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ナギ記  作者: 竜顔
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クリスマス島の冒険:一休み

 水曜日。


 昨日はランキングを確認してその差に愕然としながらログアウトした。


 そんなことより――


「参りました」


 私は敗北した。何にって? 舞浜君に。何がって? 期末テストの合計点が。


 今日で全てのテストの結果が返ってきた。勝手に「打倒!」と謳っていた舞浜君相手に合計で13点差での敗北。あんまり勉強している風じゃないのにいい点が取れる舞浜君が羨ましい…ただし今回に限ってはなんというか。


「ここの計算ミスさえなければ…」


「それを言ったらこっちだってサービス問題で点落としてるし、減点分は変わらないじゃん」


「やっぱり現代文のあの間違いが…わかってたのに! 字が間違ってるからって減点されるんだもん!」


「それは他の人もそうやって減点されるものだし…」


「そういうのが配点2点とか3点とかばっかりだし!」


「そういうのは誰にでもありますし」


 ケアレスミスで落とした分を足せば舞浜君にも勝てそうなのがなんか悔しい。そして徐々に仏のような表情になりながら返事をする舞浜君がさらにむかつく。


「でもいまさら何言っても意味ないわよねぇ~」


 そのやりとりを遠巻きに見ていた京ちゃんが気が抜けたような声で言う。もちろん京ちゃんの言ってることは事実なんですが私より点数が低い京ちゃんから「負け犬」扱いなのがつらい。


「渚も今回頑張って舞浜君を追い詰めたんだから、過ぎたことよりこれからのことを考えればいいでしょ」


 結衣ちゃんが私を宥める。


「そうそう、13点差って追い詰めたとは言えない気もするけど渚にしては頑張ったじゃない!」


「くそぅ、京ちゃんめぇ、覚えておけよぉ~」


「きゃ、渚がこわ~い」


 と言いながら京ちゃんは結衣ちゃんの後ろに隠れる。私はいつ結衣ちゃんの背後から京ちゃんが出てきてもいいように身構える。


「それよりも早くも明日終業式だよ、冬休みどうする?」


 今まさににらみ合う私達の間に挟まれた結衣ちゃんが話題を変える。そういえばもう冬休みかぁ…早いなぁ。


「私はクリスマスは二人でねぇ」


「はいはい聞いてない聞いてない」


「渚がいじめるー」


 京ちゃんはクリスマスの予定を暴露するので軽く聞き流しておいた。


「またゲーム?」


「実際にデート」


「え!? イベント中なのに!?」


「そこまでゲーム中心の関係じゃないわよ? 渚ちゃん?」


 結衣ちゃんの質問への京ちゃんの答えに驚いて口を挟むと先ほどまで守勢に回っていた京ちゃんが攻勢に出る。にっこり笑顔は恐怖の象徴。なので私は一歩下がり京ちゃんのリーチが届かない位置に離れる。


「京子は彼氏と色々あるみたいだから、無い日に三人で出かけられるといいね」


「そうだね」


「クリスマスの後とかなら予定はないわね」


 と三人で遊びに行く日にちを決めて、何事もなく終わら……なかった。


「ちょ、ひゃっ! ごめ、ひっ、やめてぇ!」


 京ちゃんからこしょこしょの刑が待っていた。


 こしょこしょの刑が終了した後、舞浜君が寄ってきて私がゲーム中心の考え方になってるんじゃないかと心配された。


「イベントって今どこにいるの?」


 一通り心配された後舞浜君が聞いてきた。


「ん? 第四の村」


「本当に!? 俺も今第四の村なんだけど」


「そうなんだ、そういえば連絡とってなかったね、ていっても第四の村に来たのは昨日なんだよね」


「じゃあ今日一緒にやらない?」


「一応人数に余裕はあるけど…他にもいるから、聞いてみるね」


「了解」


 ということになった。





 わけなんだけど。


「よく考えたら夜じゃん…」


 学校から帰ってきてヴァイスさんから「第五の村まですぐたどり着けると思いますので頑張ってください。私は色々あって第五の村までついていくことができません」というメッセージを確認した後ログインすると目に飛び込んできたのはしっかりと電気に照らされた部屋だった。


