
ということでサンタクロースを呼び出す。クゥちゃん達も呼び出したようで同じ姿のサンタが数人並ぶことになった。
「Merry Xmas!」
「あのぉ、ベルを一気に全部使うことって…」
「問題ないよ」
サンタさんは私の問いかけに優しい声音で答えてくれる。
そういうわけでリストを見るわけだけど正直な話29個もほしいものはない。予備の分も含めて【雪だるまブーメラン】に全部使うことにするか…それともまた別の……悩むなぁ。
「ふむ、悩んでいるようだね、あと一つジングルベルがあれば君にぴったりなプレゼントを渡そう、どうするかね? もちろん、そうなると30個で一つのプレゼントということになるがね」
悩んでいるとサンタさんが新しい提案をしてくる。あと一つ…。ジングルベル自体は交換することができないのでクエストなり、モンスターを倒すなりしないといけない。
25体倒すごとに1つジングルベルが渡されることを考えると、トナ・カーイならあと三体。でも移動が…。
「HAHA 決まったらまた呼んでくれればいいさ」
そう言ってサンタクロースは消えていった。
他のみんなにこのことを話す。他のみんなも30個まとめることで何やら特別っぽいアイテムをもらったそうだ。
「ボクは【魂の果実】とかいうやつだね」
とクゥちゃんがもらったアイテムを教えてくれる。○○の果実……。私は以前エイローイベントの報酬でもらった【禁断の果実】を思い出していた。あれを食べたら強制的にSpを消費して【魅力】を取得させられたんだっけ。
クゥちゃんにはとりあえず気を付けるように言って、私のことに話を戻す。
「トナ・カーイって遠いし…」
マルセスさんの言うように第三の村は遠い。吹雪が来ないとしてもメンテナンスまでに間に合いそうにもない。
「せめてヴァイスさんみたいにソリを持っている人がいれば…」
残念ながら全員ジングルベルを使い切ってしまったらしい。
「舞浜は?」
「あっ」
クゥちゃんに言われてハッとする。若干慌ててたのもあって頭から消えていた。急いで舞浜君が守っているであろう、あの席に戻る。
「お帰りー」
「舞浜君」
「何!?」
みんなが返ってきたのをのんびりした雰囲気で迎えた舞浜君に近寄る。何を思ったのか彼は背筋をぴん、と伸ばし姿勢を正す。
「ジングルベル、まだある?」
「え? えーっと…あ、る? あるよ」
私の言葉に一瞬思考が停止したみたいだけど、どうやらジングルベルはあるみたいだ。なのでソリを取得してもらおうと事情を話す。
「わかった、いいよ」
「ありがとう!」
彼の返事を聞いて私はなんか自分だけ都合のいいこと言っているような気分になりながらも喜ぶ。
舞浜君はサンタを呼び出してソリを入手。全員でソリに乗って第三の村へと急ぐ。
「ていうか俺第三の村で戦ったことないんだけど…」
「大丈夫!」
不安を漏らす舞浜君に私がトナ・カーイの倒し方をレクチャーする。主に雪玉。
トナ・カーイ生息域に到達するとすぐにトナ・カーイを見つけて私が雪玉を投げる。全員眠気なんてすっ飛んで普段通りに狩りを行う。
三体倒したところで再びそりに乗り込み、第三の村へ。
「俺は入れないから第五の村でログアウトするよ、じゃあね」
「あ、うん」
今からソリに乗って第五の村に間に合うかは微妙だけど、そう言い残して彼はすぐに去って行った。私達もサンタ協会へと向かい、私はトナ・カーイ50体討伐達成のジングルベルを受け取ってサンタクロースを呼ぶ。
「Merry Xmas!」
いつもの言葉でサンタが現れ、
「おや、30個ジングルベルを持っているようだね、30個のジングルベルとひとつのプレゼントを交換できるけど、どうするかね?」
「それでお願いします」
どうやら前回の会話記録を覚えているわけではないらしい、と思いながらサンタの提案に乗る。
「はい、君にはこれがいいだろう」
そう言ってサンタクロースは袋から楽器のベルのようなものを取り出した。
【聖夜のベル】
特殊アイテム
サンタクロースからのプレゼント。心地いい音色のベル。
サンタクロースはプレゼントを渡すと消えていった。
「何それ?」
ベルをじっと見つめていると後ろから覗き込むようにしてクゥちゃんが尋ねる。
「さあ?」
リーンリーン
<【幸運】が【祝福】に進化しました>
私がクゥちゃんに応えながらベルを鳴らすと、スキル【幸運】が【加護】のスキルも最大でないと進化させることができない【祝福】にSpを消費することもなく進化した。
…ぴったりかはおいておいて、得はしたかな。
そのあとログアウトして、遅めの朝食をとった。
――――――――――
NAME:ナギ
【ブーメラン玄人】Lv9【STR強化】Lv8【ATK増加】Lv31【SPD強化】Lv8【言語学】Lv41【遠目】Lv22【体術】Lv34【二刀流】Lv52【祝福】Lv1【スーパーアイドル】Lv9
控え
【水泳】Lv28
SP8
称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主
29個も思いつかない…。
からの苦肉の策(汗)




