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ナギ記  作者: 竜顔
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クリスマス島の冒険:トナ・カーイ

 宿屋を出てすぐに第三の村の外に出る。昨日まで遠くに見えていた深緑は印象が薄くなりちらほらとあったはずの寂しい緑は今やただの真っ白になってしまっている。


「なぁ、とりあえずその方法とやらを教えてほしいんだが」


 ついでにローブの男性もついてきた。この短い道中クゥちゃんから常に威嚇されていたけどそれは全く気にしてない様子だ。


「その答えは、これです」


 と私は腰の位置にある携行雪玉製造機を見せつける。製造機にはひもがついていてその紐を肩にかけて腰に下げている。


「そもそもそれが何なのかわからないんだけど」


 と言うローブの男性。


「携行雪玉製造機です」


「なるほど」


 それで納得してくれたのかうんうんと頷いている。


「雪製武器だね、爪だと耐久度が低くてすぐ壊れそうだったから選ばなかったけどそれが有効なんだね」


 クゥちゃんも私の考えを理解したみたいだ。なんかめちゃくちゃ得意気だったのが恥ずかしくなるくらいみんなあっさりしてませんかね…。


「えーっと…トナ・カーイは攻撃された瞬間あの渦を発生させるって言ってましたけど、それって攻撃する度にってことですか?」


 気を取り直してローブ姿の男性に尋ねる。毎度攻撃する度にあの渦を発生されては対策アイテムのないクゥちゃんは延々と私達に牙をむくとともに体の自由を乗っ取られることにるので、また別の対策も立てる必要が出てくる。


「んー、最初だけだったかなぁ、だから最初さえ気を付けてれば割とあっさり狩れるんじゃないか?」


 という男性の答えを聞き、それなら最初に私の雪玉で攻撃すればまともに戦えるようになるはずだ。


「じゃあトナ・カーイにリベンジです」


「「おおー」」


 私の掛け声に二人が返事をしていざ雪道をザクッザクッと歩き出す。


「あー、ちょっと待った、PT組もう」


「別に組まなくてもいいでしょ?」


「残念、もう申請したんだなぁ」


「ナギちゃん断って!」


 ローブの男性とクゥちゃんが言い合いをしている。クゥちゃんにとっては嫌な相手なのかもしれない。軽ーくバカにしてる感じするしね、初対面なのに。でも私にはすぐにクゥちゃんの希望に沿うことはできなかった。


「申請を断ったら減点されるのかな?」


「あっ」


 私の問いかけにクゥちゃんも黙る。こう考えるとサンタポイントってなんかものすごく狭苦しい物だと感じる。


 結局男性――マルセスさん――をPTに加える。


「俺としてはポイントのことまで考えてなかったんだが…改めて俺はマルセス、ナギさんに、クゥさん、よろしく」


 と言ってマルセスさんは初めてローブのフードを取って素顔を見せる。髪は少しツンツン黒毛に黒目、年齢は同年代くらいだろうか。せいぜい私達より±5歳くらいに見える。まぁ面倒くさくなりそうなので聞かないけど。


