クリスマス島の冒険:北風
月曜日。
学校から帰ってきてまずやることは…今日はログインじゃないんだなぁ。
まずは学校のあれこれを済ませて、攻略サイトなんかを見てるうちに夜ご飯の時間が来て、夜ご飯の後お兄ちゃんに競争で負けたために少し遅れてお風呂に入り。髪を乾かして準備万端。
ログイン――
ベッドから飛び出て周囲を見渡し、カップルがいちゃついてる現場に遭遇してないことをきちんと確認してからフレンドリストを見る。クゥちゃんはすでにログインしているみたいで、宿屋を出た先でマルセスさんと一緒みたいだ。
様々な事情――主にお風呂――のせいで少し遅くなってしまったことを謝りながら部屋を出て二人のもとへと向かう。
「お待たせしました」
村の広場で待っていた二人のもとに駆け寄った私はすぐに頭を下げる。
「こっちも今来たところだから大丈夫」
「…恋人みたいなこと言ってる」
明るいマルセスさんをクゥちゃんが睨み付ける。
イベントが始まって約二日が経過したこともあって攻略サイトにも情報が集まってきていた。パンフレットで名前だけしか確認できないモンスターのグラフィックや特徴もアップされていた。
第一の村周辺が「ミニダルマ」、第二の村周辺が「ターキー&ツバサ」、第三の村周辺が「トナ・カーイ」、第四の村周辺が「スノーマソ」、第五の村周辺が「ユキダルマー」だ。全てアクティブ。ターキー&ツバサ以外は攻撃を放つまでが遅い代わりに威力が絶大なモンスターみたいだ。
ミニダルマは大きさは私の腰ぐらいまでの雪だるま。防御力が高くどんなにATKが高い人でもHPが6しかないのに1ずつくらいしかダメージを与えられず上級者初心者問わず倒すまでにそこそこ時間がかかるみたいだ。
ターキー&ツバサは四枚羽の鳥。と思わせてその四枚の羽根のうち二枚はその二枚の羽だけの存在だそうで、二体で一体と言う感じのモンスターだそうだ。なので鳥の部分を倒しても羽の部分が生き残ったまま攻撃してくるらしくて、小回りも効くモンスターのためこれまた上級者初心者問わず相応にてこずるモンスターのようだ。
トナ・カーイは言わずもがな攻撃を受けた瞬間に幻惑系の状態異常にさせる渦を周囲に発生させるモンスター。攻略サイトには対策してなければ上級者が集まったPTと言えど一瞬で壊滅させられる凶悪モンスターって説明がされてた。
スノーマソは2mくらいの大きな人型雪男。肉弾戦が得意で攻撃行動より防御行動が素早くて倒すのに時間がかかるみたいだ。
ユキダルマーは150cmくらいの普通の雪だるま。攻撃についてはほとんど解明されていない。というかHPが1しかないので一撃で倒せるのでまず攻撃を受ける可能性が極端に低いみたいだ。
そして、サンタポイントが「ミニダルマ」「ターキー&ツバサ」は一体1ptで、「トナ・カーイ」と「スノーマソ」は一体2pt、「ユキダルマー」が一体3ptだそうだ。
他の村へ入るためには周辺のモンスターを100体倒さないといけないようだ。
という状況を踏まえて、クゥちゃんが特にトナ・カーイへの対策が不十分ではないので今日はスノーマソをメインで狩り、第四の村へと入る準備をしよう、ということになった。
「サンタクロースを呼べば対策アイテムも手に入るのかな?」
自分が足手まといという感じに言われたのが嫌だったのか、クゥちゃんがそんなことをつぶやく。
「先の村に行けば不要なんだからもっと情報がはっきり出るまでやめておいた方がいいんじゃないか」
マルセスさんはそんなクゥちゃんの思考に待ったをかける。だけどクゥちゃんはマルセスさんを睨み
「ボクがナギちゃんに攻撃しかてる時とかニヤニヤしてる人に言われても楽しみが消えないように言ってるとしか思えないんだけど…」
「えっ? 気づいてたのかぁ、はは」