 ベッドから起きて小さい窓に目を向けると空は黒く、ゲーム内で夜であることを告げていた。


 マルセスさんはすでにログインしていて、クゥちゃんは私がログインして少しした頃にログインしてきた。一応全員ヴァイスさんからメッセージが来ていたらしく、そもそもなんでついてきてたのかイマイチみんなりかいできてないこととソリが使えなくなるのが残念ということを共感しながらとりあえず宿屋のロビーに向かった。


「で、どうするんだ?」


 ちゃっかり舞浜君をPTに加えたところでロビーにある四人掛けの席に座り、マルセスさんが切り出す。様々なプレイヤーがゲーム内の昼にプレイできるようにという配慮は時として平日の夕方に満足にプレイできなくなる弊害も生む。


「スノーマソの出現域から出られれば何とかなりそうですけど」


 というのは舞浜君。確かに彼は光魔法を習得しているので周囲を照らす魔法が使える。それにクゥちゃんおレーダーと私の視力があれば一撃で倒せるユキダルマー相手なら何とかなりそうな気もする。


「そこまで行くのが問題だよね」


 というのはクゥちゃん。


「ソリを考えたんだけどヴァイスも夜になる前に帰るように使ってたからな」


 クゥちゃんの考えを補足するようにマルセスさんは述べる。


「となると酒場で住民たちの依頼に応えるという選択肢もあるな」


 マルセスさんが提案したのはクエストを受けること。これまでこのイベントでは酒場の掲示板に貼ってある依頼は受けてこなかったけどもちろんドルメガネが行っていたように村の住民の依頼に応えればサンタポイントは手に入る。


 これまでやってこなかったのは主に割に合わないというか、面倒くさいというのがあってだ。まず○○を届けてほしいとか、こういうことで悩んでいるとか、それを解決するには当然時間はかかる。その報酬としてもらえるサンタポイントは多くても10ptほど。戦えるなら村の外にいるモンスターを狩った方が早くポイントを稼ぐことができる。


 また、他の村に届けてほしいといった依頼もあり他の村に初めて入る際には周辺のモンスターを100体倒さないといけないというのが積極的に依頼を受ける際のネックになっている。


 さらに厄介なのは上の数字の村に届ける系はUターンが基本なのでどんどん先を目指す、というプレイヤーが受けるメリットは低い。もちろん他の村に届ける系はその分もらえるサンタポイントは多い。おそらく第一の村にいる人がランキング上位にいたのはその辺をうまく立ち回っているのだろう。


 とはいえ夜の時間もポイントを稼ぎたいという人は酒場の依頼を活用している。私達は単純にゲーム内での夜の時間が現実でもいい時間だったのでそこで終わってただけで。おそらくヴァイスさんなんかは私達がログアウトした後も何かやっていたはずだ。


「じゃあ酒場の依頼を受けようか」


「そうだね」


 クゥちゃんの提案に乗る。男二人も異論はなかったようでさっそく酒場で依頼をうけまくった。


 プレイ時間はあんまり変わらないはずなのに思ったより稼げなかった。とりあえず、サンタポイントの集計では「悩み解決」で統一されるらしい。


 ただし予想外の収穫。



【スノーマンスーツ】

全身装備

 DEF+8000

効果:雪に強くなる

   一撃破損

   (※被ダメージで消失)

   制限時間1時間

   (※制限時間0で消失)


スノーマンになれるスーツ。変身しよう!



 こんなものが報酬で手に入った。


「…前夜イベントのリストにもあったけど、使えるのかこれ?」


 マルセスさんの言葉でみんながどんな表情をしていたかわかるはずだ…。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン初心者】Lv30【STR増加】Lv48【ATK増加】Lv12【SPD増加】Lv46【言語学】Lv41【遠目】L19【体術】Lv34【二刀流】Lv50【幸運】Lv50【スーパーアイドル】Lv9


控え

【水泳】Lv28


 SP26


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主

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