「じゃあ気を取り直して行こう」


「なんで仕切ってんの?」


「俺が止めちゃったからさ」


 マルセスさんは再びフードを被って歩き出す。クゥちゃんがそれに突っかかると白い歯を見せて弁解する。


 気を取り直して雪道を歩きトナ・カーイを探しに行く。他の人達も戦い方が分かってきたのかあちこちで戦闘が行われているみたいだ。


 そんなプレイヤー達の横を通って漸くぽつんと一体孤立しているトナ・カーイを発見する。


「ということで雪玉を製造」


「先に作っておくことは考えなかったのか?」


 マルセスさんからの突込みはスルーしてスイッチを押す。すると音を立てて見事に雪玉が一個。



【携行雪玉製造機】

特殊アイテム

貯蓄雪量:80


雪を入れると自動で雪玉を生成してくれるが、個数には限界がある。



 製造機を確認するとこうなっていた。貯蓄雪量100で最大値だったのが80になってるので最大5個分まで貯蓄できるということのようだ。


「じゃあ、投げます」


「ちょっと待て、俺の活躍の場面だろ、ここは」


 チャージスローの体勢に入っていたらマルセスさんに止められる。私が攻撃してすぐに飛びかかれるよう前に駆け出していたクゥちゃんも足を止める。


「とりあえず先にATKアップをかけておくか」


 そうだった。彼はバフ(能力強化)使いだったんだっけ。


 ATKアップをかけてもらった後、今度こそチャージスローの体勢に入る。クゥちゃんは前に駆け出す姿勢を取っている。


「3、2、1、0!」


 0のタイミングで雪玉を投げる。それに合わせてクゥちゃんはトナ・カーイに向かって駆け出し、マルセスさんもそれを追う。二人に遅れてすぐに私も走り出す。


 雪玉は見事命中。トナ・カーイはこちらに照準を合わせて両腕(?)を上に振り上げ…る途中でその動きが鈍る。


「スロー入れたよ」


 動きが鈍って棒立ちになっているところにクゥちゃんの爪が突き刺さり、トナ・カーイのHPを削る。ゆっくりとよろめいたトナ・カーイに容赦することなく私もブーメランを投げる。


 それがトナ・カーイにぶつかるころマルセスさんによってクゥちゃんのスピードが増し凄まじいラッシュでトナ・カーイに襲い掛かる。


 意外とあっさりとトナ・カーイへのリベンジを果たした。


「初手さえどうになれば攻撃に時間がかかるから楽に倒せるな」


 マルセスさんの言葉にクゥちゃんと二人で頷く。


「でもこのイベントって確か上の数字の村ほど有利なんだよね?」


 私がそれを口にすると二人とも触れてはいけない空気を作り出した。第三の村でこの様子なら第一と第二はもっと悲惨なことになってるんじゃないだろうか、とか第四の村はどれだけいいのだろうか、とか考えてしまう。


「まぁそれは後々わかるんじゃないか? とりあえずまずはトナ・カーイを狩りまくってみよう」


「次の村にいくのもまた面倒くさいみたいだしね」


 マルセスさんの言葉にクゥちゃんも頷く。敵意は幾分かおさまったみたいだ。


 それからトナ・カーイを4体程倒したところ。


「…チャージに時間かかるみたいです」


 携行雪玉製造機は雪を補給してすぐ使用可、にはならなかった。10分ほどかかるみたいだ。トナ・カーイはすぐに倒せるのでまだ休憩という時間でもない。


 マルセスさんの提案で雪玉なしで戦えるか試してみようということになった。


 結果は案外うまくいき、何体もトナ・カーイを狩ることに成功し、再び製造機のチャージ待ちに休憩と言うことで村に戻った。


 戦い方はマルセスさんによって幻惑系への耐性を上げてクゥちゃんに突っ込ませて先制させる。渦の突き上げがあっているうちにマルセスさんが幻惑系治癒の準備をし、クゥちゃんが幻惑系の状態異常になっていたら解除、なっていなかったらすぐにトナ・カーイの動きを遅くする準備に入る。というもの。


 マルセスさんの負担が尋常ではないように思えたけど幻惑系の状態異常中のクゥちゃんが必死に私に殴りかかっているときにチラッと見ると白い歯をこぼしていたので、この光景を楽しんでるんだなぁ、とマルセスさんのことは深く考えないようにした。


 ちゃっかり笑いものにされていたことに気づかないクゥちゃんはすっかりマルセスさんへの敵意はなくし、村に着いてからは普通にPTメンバーとして扱っていた。


 さて、村に戻ってサンタポイントを見て見ると55ptになっていた。


 内容はトナ・カーイ討伐20体×2pt、相部屋許可15ptだった。同じPTだったというのが関係しているのかクゥちゃんにも相部屋のポイントは入っていた。


 マルセスさんは53ptで私達が追い抜いた。


 そしていつの間にかサンタ協会にはサンタポイントの今朝5時集計のランキング表が掲示されていた。


1位 ホーク   321pt 第五の村

1位 エース   321pt 第五の村

1位 テツ    321pt 第五の村

1位 ボマー   321pt 第五の村

1位 カザグルマ 321pt 第五の村

1位 ホウガン  321pt 第五の村

7位 マギー   246pt 第五の村

7位 ロイド   246pt 第五の村

9位 レイブス  210pt 第五の村

9位 ピーチ   210pt 第五の村


 ……第五の村は次元が違ったみたいだ。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン初心者】Lv24【STR増加】Lv44【ATK上昇】Lv40【SPD増加】Lv42【言語学】Lv41【遠目】L18【体術】Lv34【二刀流】Lv49【幸運】Lv50【スーパーアイドル】Lv9


控え

【水泳】Lv28


 SP30


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主

同率なのはパーティで行動中の為です。

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