クリスマス島の冒険:再度
ユニーク15万達成いたしました。
「初見殺し? 的なものばっかりだな今回のイベントは」
死に戻って早速マルセスさんは悪態をつく。トナ・カーイにやられ、吹雪の時のスノーマソにやられ、「雪だるまの楽園」のユキダルマーにやられ。マルセスさんが悪態をつくのもわかる。
「デスペナで一時間…折角送ってもらったのにほんの数分でこれだもんね…」
クゥちゃんも苦笑い。
「ナギさんに恩返しってことだったはずなのに…申し訳ないというか」
「舞浜君が気にすることでもないと思うよ」
舞浜君はちょっとブルーな雰囲気を感じたのでフォローしておく。
「情報のチェックをもっと入念にしないとな」
とマルセスさんはいい残しデスペナの間色々調べてくる、とログアウトしていった。
再び昼の時間が来るのは現実での夜。ダガーを切らしたので補充しに行かなきゃいけない。この辺に扱ってる人がいるといいんだけど…。
「ナギちゃんはこれからどうするの?」
ダガーのことを考えているとクゥちゃんが尋ねてくる。
「ダガーのストックが切れたから、補充したいんだけど、売られてるかなぁ?」
「さあ? 他の村ではあれだけどこの村の武具屋には色々おいてあるんじゃない?」
ということで宿屋の中に入っている武具屋にいくことに。
他の村では雪製の武具とかばかりだったけど、この村でも似たようなものだった。この村では氷製の武具が置いてあるくらいの違いしかない。その品ぞろえを見て少しガックリしながら商品を見て回る。
「でも氷のダガーがあるよ」
クゥちゃんが声を上げる。氷製の武具にも投擲用の武器があるなんて、と喜んだのも束の間。
「高っ!」
1本で相応のお値段…。他の氷製の武具も価格は高いけど1本でその3分の1くらいのお値段って。数をそろえようと思うと出費が大変だ。
倉庫になら石ころがあるんだけど宿屋の部屋からしか倉庫につなげないので石ころにも期待できない。
舞浜君は氷の鎧が気になっていたみたいだけど、特にめぼしいものはなかったのでプレイヤーの露店を回ることにした。
「氷の防具が気になるなら見ててよかったんだけど」
割と真剣に悩んでるようだったのでそういうと、
「え? でもどのみち倉庫使えないとお金が足りないし…」
ここにも倉庫が使えずに悩む人がいたみたいだ。
プレイヤーの露店を回るけれど投擲武器を扱っている店は見当たらない。まだあんまり投擲武器を扱う生産プレイヤーは増えていないみたいだ。それとも単純に第五の村に到達してないだけなのか…。
でも「神風」勢がいるのでどこかに投擲武器を扱う人はいるはずなんだけど、露店を開いてないんだろうか。
一応NPCの露店も見たけどこっちは素材とかアイテムばかりで装備はなかった。
とそこで行列ができている露店を見つけた。気になってちょっと様子を見てみると、
「あれって、変態さんじゃない?」
クゥちゃんが露店の主を見ながら言う。クゥちゃんは彼のことを「変態さん」と呼んでるらしい。まぁそう呼ばれる人はただ一人…のはず、ローエスさんだ。
ローエスさんなら何か知ってるだろう、と行列に並ぶ。しばらくすると私達の番がくる。
「はい、お待たせしまし…って嬢ちゃん達か」
一瞬この愛想のいい――うさんくさい笑顔だけど――お兄さんは誰かと思ったけど私達とわかるや否や普段の様子に戻る。これじゃああくどい商売してるところに知り合いがやってきた図と変わらないような…。
「で何か用なのか?」
っとこの際ローエスさんのことはどうでもいいか。とダガーが切れて補充したい、ということを伝える。
「はいはいダガーね、って俺は鍛冶はできねぇんだよ!」
なぜかキレられた。っていうか鍛冶できなかったんだ。生産系はローエスさんさえいれば問題ないイメージだったのに。
「それを作れる人がこの辺にいないかなぁ? と思いまして」
ローエスさんにもできないことがあるとわかったのでそれができる人がいないか尋ねる。
「さぁ? 暇な奴呼ぶからそいつに聞け、後ろ並んでるの捌かないと道の邪魔になってるし」
という感じで追い払われてしまった。「暇な奴」を呼んだらしいのでローエスさんの店の隣で待つ。
