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ナギ記  作者: 竜顔
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クリスマス島の冒険:スノーマソ

 ジャージから装備を変更してそのままに第三の村の外に出る。【ATK上昇】のLvが最大値になっていたのでSp8を消費して【ATK増加】に進化させる。そういえば最近【スーパーアイドル】のアーツを使ってない気が…。


 トナ・カーイと熱戦を繰り広げるプレイヤーの横を抜けて、クゥちゃんの索敵能力と私の視力でトナ・カーイとの遭遇を未然に防ぎながら進んでいく。


 第三の村から第四の村までは歩いて1時間程、スノーマソの生息域に到達するだけなら30~40分くらいだとヴァイスさんが教えてくれた。


「……で、なんで付いてきてるんだよ」


「ナギ様が第四の村に向かわれると聞きつけましたので参上したまででございます」


 そう、装備を渡した後颯爽と走り去って行ったヴァイスさんは再び戻ってきて私達についてきている。もちろんPTに組み込んだ。


「ってか二人ともこいつがついてきてることになんの問題もないのか?」


「んー? 別に」


 マルセスさんの追及にクゥちゃんが答える。その返答を聞いてマルセスさんが私の方を見るけど私も頷き、


「人数多い方がいいかなって」


 というとマルセスさんは呆れた様子で


「まぁ、二人が問題ないなら別にいいんだが…」


 と納得してくれる。実際ヴァイスさんは第四の村に行ったことがあるみたいだからスノーマソと戦うことを考えれば十分心強い味方と言えると思う。


「それでヴァイスさん、スノーマソってどんなモンスターなんですか?」


 ヴァイスさんと行動を共にすることで合意したところで尋ねる。一応攻略サイト等で情報は集めてあるけど実際に戦ったことがある人に話を聞いた方がいいだろう。口ぶりからしてスノーマソとは一度以上戦っていることはうかがえる。


「そうですね、肉弾戦が得意ですぐに接近戦に持ち込もうとしてきます、ですが足が遅いのでたいていの人なら走って逃げ切ることはできるでしょう、攻撃行動も溜めがありますので回避やガードのタイミングも読みやすいです」


 ヴァイスさんは私に話しかけられたことがうれしいと言わんばかりに生き生きと話してくれる。


「防御が得意って聞いたが」


「はい、防御行動は素早いので簡単にはダメージを与えづらいですね、牛系モンスターの顔でのガードと似ていますがあちらはガード中側面や背面からの攻撃を受けますが、スノーマソは全身防御という感じですね、貫通攻撃か衝撃攻撃がないと物理ではダメージはまず与えられないと考えた方がいいでしょう」


 マルセスさんの質問への説明ではきちんとマルセスさんの方を向いてヴァイスさんは丁寧に説明する。


「じゃあ魔法がいるんですか?」


「魔法が使えると大分楽になるかと」


 私が声をかけると私の方を振り向く。ただマルセスさんの時と比べると目の生き生きとした感じが違う気が…気のせいだと思いたい。


「で、あんたは魔法使えるのか?」


「私は魔法は使えませんねぇ」


 ヴァイスさんはさわやかに答える。


「……ナギちゃんとクゥちゃんも魔法は使えないよな?」


「「うん」」


「俺は若気の至りで取った水魔法が使えるが……効くのか?」


 マルセスさんの言葉に全員だんまりとなる…わけでもなかった。


「魔法などなくてもスノーマソにガードをさせないように立ち回ればいいのです、ナギ様は投擲使いですから背後から気づかれず攻撃することもできますし、いざとなれば私が何とかしますよ」


 最初は何かのキャラになりきるロールプレイかと思っていたけどヴァイスさんのこの柔らかい感じは案外素なのかもしれない。


 歩いていると満腹度のゲージが下がるので村で売っていた「雪団子」なる雪でできた団子を食べてみたりもした。


 この雪団子、食べ物でありながら満腹度のゲージがほとんど回復しないくせに渇水度のゲージはいい感じに回復するという食べ物のという皮を被った飲み物だった。以後買わないことを誓った。


