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ナギ記  作者: 竜顔
222/276

クリスマス島の冒険:楽園

 土曜日。


 街はクリスマスにざわついているものの、私は特に何もなくいつものメンツとともにゲームの世界で冒険だ。


 昨日ログアウトした酒場に出ると丁度クゥちゃんと遭遇した。ただ何故かどこかぐったりとした様子がうかがえる。


「あれ? クゥちゃんどうかしたの?」


「外…」


 その一言だけしか返事がなかった。どうやら原因は外にあるらしい。ということで酒場ら出る。


 これまでクリスマスの感じがあんまりなかったこのクリスマス島の各村々。だけど今日はなんとありとあらゆるイルミネーションが村の建物に取り付けられていた。そしてさらには恋人と思われるNPCカップル達が仲睦まじく歩いている姿も目立つ。


 その世界を見た後酒場に戻ってくる。


「恋人がいない人たちには精神的に来る光景が広がってるね…」


「ゲームの中でまであんなの見せられたくなかったよ」


 今日はいないけどよく見せられてるような気がするけど、という突っ込みは我慢して他のメンバーが来るのを待つ。


 しばらくするとマルセスさんがログインしてきて、舞浜君もそれからすぐにやってきた。


 宿屋の方はまだ空いてないそうなのでとりあえずチェックインは保留。


 村の外のユキダルマー狩りへと向かう。


 天候は晴れ。いつ吹雪になるかわからないので注意しつつユキダルマーを探す。探すのはユキダルマーそのものより狩場になりそうな「場所」という感じだけれど。


 かまくらはあちこちに点在しているけれどほとんど誰かが入室していたり、拠点にしていたり、ということもあってかまくらがあんまり近くにはない場所に落ち着く。


 その近くに早速ユキダルマーの反応がクゥちゃんの索敵レーダーに引っかかったので全員でそこへと向かい、倒す。


 ユキダルマーはサクサクと倒せるので集団相手でも一回の戦闘であんまり時間がかからないのがうれしい。


 昼時に一度第五の村に戻ってお昼休憩。ユキダルマーの討伐数は合計で170体。まぁ、こんなものだろう。


 お昼休憩を終えて再びログイン。


 今度は私が最後になってしまったようで、すでにみんなログインしていた。


「まずいことになってる…」


 私がログインしたのを見つけてすぐにマルセスさんが近寄ってきながら顔をしかめて言う。こんなことを言う理由は大抵…


「吹雪ですか?」


「ああ」


 私の問いかけにマルセスさんは頷く。私達がログアウトした辺りぐらいから吹雪がやってきてしまったようだ。


「どうする?」


 クゥちゃんがみんなに尋ねる。予定ではあと少しで昼の時間が終わるので、その間に「雪だるまの楽園」の近くまで行って可能なら周辺で狩りをして、夜が来たら楽園に入る。ということになっていた。


「吹雪自体は勿体ないけどスーツで何とかできるが、ユキダルマーの動きだよな」


 マルセスさんは考え込む。幻惑系に対抗できるのは私とマルセスさん。舞浜君はよく分からないけど、とりあえずクゥちゃんはマルセスさんから治療してもらわないと幻惑系の状態異常で見方を攻撃してくる「モンスター」になってしまう。


 私はPTメンバーが自分を攻撃することによってポイントを減らされるのを防ぐ「友達お守り」があるのでスノーマンスーツを壊される心配はないけど他の人はそういうわけにもいかないだろうし。


「四人だけなら、うちのソリに乗ればいい」


 どうするか話し込んでいると横から声がかかる。その方向を振り向くと二人の人が立っていた。二人とも黒い重たそうながっしりした鎧を着こみ、兜は顔をすっぽり隠していてその表情は分からないし顔もわからない。


 でも誰かは知っている。片方の人はトッププレイヤーとして有名人のガイアさんだ。もう一人は…知らない。


「えっと…うまい話には裏がありそうだが?」


 マルセスさんも負けじとローブで目を隠したまま疑うような言葉を投げかける。私の時もそうだけどマルセスさんは有名人とかに疎いのかもしれない。まぁ、私は一部で大変なことになってるだけだと信じたいこの気持ちを支えてもらってるのでマルセスさんみたいな人は大切だけれど。


「普通はそう思うだろうな、だがこっちも昔の恩があってね、それを返せるのならっていう感じだ」


 ガイアさんは落ち着いた様子で話す。なんか恩があるらしい。私達はそれを聞いてマルセスさんに視線を集める。


「俺にはないが?」


 マルセスさんがこちらを向いて言う。あれ?


