クリスマス島の冒険:第五の村にて
第五の村は第三、第四の村に比べて大きな村で、夜という時間のせいもあってかそこら中にプレイヤーの集団が出来上がっている。
プレイヤーの露店も多くそれに張り合うかのように絶対クリスマス島のNPCじゃないよね、って感じのNPCの露店も開かれている。
施設はこれまでの村同様に宿屋と教会、酒場とサンタ協会、武具屋やアイテム屋。ただ宿屋は複数あり、とある宿屋が教会以外のすべての施設を取り込んでたりするので驚くばかりだ。当然民家も多くなっている。
私達がまず向かったのはその大きな宿屋だ。縦長長方形の大きな宿屋の横に廊下でつながっている二階建ての酒場&サンタ協会。なので真正面から見るとアルファベットの“L”の縦棒が短い感じに見える。
入ってすぐのロビーは大してこれまでとの変化は見受けられず、強いて言うなら「広い」ぐらいだ。つながっている廊下から酒場に向かう人もいれば、そちら側から戻ってくる人もいる。
「あの、チェックインしたいんですけど」
マルセスさんが受付のNPCに話しかける。すると受付のNPCは何やら操作をし始め、
「申し訳ございません、現在満室となております、検索させていただきましたが他の宿屋も同様な様子で、定員になっていない部屋の方々に申請を出しましたのでその返事が来るまでお待ちいただくか、本日は酒場や教会でのログアウトをお願いいたします」
と残念そうな表情で告げられてしまった。それに同じような状況の人は他にもいるそうなのでどれくらい待たされるかわからないらしい。
今日は普段はやらない夜の狩りもやったのでそろそろ限界が…。他のみんなもそんな感じなのでログアウトするために酒場へと向かう。ログアウトする前にサンタ協会の方でポイントの確認とジングルベルを受け取る。
トナ・カーイ討伐47体×2pt
スノーマソ討伐105体×2pt
ユキダルマー討伐131体×3pt
ドッペルゲンガー討伐1体×10pt+5pt
お悩み解決30pt
相部屋許可15pt
かまくら設置500pt
かまくら回収計15pt
合計1276pt
ユキダルマー討伐50体、100体、125体達成でジングルベルは三つ手に入り、合計11個。
怖いもの見たさでランキングを見る。本日の午前5:00に更新されたランキングがこちら。
1位エース 7289pt 第五の村
2位テツ 7284pt 第五の村
3位フランダート 7111pt 第三の村
4位ホーク 7103pt 第五の村
5位レイブス 7000pt 第五の村
6位ホウガン 6997pt 第五の村
7位ガイア 6995pt 第五の村
8位カザグルマ 6993pt 第五の村
9位マギー 6907pt 第五の村
10位セバスチャン 6889pt 第五の村
思ったよりポイントが伸びてない、どころか順位も入れ替わってるしポイントも僅差になってきている。そして「神風」勢と思われるボマーさんの名前が消えた。
ふと見るとマルセスさんもランキングを見ていた。
「随分と動いたな」
「ですね、何か理由があるんですかね?」
「考えられるとしたら……吹雪か?」
マルセスさんと二人で上位陣が混線化した理由を考える。でもその答えが出るはずもなかった。
「知らないのか? 昨日の吹雪は地獄だったって散々話題になってるのに」
二人で考え込んでいるとその様子を見ていたらしい他のプレイヤーが話に入り込んできた。
「そうなんですか?」
話に入り込んできたプレイヤーに聞き返す。背中には弓を背負い、装備も雪国の狩人を彷彿とさせる恰好の男性だ。
「あれ? 吹雪を体験しなかった感じ?」
「体験はしたが…スノーマソ相手だったからな」
男性からの問いかけにはマルセスさんが答える。
「おいおい、一応体験したんならわかるだろ? 吹雪の時モンスターの動きがいつもと違っただろ?」
私達が吹雪の日を体験していると聞いて男性は「まじかよ」というような表情でさらに聞いてくる。確かにスノーマソも異様に一か所に集まってきた気もするし、あと地面から飛び上がってきたり、いつもと違ったと言えば違ったような…。
「うーん?」
「まじか…」
首をひねる私を見て男性は肩を落とす。
「とにかく、だな、吹雪の日はモンスターの動きが普段と違うことが分かってるんだがそれがなかなか面倒で――」
と男性はランキングが混戦となっている理由を、まずは吹雪の日にモンスターの動きが変わることから説明してくれた。
男性によると普段は攻撃が遅いユキダルマーは吹雪になると、普段より素早く幻惑系の技を使ってくるようになるらしい。特に昨日は初めて吹雪に遭遇したため対応ができずにことごとくその魔の手にやられてごっそりポイントが減った人がたくさんいたらしい。
特に厄介なのが幻惑系の状態異常になる技はダメージはないに等しい低威力でありながら、その技を放った後ユキダルマーは状態異常になってないプレイヤーに標的を切り替え、状態異常になってないプレイヤーがいなくなったら静観することだそうだ。
そのせいで二人なら効果が切れるかどちらかが死に戻るかしないかぎり延々と殴り合いをさせられるので、その分ポイントが一気に減って場合によってはデスペナルティで一時間は動けない。と昨日は大騒ぎだったようだ。
「今も完全に対策出来てるとは言い難い、スノーマンスーツで吹雪は怖くない、と言っても吹雪になってからスノーマンスーツを装備してもユキダルマーの技の発動が速くて…てことがあるし」
と言いながらも男性は「まぁ、上位の人は今頃対策思いついてまたポイントを大量に稼いでるだろうから…」と告げる。
ちなみにスノーマソはリンクモンスターになるそうだ。しかもリンク範囲はどんどん広がっていくということで、どうりで周りにいなかったはずのスノーマソが一気に大量に現れたわけだ。
親切な狩人さんにお礼を言った後、全員で集合する。というか私達が話し込んでるのを他のみんなが待ってただけなんだけど。
「何話してたの?」
クゥちゃんが聞いてくる。
「吹雪の時のユキダルマーの動き、かな」
と男性から聞いた話をみんなにもする。
「吹雪は一層注意が必要だね、多分第五の村周辺のかまくらはどんどん占拠されていってそうだし」
というクゥちゃんの言葉にみんな頷いた後、明日の待ち合わせ時間を確認してログアウトした。
あ、そういえば明日がクリスマスだ。ということでバカップルはデートするから、と明日は一緒に行動できないみたいだ。
……なんだろう、この利用された感。
――――――――――
NAME:ナギ
【ブーメラン玄人】Lv1【STR増加】Lv48【ATK増加】Lv14【SPD増加】Lv46【言語学】Lv41【遠目】Lv20【体術】Lv34【二刀流】Lv50【幸運】Lv50【スーパーアイドル】Lv9
控え
【水泳】Lv28
SP13
称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主
ということでクリスマスは土曜日になりましたけど…細かく日数計算してるわけではないので、色々ずれてるかもしれませんご了承ください。