 そんなことをやっているうちにスノーマソの出現領域に到達する。


「では、気を引き締めていきましょう! と言っても向こうに気づかれたらドスドス音がするのですぐにわかりますけど」


 なんだか締りのないヴァイスさんの言葉を聞きながらスノーマソの捜索を開始する。


 捜索を開始してしばらく、一体だけ孤立しているスノーマソを発見する。


「幸いまだこちらに気づいてないみたいなので、ナギ様が届く距離からブーメランを投げましょう」


 ヴァイスさんの指示に誰も反対せず、私とクゥちゃんとマルセスさんの三人で近づき、ヴァイスさんはスノーマソの後ろに回り込むようにして動く。マルセスさんはバフ(能力強化)の準備を進めている。


「届く距離に来ました」


「こっちもバフはかけた」


 気づかれる心配がないように今回はチャージスローではなくパワースローを使う。


 ブーメランを投げる。クゥちゃんが動くのはブーメランがスノーマソに当たってからだ。


 ザシュッと音がしてスノーマソの首が落ちる。


「……倒した」


「…一撃?」


「……グロテスクではないな」


「さすがナギ様です!!」


 一撃で倒せてしまったことに全員拍子抜けしている。私の愛用のブーメラン【風切】は稀に即死の効果があるブーメランだ。もしかしてそれが発動したんじゃ…。滅多に発動しないのですっかり忘れていた。


「まぁ、この調子なら100体もなんとか行けるんじゃないか」


 マルセスさんの言葉で思考を取り戻し次の獲物へ。


 次のスノーマソには苦戦した。やっぱり【風切】の稀に即死の効果が発動しただけみたいで、今度は一撃で倒すことができなかった。


 それでこちらに気づいた時にはすでにクゥちゃんが距離を詰めていて攻撃するも、寸前まで振り上げられていたスノーマソの腕が一瞬で顔面の前でガードを作り、体もやや丸めてクゥちゃんの攻撃を防ぐ。


 私も隙をつくべく攻撃を繰り返すも気づかれてガードされてしまう。このガードはマルセスさんのスロウでも全く動きが鈍らずことごとく攻撃が防がれていく。


 ようやく立ち位置がクゥちゃんとスノーマソを挟んで真逆に来たところで、クゥちゃんの攻撃をガードしたスノーマソのガードが解けた瞬間に私の攻撃を当てることに成功。マルセスさんのバフのおかげもあってかそれで倒すことができた。


「想像以上にめんどくさいな…」


 これまで割と余裕がある感じだったマルセスさんもさすがに厳しい表情だ。私達からしてみればトナ・カーイよりも厄介な相手かもしれない。こちらの手数が多ければそれだけスノーマソに攻撃させないことはできるけど、倒すまでに時間がかかることはこのイベントでは致命的だ。サンタポイントを稼ぐための主要な手段であるモンスター討伐が捗らなくなってしまうからだ。


「ところでヴァイスの奴はどこに行ったんだ?」


 マルセスさんが周囲を見渡して姿が見えないヴァイスさんを探す。いざとなれば何とかするとか言っていたのに…いざとなってなかったのだろうか。


『あのーヴァイスさん?』


『はいはい、終わりましたか? 今向かいますね』


 コールをかけたらはきはきとした言葉が返ってきた。


 その言葉通り第四の村方向にある木々が生えているところから人影が走ってくる。真っ白な雪の世界に真っ白な装備で大変見づらい。後ろに林がなければ私の補正された視力でも見えたか怪しいラインだ。


「いざとなれば何とかするって言ったよな?」


 早速マルセスさんが問い詰める。


「ええ、ですがそのための武器を持ってないことに先ほど気づきまして慌てて取りに行ってました、すいません」


 ヴァイスさんは苦笑いを浮かべながら答える。


「ですがこれでスノーマソのいやらしさを身に染みて感じたと思いますので、気を引き締めて今日、明日中に第四の村に入れるように頑張りましょう」


 ヴァイスさんが初めて引き締まった凛々しい表情を見せる。


 それでみんなも切り替えて次のスノーマソを探し始める。


 ……今日、明日中にスノーマソ100体? 学生に優しいスケジュールですよね? ね!?



――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン初心者】Lv26【STR増加】Lv46【ATK増加】Lv3【SPD増加】Lv44【言語学】Lv41【遠目】L19【体術】Lv34【二刀流】Lv50【幸運】Lv50【スーパーアイドル】Lv9


控え

【水泳】Lv28


 SP22


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主

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