クリスマス島の冒険:集結
金曜日。
「渚もゲームばっかりやってないで、ちゃんとやることやりなさいよ?」
「分かってます」
朝、いつもより少し遅く起きてくるとすでに朝ご飯が用意されていた。そしてお母さんからのお小言をいただき、分かってますと言いながら視線はそらす。
さて、クゥちゃんは今日終業式だとかで午後からならログインできるそうだ。幸い今日は午前中はゲーム内も夜。そういうのもあってゆっくり朝を過ごそうと思ったわけだけどそういうわけにもいかないらしい…。
まぁ冬休みということで家のお手伝いとか、宿題とか、そういったことを適当に済ませて午後からのログインに備える。
正午過ぎ、お昼を食べた後ゲーム内の時間が昼になる時間を待ってログイン――
全く打ち合わせをしていなかったせいか舞浜君はすでにログインしているみたいだ。部屋を出てインベントリを少し確認する。
サンタクロースを呼べるジングルベルもユキダルマー25体討伐達成とかまくら設置達成分も含めてこれで8個だ。最後に一気に使った方がいいような気もするけど、稼ぎ場所と言われている「雪だるまの楽園」へと行けるようになるチケットを手に入れるためには使わないといけないので、使うタイミングやペースは難しそうだ。
堅実派としては最後に一気に使いたい感じですけど。
クゥちゃんが来るまでの間に少しポイントを稼ごう、と宿屋から出て酒場へと向かう。
「あら、ナギさん!」
すると宿屋から出てすぐのところに見慣れた人の姿があった。バカップルの彼女の方ミカちゃんだ。忘れないように言っておくと「ミカちゃん」までが名前だ。だからちゃん付けをするなら正しくは「ミカちゃんちゃん」になるので、普段は呼び捨てにしていると言っても過言ではない。
「なんか変なこと考えてませんか?」
「いやいや別に! ミカちゃんも第四の村に来てたんだ」
「はいそうなんです、昨日終業式があって今日から冬休みなのでそれまでになんとか第四の村まではって感じで」
どうやらミカちゃんも冬休みに入ったようだ。ということは彼氏の方の「ゆうくん」も冬休みということか。
「ところでゆうくんは?」
そこでふと彼女の傍らに常に微笑みを絶やさない鎧の彼の姿がないことに気づく。
「昨日徹夜してたみたいで、午後からログインするって言ってましたけど」
と言われてフレンドリストを確認する。まだログインしてないらしい。
「ところでナギさんはいつから第四の村に来たんですか? 私達おとといぐらいには来てたんですけど、イベントに入ってから特に連絡がないのでこっちからもし辛くって」
とミカちゃんが尋ねてくる。言われてみればこのイベントに入ってから舞浜君しかりこのバカップルとも連絡はしてなかった。
「私達はその前の日かな」
「そうなんですか、私達ってことは他に誰かと一緒なんですか? あ、舞浜さん?」
最後のところでニヤニヤ顔を作ってくるミカちゃんを気にしないように装って、
「舞浜君はおとといに第四の村で会ってそれから、第四の村まで来たのはクゥちゃんと、あとはマルセスさんっていうこのイベントで知り合った人、第四の村までは他にもう一人強い人が一緒だったんだけどね」
と一緒に行動している人を説明する。
「ってことは今PT四人ですか? 私達野良の人達と一緒に来たんで今フリーなんですけど、入れてもらえるとうれしいんですけど…」
とミカちゃんは舞浜君のことでもっと突っ込んでくるかと思ったらそうでもなかった。二人だと満足に村の外にも出られなくて困っているみたいだ。ここまで来たのも野良の人達に入れてもらったりしながら来たようだ。
「多分入れられると思う、でも一応これまで行動してきた人とは違う人もいるから、その人に聞いてみないことには」
「分かってます」
マルセスさんはまだログインしてないので今すぐに、というわけにはいかないけど。よく考えたらいつログインできるか聞いてなかったけど大丈夫だろうか。
