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ナギ記  作者: 竜顔
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防衛戦終了とイベント

 終わりはあっけないものだった。私が男に飛び込み両腕を抑え押し倒し、そこをジェットさんが攻撃して仮面を割った。最後に男は「もったいないことを…」とつぶやいて消えた。不思議と抵抗されることはなかった。


「ナギちゃんは肉食系だね」


 そうやってジェットさんがニヤニヤしているので冷たい視線で返しておいた。


「結局ジョーカーってなんなんですか?」


「さぁな」


 この世界の住人であるレフトさんたちにもわからないらしい。


「ところでナギちゃん、なんかスキルのレベル上がった? 俺は上がった気配がないんだけど…」


 そういわれてスキル欄を見る。投擲と幸運以外わずかに上がっている。


「一応上がってますね、でも投擲や幸運は上がらなかったみたいですけど」


「…上級者にはこれから利益があるよって事……か?」


 一連の敵にドロップ品はなかった。ジェットさんの様子じゃスキルの方もレベルが上がらなかったみたいだし、うまみがないというのも頷ける。そう考えると北のエリアは今の私じゃ太刀打ちできないモンスターが出てくるのかも。


 ゴブリン達がプレイヤー側に向かおうとしたとき



          《緊急インフォメーション》


この度の『貿易ルート防衛戦』における全ての敵の殲滅を確認いたしました。

プレイヤーの皆様には一度街に戻っていただき、次回の開門より正式に北部エリアの開放とさせていただきます。これよりしばらくして現在北部エリアにいらっしゃいますプレイヤーの皆様を『ビギ』の街に強制送還させていただきます。

皆様これからも『○○記』をお楽しみください。



「終わったみたいだな」


「じゃあ、俺たちはこれで」


 帰っていくゴブリン達を見ながらPTを解散させる。インフォメーションの内容を見ると、このままついて行ってもゴブリン王国には入れないんだろうなぁ。


「じゃあ、送還されるのを待ちますか」


 そういってジェットさんが腰を下ろし、私も座る。それから二人で会話をした。主に「仮面の男」のことやジョーカーについての推測。といってもすぐ送還されたのでほとんど話せなかったけど。


 街に戻されてから「じゃあまたね」といってジェットさんはどこかへ行ってしまった。なんか疲れたので私は人気のないところに行ってログアウトした。


――――――――――


 翌日ログインするとビギの街は人の活気で溢れていた。


「誰か女の子PT組みましょう!」


「男の人募集!」


 とか異性を求める声も多ければ、ナンパしている人もちらほら、なんて言ってると


「ねぇ君、一緒にPT組まないか? 今のうちに親睦深めとこうよ!」


 これで何人目だろうか。しかし今こうなっているのには原因がある。今朝公式サイトで来週のイベント内容の詳細が発表されたのだ。


 そのイベント内容とはズバリ、カップルイベント! 一応公式サイトには


『舞台は恋する二人の絆を確かめるためにあらゆる試練が待ち受ける「エイロー」の街。そこで起こる様々な苦難を二人で乗り切ろう! 二人の恋はさらなる進展を見せるかも!?』


 と書いてあった。タイトル(?)ではこんな風になっているけれど、一応二人PTなら異性ペア同性ペア関係がないらしいけど、現在それに向けて下心丸出しな男女が相手を求めている。


 というかさっきから男女隣り合って異性を求めてるのが見えてるけど、そのまま隣同士二人でいいんじゃ…っていうのはダメなんだろう。


 それから数日、次々と詳細が掲載されていく。


 イベントのさらなる詳細は、期間中参加者は特別なエリアに一週間転送される。持っていける物資は回復薬系と装備のみで、金銭は持って行けないとのこと。また、活動の拠点は街にある宿で、それは運営側が指定した部屋となるらしく、ログアウトも自室でしかできない仕様となっているとか。