「え、ボクも会ったことないけど…」


「俺も…」


「私も」


「「「「…あれ?」」」」


 誰にも心当たりがなかった…。こんなことなら恩があると勘違いしてくれてるうちに、とか考えたのは秘密。


「まぁ無理もない、直接会ったわけじゃないから」


 とガイアさんは私の方を見る。…見てるよね? 頭はこっち向いてるけど目線は違う誰か、とかいうことはないよね?


「私、ですか?」


「ああ、ナギさん、でしょ?」


「あ、はい」


 どうやら私のようだ。うん、全く身に覚えがない。


「本人は身に覚えがないみたいだが…」


 マルセスさんが「本当にあってるのか?」という様子でガイアさんに聞き返す。身に覚えがなくて罪悪感はあるけど便乗してソリに乗っけてもらえばいいのに、と思ったけど言わない。多分最初はそう言って近づいて後から…っていう危険を考えてのことだと思う。


「大分昔の話になるが、エイローのイベントの時まで話が遡るんだが――」


 曰くエイローイベントの時にバッファ朗から逃げていたプレイヤー達が言っていた「タンカー」がガイアさんだったらしい。


「会えたらお礼を、と思っていてあの時一緒にいたというホムラやジェット、スカイには済ませたんだが君とはなかなか会えなくてね…、楽園まで送るだけなら身に覚えがないから、とか言う必要もないだろ?」


 とのこと。丁度今ガイアさんの方も二人だけだから私達が4人ならソリに全員乗せられるし、というのもあるようだ。


 なのでお言葉に甘えて。


 ガイアさん達のスノーマンスーツ姿を拝んでやってきた楽園の前。


「もうじき夜が来ると思うが吹雪がある以上はやく楽園に入った方がいい、ではまた」


 そう言い残してガイアさん達二人はさっさと「雪だるまの楽園」へと行ってしまった。


 雪だるまの楽園は山に囲われていて、その外側は断崖絶壁。楽園へと行くためには洞窟を抜けなければならない。というものだ。だけどチケット自体は洞窟の前で消費するらしい。


 早速舞浜君がいつの間にかサンタクロースを呼んで手に入れていたチケットを使って中に入る。


 洞窟は短く。戦闘を歩く舞浜君が洞窟を一歩抜ける。と


「「「うわぁ!」」」


 後ろを歩いていた私達三人は後ろからの猛風で洞窟から吹き出された。前に倒れて立ち上がるとユキダルマーだらけ。


「ナギさん! 急いで!」


 舞浜君からの叫び声で我に返り手当たり次第に手に取ったダガーを投げつける。近場の奴から遠くの奴まで。


 クゥちゃんも縦横無尽に駆け回る。雪だるまの楽園の景色? そんなの見てる暇ないです。今また攻撃態勢に入ってるやつがあそこに、ああ! 前の奴が邪魔!


 狙った奴の前にわらわらと出てきて狙った奴に当たらない。駆け回っていたクゥちゃんも身動きが取れなくなっているっぽい。


 舞浜君は知らない。マルセスさんも知らない。


 ドオォン!


 と音がして雪の柱が立つのでそこに目が向く。舞浜君がやられたみたいだ。


 ドドォン! ドドドドオォン!


 と柱が立ったすぐそばに何本も柱が立つ。舞浜君のスピードでは後れを取ってああいう事態になるようだ。…と思ってたら一本はマルセスさんがやられたものらしい。


 って私も人の心配してる場合じゃない。慌ててダガーを投げ続けるもついにダガーのストックがなくなる。


 ユキダルマーの攻撃は口を開いてそこから雪の砲弾を発射するという物。発射直前にはバレーボールほどの雪の球体が口の中に出来上がる。


 ダガーのストック切れにすぐにブーメランに切り替えられず、後ろを振り向くと雪の球体がすでに完成形。


 慌てて躱すために走り始める。でもその砲弾自体のスピードは申し分なく速く、直撃は免れたもののその爆発に巻き込まれてHPが0になった。


 私を葬った砲弾の雪柱が立つ頃、少し離れた場所でも雪柱が立っていた。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン玄人】Lv1【STR増加】Lv50【ATK増加】Lv20【SPD増加】Lv48【言語学】Lv41【遠目】Lv20【体術】Lv34【二刀流】Lv52【幸運】Lv50【スーパーアイドル】Lv9


控え

【水泳】Lv28


 SP20


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主

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