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ナギ記  作者: 竜顔
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クリスマス島の冒険:爽快

 最初はただ雪を噴き上げるだけの棒に不安を感じたけれど20分もすればさすがは製造キットというべきか、それともファンタジーというべきかドーム型の雪の塊がそこにできあがっていた。


 その約20分の間に戦闘になったのはスノーマソ一体。吹雪も訪れなかったので正直いうとやることがなくて暇だった。


 最初は私達がかまくらを作っているのを見るとどこか別の場所へ行く人ばかりだったけどしばらくすると近くでかまくらを作り出すPTもちらほらと現れた。かまくらが集まってることが分かればその周辺で狩りをする人も出るだろうし、という考えなのかもしれない。とは舞浜君の弁だ。


 お互い近くにモンスターが寄ってきてないかの話をしたりちょっとした交流はあった。


 ボフ!


「うぉ!」


 ドーム型の雪の塊のてっぺんから一瞬雪が吹き上がった。突然のことに舞浜君が声を上げる。今のが「上の穴」ができたこと、つまりあとはコアを入れるだけという合図だろう。


「これで完成?」


「ううん、コアを上から入れなきゃダメだって」


 ドームから雪が吹き上がったのを見て見回りをしていたクゥちゃんが寄ってきて問いかけてくるので首を横に振る。さて、上に登れるだろうか…。


「あとはコアを入れるだけって…にしては小さいな、もっとこう、大きいのを予想してたんだが」


 マルセスさんも首をひねる。確かに定員が6人というには小さい気がする。押し込むようにすれば4人は入れるといったぐらいの大きさだ。


 適当に雪のドームの周りを一周し、どこかに足をかけられるような場所がないか探してみたけどそんなあからさまに足かけになってる場所はなかったので、恥ずかしい思いをしないように、と祈るようにして足をかけて登る。


 幸い落ちることなくてっぺんにたどり着く。せいぜい数歩なんでそんな大したことでもないんですけどね。


 てっぺんに登ると小さい穴が一つ空いていた。インベントリからコアを取り出して入れる。


 ボフ!


「うわぁ!」


 コアを入れるとドームが震動し、一瞬跳ね上がるようにして動いた。それで私は飛ばされて近くの雪に落ちる。柔らかい場所でよかった。


「大丈夫!? ナギさん!」


 舞浜君が駆け寄ってくる。HPバーに変動はない。だから問題は全くない。


「大丈夫…で、どうなった?」


 とかまくらの方に目を向けると依然として雪のドームがそこにあった。


「んー? なんにもない、か?」


「ん? なんか浮き出てきた」


 マルセスさんとクゥちゃんがどこか変化を探すように見回していると、雪のドームに放物線状の文様がいくつも浮き出てきた。


「掘れって書いてある!」


「じゃあ頼んだ」


「ええ!」


 近づいてみるとクゥちゃんの言うように、放物線の下側に掘れって書いてあった。どうやらこの放物線は入り口の淵のようで、どの放物線に沿って掘るかで入り口の位置を決められるみたいだ。


「いや、だって爪があるだろ?」


 とマルセスさんに言われて少し嫌そうな表情をした後、思いっきり武器の【爪】を使ってクゥちゃんが掘っていく。


「んん! すぐ空洞があるっぽい」


 そう言ってクゥちゃんがさらに勢いを増してがりがりと削っていくとすぐにぽっかりと穴が開いた。


「完成?」


「中に入ってみないことにはなんとも…」


「行こうよ!」


 首を傾げる私達を置き去りにするようにクゥちゃんがかまくらに入っていくので、そのあとを追う。


 かまくらの中に入るとまさにファンタジー。外から見るのとは違いそこには広々としたスペースが広がっていた。


 地面にはどこから持ってきたのか赤を基調とした絨毯が敷かれ、広々とした部屋の中央にはかまくら製造キットがそのまま存在し、今は二つの輪っかがオレンジ色に光って暖房器具の役割を果たしているのか熱を感じさせてくれる。…鉄パイプとか言ってごめんよ。


 そのパイプ部分の先にコアが乗っかっていて、どうやら電球の代わりを果たしているみたいでかまくらの中を照らしている。


 その円形になっているスペースを中心に周辺には半個室状態と言えるスペース6つあり、そこにそれぞれベッドが一台ずつ置いてある。


「あ、コアに触るとかまくらの情報が出るよ」


 かまくらの中を見回しているとクゥちゃんがそうやって言うので試してみる。



【幸福のかまくら】

自動回復:HP、MP

アイテム使用時品質上昇

アイテム製作時品質上昇

武具の修復値上昇

退室後10分防雪付与


稼いだサンタポイント:0pt

入室者:4人

退室者:0人



 という情報が記されていた。


「で、これっていいの? 悪いの?」


「さあ?」


 私の問いかけにクゥちゃんは首を傾げる。他のかまくらがどんなものかわからないのでそこはどうしようもない。


 ある程度見回したところでかまくらを出る。他のPTのかまくらを見るべきか悩んだけど、もう少しかかりそうということだったので別れを告げてそのままユキダルマー狩りへと向かう。


 今ならかまくら作りに精を出している人も多くて混雑はしてないはずだ。ユキダルマーを探す。


 すると結構な数が集まっているスポットを見つけた。クゥちゃんの話では周辺にプレイヤーの反応はなさそうということなので早速…の前に。


「数が分からなくならないように誰かが数えなくていいんですかね?」


「自分が倒した数を覚えておけばいいんじゃね?」


 私の質問にマルセスさんはそんなことより早く行こうと言わんばかりの表情で答える。スノーマソと違って協力せずとも簡単に倒せる相手なので「それもそうか」とユキダルマーの集団に突っ込んでいく。


 ――なんか気持ちいい!


 ダガーを投げればサクッと刺さって消えていく。しかも集団なためそれを連続でできるので余計に爽快な気分を味わえる。


 相手が相手なだけに周囲にも気を配れる。見るとマルセスさんは白い歯を見せて楽しんでいるみたいで、舞浜君は真剣な表情で凛々しい顔になっている。クゥちゃんは……獣だ。


 っと、そんなことをしていたせいで何体倒したか怪しくなっちゃった。えーっと確かダガーがこれだけなくなってるから…。


 気が付くとユキダルマーの集団は一体残らずいなくなっていた。


 それからしばらく周囲を探索したけどユキダルマーを発見できなかったので、いい時間だったのもあって第四の村へと戻った。


 そこで改めてサンタポイントの確認をする。



トナ・カーイ討伐47体×2pt

スノーマソ討伐105体×2pt

ユキダルマー討伐30体×3pt

ドッペルゲンガー討伐1体×10pt+5pt

お悩み解決30pt

相部屋許可15pt

かまくら設置500pt


合計958pt



 惜しい! あとちょっとで1000ptなのに! と思うのも数字が大きくなってきたせいだろう。単純にユキダルマー14体は倒さないと1000ptには届かないことを考えると……いや、やっぱりあとちょっとと考えていいのかな。


 そのあと夜ご飯のためにログアウト。夜も少しだけプレイしたけど特に目立ったできごとはなかった。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン初心者】Lv30【STR増加】Lv48【ATK増加】Lv12【SPD増加】Lv46【言語学】Lv41【遠目】L19【体術】Lv34【二刀流】Lv50【幸運】Lv50【スーパーアイドル】Lv9


控え

【水泳】Lv28


 SP26


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主

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