 運営指定の部屋というワードで、ついにできるのか(何がとは言わない)とかいう人や、むしろそういうことができないように管理されてるんじゃないかと安心する人と反応は様々だ。


 イベント期間中に主にやることはクエストを受けることで、クエストは最低二人PTで挑めるものしかないので相方がいないと満足にプレイできないとのこと。


 そしてクエストの成果や何かの条件を満たすことでポイントが与えられ、そのポイントのランキングの上位者に褒賞があるらしい


 まぁおそらく私には関係がないことだ。二人組を組むには相手がいないし、指定部屋がどういう性質かわからない以上、あんまり知らない人とはいきたくないし。


 スミフさんやマキセさんを誘ってみたけど、


「「生産メインは無理だろ」」


 と返答。ローザさんは行く気満々だったけど、現状読み取れる限りでは生産メインは生産メインと組んだ方がよさそう、と私は断られた。


 まずウェルスさんは無理で、ウェルスさん曰く固定PTを組んでる人はPTを二人ずつの三分割でイベントに乗り込むという人がほとんどとのこと。だからホムラやエリリンさんは多分誘うだけ無理だろう。秘密の多いジェットさんは知らないけど、まぁ多分ギルドに入っているだろうし相手には困らないんじゃないかな。


 ロマンさんは、洞窟バカ仲間と行くと張り切っているようだ。


 そろそろ人脈を開拓するときなのだろうか? きっと京ちゃんは彼氏とウキウキ気分で参加するんだろうなぁ。そう思っていると夏休み前の京ちゃんの言葉を思い出す。


 ――彼氏を作ればいいじゃない――


 ――男性プレイヤーに片っ端から声かけて――


 いやいや、落ち着け渚、京ちゃんなんかの言葉に騙されちゃだめよ! きっとそんなことしても変態しかつれないわ、ストーカーしてるくせに洞窟の前で、男と二人きりなんて危険だ、とかいう変態しか…。


 後半ジェットさんへの悪口になってしまった。そういえばまたジェットさんを見なくなったなぁ。


 最近狩りにも行けてない。何故かって?


「へぇそうなんですか、勉強になりますね」


「お、おう、わからないことがあったら何でも言えよ?」


 街の外は今やただのデートスポット。あちこちでいちゃつく異性カップルを見ながらソロで活動なんてできない、精神的に。だから昼は図書館で「ジョーカー」に関する書物を探しつつ【言語学】のスキル上げ、夜は街の外に繰り出し【視力】のスキル上げ、まさに昼夜逆転。


 ジョーカーに関する書物はまだ見つかってないけど、第四の街が北にあるらしく、私はそこにあるんじゃないかとにらんでいる。


 プレイヤー以外でも変化があった。というのは街にゴブリンの商人が商売していたりするようになった。その上ゴブリンの商人が売る商品はもともとビギの街で売られていた商品とは少し違っている。


 また、たまにゴブリンと一緒に戦っただとか、通りがかりにポーションを投げてくれたとかいう話を聞くようになった。なんでもゴブリンによる横殴りは損失がないとのことで、特別な理由がなければどのプレイヤーも大歓迎だそうだ。


 第四の街「ルージュナ」についても彼らが詳しい情報を運んできた。しかし現在結界が張られているらしく、プレイヤーは開放条件を探しているらしい。今回のイベントへの参加を見送る人はこっちに尽力しているみたい。


 イベントなんて関係ない話だとか言い聞かせてるけど、正直参加したい。諦められない私は、いっそゴブリンとPTを組めばいけるんじゃないかとか考えてしまう。


 相手は見つからない、それでもいつ相手が見つかってもいいように最低限の準備は進めていた――


――――――――――

NAME:ナギ

 【投擲】Lv28【STR補正】Lv23【幸運】Lv19【SPD補正】Lv22【言語学】Lv30【視力】Lv10【】【】【】【】


 SP23


称号 ゴブリン族の友

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