そんなことを考えていたらマルセスさんがログインしてきた、PTの人を増やすことは任せた、とだけ言われたのでミカちゃんをPTに入れる。
結局酒場で依頼をこなすまでには至らなかった。マルセスさんがログインした後、PT全員で合流してユキダルマー狩りの話とかしているうちにクゥちゃんやゆうくんがやってきた。
「じゃあ行くか」
全員が揃ったところでマルセスさんの言葉を皮切りにユキダルマー狩りに向かう。ミカちゃん達はユキダルマーはまだ数体ぐらいしか狩れてないようなので、全員で第五の村へ行くには昨日かまくらを作る前の状況に戻ったようなものだ。
「…おい、あれ、いいのか?」
村の外に出てしばらくするとマルセスさんが小さい声でそう言いながら顔で示す。その方向を見るとバカップルが二人だけの世界に入っていた。
「普段からあんな感じですよ」
「リア充め」
「……おまえらがいいんならいいんだが」
私達の反応を見てマルセスさんは少し納得がいかないような表情をしながらも引き下がる。確かにいつもこんなもんだと思ってたけど今回は普段はいないマルセスさんがいるわけだし注意するべきかもしれない。
注意すると二人は「多少」控えめにいちゃつきだした。
「…まぁ、気を使ってもらったし、感謝するよ……あれは強者だな」
そんあバカップルの様子を見てマルセスさんも観念したようだ。
かまくらもちらほらとうかがえるほど数を増やしていて、そこを拠点とするかのようにスノーマソを狩る人もいる。そういった人を避けて通りながらユキダルマー出現地域へと着く。
昼間ということもあるのか人の数はそこそこ、とはいえ昨日見た数よりもはるかに多いなかユキダルマーを探す。
「かまくら効果か」
舞浜君が独り言のようにして呟いた言葉はまっ白い雪の中に溶けて消える。何もリアクションをしなかったわけじゃなくてクゥちゃんのレーダーに反応があったからだ。
「10ぐらい」
簡潔に伝えられた言葉の後、他のPTに先を越されないように一斉に走り出す。
ユキダルマーがこちらに気づいても攻撃を繰り出すまで時間がかかるのでその隙に一瞬のうちに倒す。
あんまり人がいないようなところにかまくらを発見。誰も入ってないみたいなので使えそうだ。その場所をきちんと覚えてまたユキダルマーを探しに行く。これで吹雪が急に来ても大丈夫だ。
それからユキダルマーをハイペースで倒していく。バカップル以外の面々はあと少しで第五の村へと入れるようになる、というところで――
「見えなくなった」
「吹雪が来たか…」
「あと少しなのに」
「これが吹雪なんだぁ」
「全然周りが見えないんですねぇ」
クゥちゃん、マルセスさん、舞浜君、バカップル。急に来た吹雪にそれぞれ思うところがあるみたいだ。……それよりスノーマンスーツ着ようよ。
『スノーマンスーツ…』
『了解』
私がPTチャットで呼びかけるとマルセスさんから返事が返ってくる。それを聞いた後、スノーマンスーツを着用する。
「うお!」
「うわ!」
スノーマンスーツを着用すると狭くなっている視界が広くなるだけじゃなく吹雪で吹き付ける雪もなくなってクリアに見えるようになった。
そしてさらに、変な雪男みたいなのが何体も。
「とりあえず非難した方がいいんじゃないですかね?」
確認してなかったけどバカップルの二人もスノーマンスーツを持っていたらしい。
あと少し、ということで歯がゆい思いをしながらも先ほど位置を覚えていたかまくらへと戻った。幸いそこに人はいなかった。
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NAME:ナギ
【ブーメラン玄人】Lv1【STR増加】Lv48【ATK増加】Lv14【SPD増加】Lv46【言語学】Lv41【遠目】Lv20【体術】Lv34【二刀流】Lv50【幸運】Lv50【スーパーアイドル】Lv9
控え
【水泳】Lv28
SP13
称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主