それっぽいなと思ってもことごとくローエスさんの露店に並んでいくのを見ること数分。
「呼ばれたから来たが、用があるのはあんたたちでいいのか?」
と声がかかる。その声の主は黒い重鎧で身を包んだ人だった。
「え? あ、はい」
黒い重装備の鎧と言えばガイアさんが思い浮かんだわけだけど、でもおそらくまだ「雪だるまの楽園」で戦ってるだろうし…。
「というか久しぶり、でいいのか? 最近ジェットがログインしてなくて寂しかろう」
どうやら知り合いらしい。ギルド「神風」のメンツでこんな姿なのはブーメランを使う先輩の「黒鉄」さんだ。
「あ、黒鉄さん、でしたっけ?」
「覚えてくれてたのか」
「ええ、珍しいですし…」
一瞬忘れてたなんて言えない。いや以前会った時と装備が違うし…。
クゥちゃんと舞浜君に適当に黒鉄さんの紹介をした後ダガーの補充をしたいということを黒鉄さんに伝える。
「今回のイベントはダガー系が使いやすいもんな、第五の村でギルド以外の人に回せる数はあったかな?」
「本当に少しでもいいので」
黒鉄さんは「とりあえず行ってみるか」と私達を案内してくれた。酒場とつながっている大きな宿屋とはまた別の場所にある小さな宿屋。そこにギルドの生産メンバーが一人泊まっているらしい。
聞いてくる、と黒鉄さんだけが部屋の方に向かい、私達は宿屋のロビーで待った。数分待っていると黒鉄さんが下りてきた。
「100本が限界だそうだ、ベリーワーカーズが第四の村に行ったせいで生産組も大変みたいだ、すまんな」
「いえいえ100本あれば大丈夫なはずです!」
申し訳なさそうな黒鉄さんにむしろこっちがなんか悪いような気持になりながら100本分のお代を払って受け取る。
ついでにベリーワーカーズの居所もわかった。ちなみにこの二人は今ログインしてない。きっとデート。
黒鉄さんにお礼を言った後、酒場の方へと戻る。そこでそれぞれ時間をつぶしてデスペナの時間が終わったころマルセスさんが戻ってきた。
「とりあえず雪だるまの楽園での長時間生き残るすべを調べてきた」
とマルセスさんによるといくつかあるようで、その中で私達に最も適していると思われる方法を教えてくれた。
曰く、まず全員で固まって動き、砲撃までに倒せそうにない場合に盾の後ろに隠れて、
「盾が防ぐ」
舞浜君が輝く方法だ。あとは制限時間が残り半分になったら「キングダルマ」なる巨大な雪だるまが現れるようで、それが恐ろしく強いそうだ。戦わずにそいつの攻撃を躱しながら周囲のユキダルマーを倒していくのがより長く生き残るすべだそうだ。
「今は吹雪も止んでるし…行ってみるか」
と調べてきたこともあってかマルセスさんのテンションが上がっている。
「でもチケットないですし」
と私は昼になってからでも、という気持ちを暗に示す。
「チケットならあるよ」
「「「なんで!?」」」
舞浜君の発言に全員声が揃ってしまうのも仕方がない。さっき行った時もいつのまにか取得していた舞浜君のチケットを使ったはずなのに。
「まぁでもこれで行けるな!」
ということで行くことになった。舞浜君の魔法で周囲を照らしながら、目が利く私と索敵レーダーもちのクゥちゃんが周囲を警戒しながら雪だるまの楽園へと向かう。歩いて約10分ほどのところなので特に何事もなく無事に到着することができた。
「じゃあ、今度は全員で足並みをそろえていくぞ」
前回舞浜君一人が踏み込んだことでばらばらになった反省を踏まえてマルセスさんの言葉に従い全員で足並みをそろえる。
そして私達は再び「雪だるまの楽園」へと足を踏み入れる――
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NAME:ナギ
【ブーメラン玄人】Lv1【STR増加】Lv50【ATK増加】Lv20【SPD増加】Lv48【言語学】Lv41【遠目】Lv20【体術】Lv34【二刀流】Lv52【幸運】Lv50【スーパーアイドル】Lv9
控え
【水泳】Lv28
SP20
称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主




