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ナギ記  作者: 竜顔
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クリスマス島の冒険:かまくら

 前回のあらすじ。吹雪で周りが見えない! そして襲い来るスノーマソ!


 ということで反省会。いや反省会っていうか吹雪怖い。


 村に戻っても吹雪いているようで村の外はよく見えない。村の中は何らかの加護によって大丈夫なようで穏やかだ。簡単に言うならばちょうど村がすっぽり台風の目に入ったみたいな感じだろうか。


「デスペナルティがありますけどちょっと村の外に出てスノーマンスーツでどうか試してみませんか?」


 あの吹雪の中で思いついた対策を検証しようと提案する。


「でもあれ制限時間あったよな…」


「数分試せばいいじゃないですか」


 マルセスさんは渋い表情。


「それに一撃で破損みたいだし、吹雪のダメージで壊れました…じゃ怖いし、未だ何に使えるかわからない以上壊していいのかもわからんし」


「そうですね」


 確かにマルセスさんの言うとおりだ。「雪に強い」というのが私は吹雪による継続ダメージを受けないという意味で受け止めたけどそうじゃなかったら勿体ないというのはある。


「ならもう一度あの依頼を受けてもう一個手に入れればいいと思います」


 ここで舞浜君が助け舟を出してくれる。


「そうだな、どうせデスペナ中だしできることは限られてるもんな」


 ということで酒場へと赴く。


「人多!」


 酒場に入ってすぐ、あまりの人の多さにクゥちゃんが思わず声にする。早速マルセスさんがそこにいた人を捕まえて事情を聴く。


「ん? あああんたらも吹雪にやられた口か? なんでもスノーマンスーツが吹雪の間動くのに有効らしくてその依頼を受けにきた連中で溢れてるようなもんだ」


 どうやら私の予想は当たっていたらしい。ここにいる人達は私達同様にスノーマンスーツほしさにその依頼を受けに来ているみたいだ。


「俺らもそれで来たんだ」


「だろうな、だが残念…その依頼はもう終わったらしい、代わりに別の依頼が来てる、要するに俺らみたいなやつはまだクリスマス島入りしてないプレイヤーが星飾りの報酬でゲットしたスノーマンスーツに頼るしかないってことさ」


 とマルセスさんが話しかけた男性は自嘲気味に言いながら肩をすくめた。


 そこでマルセスさんは話を切り上げて、男性も酒場から出て行った。


「とりあえず新しい依頼とかいうやつを見ていくか、疑うわけじゃないが依頼がなくなってない可能性もあるし」


 というマルセスさんの提案に頷く。ただおそらくあの男性が言っていることは本当のことだろう。


 何故ならこれまで吹雪が来たことはない。私がログインしてない時に来たのかもしれないけどそういう情報は聞いたことがないのでおそらく来ていない。そして吹雪の中活動するのに必要なスノーマンスーツ。それがもらえる依頼が吹雪が来るまであったのに吹雪が来たらなくなった。


 そこに関係があるとみて十分なはずだ。つまりあの男性の言い分は十分に辻褄が合ってる。


 依頼に向かって伸びていた行列はなくなり、人もややまばらになった頃ようやく酒場の掲示板に掲示されてある依頼をみることができた。そして男性が行っていた通りスノーマンスーツが手に入る依頼は見当たらなかった。そしてその代りに見たことがない依頼が一つ張り出されていた。


 その名も「かまくら設置」。概要はかまくらを設置せよというシンプルなものだ。


 ということでかまくらとは、村の外にある一時的な避難場所、えーっといわゆるセーフティエリア――モンスターから襲われないエリアのこと――みたいなものだそうだ。そして宿屋の部屋同様かまくらも定員は6人まで。


 そしてなんと、安全なログアウトも可能だそうだ。


 このかまくら、依頼書によると一つ設置すればサンタポイントは500ptもらえる。そしてさらにそのかまくらを利用する人が多ければ多いほどサンタポイントが稼げるらしい。一人1分以上滞在した時点で1ptもらえて、滞在時間の長さによってさらにもらえるポイントが増えていくみたいだ。


 かまくら設置はPTで一つで、ポイントもPTメンバー全員に振り分けられる。そのため様々なPTにお邪魔してポイントを稼ごう、と思うかもしれないけど別のPTでかまくらを設置した瞬間から最後に設置したかまくらのポイントしか割り振られなくなるみたいだ。500ptも初めて設置した時にしかもらえないようで、結局楽な道はなさそうだ。


 PTが解散した場合でも設置に関わったかまくらのポイントは割り振られるらしい。


 あとはPTメンバーが利用してもポイントは入らないし、別のPTに移った人がポイントが割り振られているうちに利用した場合もカウントされないとのこと。簡単に言えばかまくら作った時のPTのままなら面倒くさいことは何もないってことかな。


