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ナギ記  作者: 竜顔
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クリスマス島の冒険:吹雪の日

 終業式というのは始業式と違ってあらゆるものがワクワクで包まれるような気がする。進路担当の先生の勉強に関する小言とか生活指導の先生の注意喚起からのちゃっかり愚痴入ったりとか、校長先生の――


「皆さんも話を聞きっ放しで疲れたでしょうから手短に終わらせようと思うので静かに話を聞いてください」


 という発言が15分ほど前のできごとで、今なお奮闘していらっしゃっても今日の放課後からの冬休みをどう過ごそうかという考えで気になることもない。


 校長先生が奮闘した後の先生方が長い話をしていたとしても…。






「疲れた…これはもう今日の放課後だけは冬休みを味あわせない作戦な気がしてきた」


 どうやらみんながみんな私のような感情にはならないらしい。ぐったりとした様子の京ちゃんがいつ倒れてもいいように結衣ちゃんとともに両サイドを固めながら教室に帰る。


「冬休み明けには修学旅行も待ってます、皆さん羽目を外して大きな怪我や病気などしないように」


 掃除を終わらせた後、担任の先生のこの言葉で帰りのHRが締められて、ついに冬休みに突入した。家に帰ってからが冬休みとか無粋なことは言わないように!






 寒いので寄り道せずにまっすぐ家に帰った。


 昼の時間はゲーム内では夜なのであんまりできることもないだろう、と夕方からの昼の時間まで現実のやるべきことをやって備える。


 昼の時間が来る17:00より少し前にログイン――。


 まだ誰もログインしてなかったのでとりあえずランキングでも見ようかとサンタ協会まで来る。1日とちょっとぐらいで上位の人はぐんぐんポイントを稼いでいる。トップを走るホークさん達は6000ptを越えてしまっている。


 とはいえ一波乱起きそうな気もするので私自身は上位に入れそうにないけどなんだかんだ気になる。ハロウィンイベントで最後の最後で一気にひっくり返したレイブスさんが『神風』勢を猛追してぴったりマークしてきている。


 ランキングを見ていると舞浜君がログインしてきた。そのうち他のメンバーも来るだろうということで宿屋のロビーで待ち合わせる。


 私が待ち合わせ場所に着いた時にはもうすでに舞浜君はついていた。宿屋の隣にサンタ協会と酒場がつながった建物が建っているので絶対に私の方が先に着くと思ってたので少し驚いた。


「あ、…ここで大丈夫だよね?」


 席についている舞浜君は少し不安げに尋ねてくる。多分他の席じゃなくていいよね、てことだと思うので頷いて返す。


「どこ行ってたの? 学校から帰ってきてすぐログインしたらいなかったからクエストしてたわけでもないんでしょ?」


 最近ゲーム内では特に絡みがなかったけどリアルでのやや打ち解けた感じのしゃべり方はこちらでも受け継がれるみたいだ。以前はどちらかで距離が近くなってもリセットされる感じがあったので彼もちょっとずつ進化してるみたいだ。


「うん、さっきログインしたばっかりでね、ランキング見てたの、上位の人はポイントの上がり方もすごいね」


「サンタクロースを呼び出したときにユキダルマーだけがわんさか出てくる『雪だるまの楽園』っていうところに1時間だけ行けるチケットがもらえるらしいからその影響かな?」


 私の言葉を聞いて舞浜君は推測している。それだと急にポイントが増えた理由にならないんじゃないかと思ったら、わんさか出てくるからすぐにユキダルマーに囲まれるそうで近くの奴にばかり気を取られていると少し距離のあるところにいる奴が攻撃してくるらしい。


 ユキダルマーも攻撃を放つまでが遅くてその威力が絶大なので『雪だるまの楽園』で時間いっぱい生き残ること自体難しいみたいだ。


 舞浜君の予想では滞在時間を延ばすことに成功したからポイントも急激に増えていってるんじゃないか、とのことだ。


 ちなみにこの『雪だるまの楽園』はチケットを持ってるだけじゃだめで第五の村の近くにあるとある場所に持っていかなければならないらしい。ここまでくれば運営の言う第五の村がポイント稼ぎには有利という言葉を疑ったりはしない。