どうやらクゥちゃんは昨日マルセスさんに笑われていることに気づいていたらしい。クゥちゃんの野生の勘の前ではごまかしは利かないみたいだ。マルセスさんも気づかれているとは思っていなかったみたいだけど……やっぱり白い歯を見せる笑顔だ。
「そうはいってもサンタはまだ呼ばない方がいいと思う、それに今日はトナ・カーイを狩らなければ笑われることもないだろう?」
とマルセスさんが諭す。笑ってるのはあなたですよ! と突っ込むべきだろうか。
クゥちゃんも――多分自分で、自力で、自問自答によって――納得したみたいでサンタは今度呼ぶことにしたみたいだ。
「じゃあスノーマソを倒しに~「ナギ様ー!!」――ん?」
マルセスさんが何か言葉をためているうちに私を呼ぶ声がする。その声の主を探すと、目が合った時に手を振って合図をしてきた。
そのまま駆け寄ってくる。見た目は髪が白色で目が青ということを除けばいたって普通の好青年の男性。白銀の鎧を身に纏い、どことなく神聖な雰囲気も出ていて、爽やか、清らか、といった言葉が似合いそうな男性だ。
だけど私の中の何かが警笛を鳴らす。
「私を様付で呼ぶ人とは関わらない方がいい!!」
と。
「いやぁ~探しましたよ、われらが女神、ナギ様」
「恥ずかしい奴だな」
鎧の男性の言葉にマルセスさんが直球で突っ込む。
「私はギルド『ナギ教』の神聖騎士をやっておりますヴァイスと申します、っと今回はお届け物がございまして探しておりました、ささ、これを」
見た目のさわやかさとは裏腹にやっぱり変な人だった。普段あまり接触して来ないので頭の隅からも消去していた「ナギ教」なるギルドの人だ。
私はヴァイスさんから差し出されたそれを押し返す。
「結構です」
「なんと!! これは物騒な物ではございません! 冬を意識したもふっとしたあったかそうな見た目の装備一式でございます! ナギ様がジャージルックがあまりお気に召してないと聞きつけ名のある職人様に作っていただいた代物です、外れはございません!」
と再び押し出されるそれを、手に取る。
「受け取るんだ…」
「受け取るのか…」
その光景を見ている二人の視線が痛い。ジャージも別に嫌じゃないけどタダでもらえるなら受け取ろうという浅ましい心が…。
「ささ! 早速着替えてご感想を! 上の者に報告せねばなりませんので、一度でもよろしいので!」
とヴァイスさんに言われるがままに装備する。ちなみに今回受け取った装備はこちら
【ローエス冬のコレクション】
装備カテゴリー:全身セット
DEF+500
REG+200
耐久度:250
効果:STR上昇
ATK上昇
回復量増加
全体性UP
冬のコーデ。
とりあえずローエスさんによって作られた物みたいだ。
白い紐付きのニット帽に白いニットのワンピース。黒タイツとファー付きの茶色のブーツ。ジャージよりも見た目暖かそうな装備だ。
「おお! なんと神々しい!」
「目が腐ってんのか? この場合は…可愛らしい、が正しい表現な気がするが」
「ナギちゃん=青のイメージから脱却だね」
とそれぞれ評価をしてくれます。
プチファッションショーが終わるとヴァイスさんは颯爽とどこかへ消え去った。
「風のような男だな、さ、気を取り直して雪男倒しに行こうか」
と適当感丸出しのマルセスさんをクゥちゃんと二人で笑いながら村の外に出る。
――――――――――
NAME:ナギ
【ブーメラン初心者】Lv25【STR増加】Lv45【ATK上昇】Lv40【SPD増加】Lv43【言語学】Lv41【遠目】L19【体術】Lv34【二刀流】Lv50【幸運】Lv50【スーパーアイドル】Lv9
控え
【水泳】Lv28
SP30
称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主