「急に吹雪が来た時に逃げ込む場所ってことかな、面白そうだし作ろうよ」


 クゥちゃんが依頼書の説明を見て顔を輝かせる。


「デスペナが終わったらいいかもな、スノーマンスーツもあるから吹雪もなんとかなるだろ」


 マルセスさんもかまくら作りに乗り気なようだ。


 ということで依頼を受ける。依頼の受理はPT単位で行われるようで、かまくら製造キットはちゃっかりPTリーダーである私に渡された。



【かまくら製造キット】

特殊アイテム


かまくらを作るための雪を集める機会。



【かまくらのコア】

特殊アイテム


これがないとただのかまくら。



 これにあとは【かまくらの上手な作り方】という生産職の人で言うレシピのようなものも渡された。


 デスペナルティ中にできる依頼を受けて時間をつぶしてようやくデスペナルティが終わる。


「設置するとしたらどの辺?」


「やっぱりスノーマソとユキダルマーの出現地域の狭間ぐらい?」


「だよな」


 先に設置場所を決めていった方がいいだろうと尋ねるとクゥちゃんから答えが返ってきた。マルセスさんも同意していて、


「どこまで稼げるかわからない以上そこまでこだわる必要もないんじゃないかと、他の人が設置している近くでも通行量が多いところなら利用者も多いだろうし」


 より細かい位置について考え始める二人と違って舞浜君は大雑把に決めておくだけでいいと思ってるみたいだ。大体の位置が決まった以上後は現場の状況を見ないとどうにもならないよね。


「舞浜の言うとおりだな、細かいところは現地で見て決めよう」


「じゃあしゅっぱーつ!」


 クゥちゃんが右手を突き上げ戦闘で歩き出す。


 村の外はいつの間にか吹雪が止んでいてのどかな白い世界だけが広がっていた。珍しくスノーマソにも遭遇せず狭間のあたりにたどり着いた。


「うーん、あんまり人がいないけど大丈夫かな?」


「割とまっすぐ来たと思うけど」


 ついたはいいけどなかなか他のプレイヤーの姿が見当たらなかった。みんなに尋ねてみるとクゥちゃんも首を傾げている。


「もうちょっとそれた方がいいのか? まっすぐだと他のプレイヤーの邪魔にならないように避けて通ると使わないルートかもしれないし」


 マルセスさんも辺りをキョロキョロと見回しながら意見を言う。


「ナギさん、かまくらの設置はどれくらいかかる?」


 唐突に舞浜君が話しかけてくる。


「えーっと20分ぐらい、かな」


 【かまくらの上手な作り方】を見ながら答える。


「定員が1PTだと考えるとまっすぐのルートも最低1PTは使うと思うから他のPTへの牽制も含めてちゃっちゃと作った方がいいと思う」


 私から製作時間を聞いた舞浜君はすぐに制作に取り掛かるべきだと主張する。


「稼ぎはおまけ、500ptこそメインと考えれば舞浜の言うとおりか」


「じゃあ作ろう!」


「クゥちゃん、張り切るのはいいけどキットでやるだけだから…」


 ということで【かまくらの上手な作り方】


1、まずはキットをかまくらを立てたい場所に突き刺します。

 ※この時輪っかが下側に来るように。


2、20分ほど待ちましょう。

 ※モンスターに壊されないようにキットを守ります。


3、上の穴からコアを入れましょう!


上手に作るコツはコアを持ってる人が遠くに離れないようにすることです。さあ! 頑張って!


 ここに書いてある通りにまずキットを地面に突き刺す。製造キットは一本の鉄パイプに二つの輪っかがついているような感じだ。その鉄パイプを突き刺すと輪っかが回り始め上から雪が噴き出ていく。


「……これでかまくらできるのか?」


「……ファンタジーを信じればいける」


 マルセスさんとクゥちゃんはどこか表情が引きつってる。そうか、直接インベントリに渡されたから私以外形状を全く知らなかったんだ。事前に知ってればもうちょっと違う表情になっていたかもしれない。


 あと私のマップ上にキットを突き刺した地点を中心にしてサークルが現れた。この範囲から出ると上手に作れなくなるということだろう。


 ただ雪を噴き上げるだけのキットに不安になりながらもスノーマソが来ないことを祈る。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン初心者】Lv30【STR増加】Lv48【ATK増加】Lv12【SPD増加】Lv46【言語学】Lv41【遠目】L19【体術】Lv34【二刀流】Lv50【幸運】Lv50【スーパーアイドル】Lv9


控え

【水泳】Lv28


 SP26


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主

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