 舞浜君のランキング上位者のポイントの変遷予想が終わるころクゥちゃんとマルセスさんがほとんど同じタイミングでログインしてきた。


 すぐさまロビーに呼び出す。


「へぇ、二人は今日から冬休みなのか…ポイント稼ぎが捗るな」


 マルセスさんに今日から冬休みであることを話すとこんな返事が返ってきた。


「それならますます第五の村に早く行かないとね」


「じゃあ早速ユキダルマーを狩りに行くか」


 クゥちゃんの言葉には熱が入りマルセスさんもモチベーションが上がったようだ。


 誰もソリを持ってないので歩いてユキダルマーの出現領域へと向かう。スノーマソとの戦闘は極力回避し避けられない場合だけ倒す。という方針だ。


 だけど結局ユキダルマーの出現地域まではたどり着かなかった。


 ――それは4体目のスノーマソを倒した時だった。


「まぁ、余裕だよ、な!」


 マルセスさんが語尾に力を入れる。というのも3体目のスノーマソと遭遇した時にガードのどつぼにはまってしまい倒すのに結構時間がかかってしまったためだ。そのせいで4体目との遭遇の時は走って逃げることも考えたぐらいだったので、簡単に倒せたことを強調してユキダルマーを狩る前に精神的に疲れてしまわないように気持ちを奮わせている。


「あれ?」


「ん?」


 そんなマルセスさんの方に顔を向けるとマルセスさんの姿は白い斑模様によって見づらくなっていた。振り向いた先のマルセスさんもそのせいなのか――目元はローブで隠れて分からないので――目を凝らすような感じだ。


『吹雪で視界がふさがった、誰も見えない』


 何が起こったのかよく分かってないうちに舞浜君からPTチャットが入る。舞浜君は前衛なので後衛の私達と距離がある。それでバグではなくれっきとした吹雪だとようやく理解した。


『感知もなんかよく分からない感じ、プレイヤーなのかモンスターなのか、反応は3つだから多分みんななんだろうけど…あとずっと点滅してる』


 これまた少し距離があるクゥちゃんも他のメンバーが見えないみたいだ。実は私もマルセスさん以外は見えてない。


「どうします? マルセスさん?」


「んお? 声が届く範囲にいるのか? その距離でこっちからは見えないんだ」


 どうやらマルセスさんには私の姿は確認できていないらしい。視力補正はこんなところでも役に立つみたいだ。


 なのでマルセスさんに近づく。


「お、見えるようになった、二人にそこから動かないように言うか…てマップも方角が分からなくなってやがる」


 とマルセスさんの表情は渋いものとなる。私はクゥちゃん達にその場を動かないように告げた後


「えーっと多分舞浜君があっちでクゥちゃんがこっちですね」


 とマルセスさんに記憶のある通りに告げる。最後に見たのはその方角で問題ないはずだ。


『ライトも不能…あとちゃっかりHP減ってる』


 またもや舞浜君からの連絡。ライトが使えないということで単純に「暗い」というのとは違うみたいだ。そして微量だけど徐々にHPが減っていっている。


『音が聞こえる……ナギさん? てうぉあ!』


『舞浜君!?』


『……大丈夫、じゃない、スノーマソが来てる!』


 大変な事態が起きているらしい。とりあえず舞浜君は死に戻ってないみたいだ。


『あ、今反応が増えた、でも自分以外どれが誰だか…』


 遅れてクゥちゃんからの連絡。クゥちゃんのレーダーもポンコツ化させられているらしい。


「おい、ドスドス聞こえないか?」


「え? ってあ、スノーマソが来てます、舞浜君が言ってたやつだと思います」


 正面からスノーマソが迫ってきていた。いつもより視野は狭くなっているけどそれでも他のみんなは一歩二歩の範囲ぐらいしか見えてない感じなので相当アドバンテージはある。


「そっち!? もっと違う方向から…」


『あ、また増えた』


 と二人の言葉を受けて後ろを振り返るとそっちからもスノーマソが迫っていた。


「挟まれてます!」


「連携とれないと倒せねぇよ! 逃げるぞ!」


 マルセスさんは悪態をつき、とにかく挟まれないように逃げる。


『二人固まって動いてるのがナギちゃん達だね、……ボクの近くに来てるのは? 舞浜?』


『多分違う! 逃げろ!』


『うわぁ! ってこっちもうわぁ!』


 クゥちゃんが大変なことになってるみたいだ。


「これってスーツの出番なんじゃないですか?」


 私はここに来て【スノーマンスーツ】のことを思い出し、もしかしてと思ってマルセスさんに聞いてみたけどその返事は予想外のものだった。


「下から湧くとか聞いてねぇよ!」


 マルセスさんの目の前には地面から飛び出てきたスノーマソが立ちふさがっていた。


『終わった…』


『ちょ! 何体いるんだよ! ってクゥさんの死体発見』


 どうやら二人も大変…というかクゥちゃんはやられたみたいだ。


 それから全員で死に戻るまで時間はかからなかった……。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン初心者】Lv30【STR増加】Lv48【ATK増加】Lv12【SPD増加】Lv46【言語学】Lv41【遠目】L19【体術】Lv34【二刀流】Lv50【幸運】Lv50【スーパーアイドル】Lv9


控え

【水泳】Lv28


 SP26


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主

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