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ナギ記  作者: 竜顔
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クリスマス島の冒険:第三の村

「まずはそうだな、君たちに何が起こったのかから話すべきか、トナ・カーイはどうやら攻撃された瞬間にあの黒い渦のようなものを周囲に発生させてその範囲内の存在を幻惑系の状態異常にさせるみたいだな、君は【幻惑の人形】を持っていて防ぐことができたみたいだけど、そっちの子は持ってなかったみたいだな」


 と男性は「君」で私を見て「そっちの子」とクゥちゃんを指す。


「だからそっちの子がどうなってたのか俺としては聞きたいんだけど」


 とローブ姿の男性はクゥちゃんの方を見る。


「んー、あの渦の後ナギちゃんが敵モンスターに見えて体が勝手にそっちの方向に動いていった感じかなぁ、ナギちゃんは攻撃してきたし、それでダメージも受けてた…あっ、ナギちゃんがモンスターに見えたって言うのはナギちゃんが立ってた位置にモンスターがいたってことだから!」


 クゥちゃんが後半焦ったように力説する。何か焦るような要素があったかな?


「なるほど、これで幻惑系の話はいいとして、まぁ見てる感じトナ・カーイが能動的に攻撃するのは時間がかかるみたいだな、アクティブモンスターっぽいけど大体奴が攻撃する前にプレイヤーから攻撃されてるし、威力は体験した通り…まぁだからこそ」


「幻惑系の状態異常で同士討ちさせて時間を稼ぐと」


「だろうな」


 ローブ姿の男性がと途中まで話したところでクゥちゃんがその意図を察して発言し、男性は頷く。


「あの、気になったんですけどそこまでわかっててなんで私達を助けることを優先したんですか?」


 私は疑問を口にする。トナ・カーイが攻撃に時間がかかると知っているなら私達に許可を得て先に倒すこともできたはずだ。


「あぁ、まず俺が【呪術】とか【祈祷】とかバフデバフ、状態異常の回復メインのサポート主体なもんで奴を倒せるほどの火力がないのと、PT組んでない相手が先に攻撃したモンスター殴るとサンタポイントが減点されるから」


 と男性は説明してくれる。男性によるとサンタポイントは0が最少ではなくマイナスになるとのこと。それに加点されるときは何もなくてよく分からないけど減点されるときは嫌な音が鳴るらしい。


「まぁだから、爪の子を回復して一緒に死に戻るか、遠くから見過ごすか、のどちらかぐらいしか選択肢がなくてね、死に戻ってもサンタポイントは減点されないみたいだから別PTの人の状態異常を治したら加点されるかも、ていう方に賭けてみたんだ」


「利用されたってこと?」


「まぁねー♪」


 クゥちゃんの突込みに男性は笑顔を見せる。目元はよく見えないので口元だけだけどいたずらっぽい笑顔だと思う。


 利用されたことが不服だったのかクゥちゃんは男性は睨み付けるけど男性は素知らぬ顔だ。


「さて、サンタポイントがどうなってるか見に行くかな」


 そう言って男性は立ち上がりポンポンとお尻を叩く。サンタポイントは宿屋の横にある酒場とくっついているクリスマス島サンタ協会の受付カウンターで確認できるみたいだ。


 私達はまだ何もしてないのできっと0だろうけど男性についていくような形でその場所を訪れる。どうせデスペナルティですぐに戦線復帰はできないのでクゥちゃんを利用してどれだけ稼がれたかを確認しなくては。


「13ptか…いいのか悪いのか全然わからん」


 男性は今の自分のサンタポイントを聞いてそんなことを言っている。私達は0ptでした。


「とりあえず爪の子の治療で5pt稼げたみたいだからありがとう」


 白い歯を見せるローブ姿の男性にクゥちゃんが鋭い視線を送る。ローブ姿の男性は少し話した感じでは少し気さくな普通の人、と言う感じだけどクゥちゃんの威嚇にも動じない辺りなかなかの変わり者みたいだ。測り方がなんかおかしい気がするけどここでは気にしないことにしておく。


 その後男性はデスペナルティ中だから、と宿屋の方に向かっていき行列の一部と化し、私達は村の各施設を回ることにした。


 が、しかしどこも店を開いているけど品薄状態だった…。アイテム屋は特に問題なく幻惑系の治療薬や一時的に耐性を上げる物が売られていたけど、武器屋も防具屋もすさまじいひどさだった。


 なんでも雪が降らないと…。だそうだ。とにかく今すぐに役に立ちそうなものは置いてなかった。


 その後行列の一部と化しているローブの男性を素通りして宿屋に入り、ログアウトした。




 翌日の朝。ログインして部屋から出て下に降りると宿屋の受付から呼び止められた。


「すいません、お客様のお部屋は現在お二人での宿泊になっておりますよね? 現在宿泊できない方がいて困っているのですが、相部屋になってもよろしいでしょうか?」


 どうやら相部屋の相談のようだ。クゥちゃんはログアウト中、となると私が決めることになるわけだけど、まぁいいよね。


「ええ、構いませんよ」


「ありがとうございます、それでは後のことはこちらで勝手にさせていただきますが、構いませんか?」


「はい」


 と言って私は受付を後にした。クゥちゃんにもこのことをメッセージで送っておく。


「うわぁ」


 外に出るといつの間にか景色のほとんどを真っ白な雪が彩っていた。いつ積もったのか、どのように積もったのか気になるけどそれを確かめる術はなさそうだ。


 雪が降ったということは武器屋も防具屋も活発になっているに違いない、と訪れてみる。雪製の武具が大量に並べられていた。


 ゲームの時間は夜。村の外に出る人も少ないのか教会の前のリスポーン地点も穏やかだ。バカップルの二人がログインしていたのでコールをかけてみたけど別の村にいるようだ。


 やることがないのでゲーム内の朝が来るまで現実に戻ろうと思い、宿屋に戻った。階段を上がり廊下を渡って部屋のドアを開ける。


「あっ」


 バタン!


 私は予想外のことに思わずドアを閉める。確かに部屋の鍵を開けずにそのままドアが開いたけど…。確かに他の人と同じ部屋になると知っていたけど。


 ガチャ


「あのぅ、もう大丈夫ですよ」


 ドアからわずかに女性が顔を出して告げる。


「そ、そうですか」


 女性に言われたので引きつりながらも頑張って笑顔を作って部屋の中に入る。部屋の中にはバツが悪そうにしている男女一組。女の方は今声をかけてきた女性だ。


 要するに、その、あれ、そう! 二人が抱き合っているところに遭遇しただけだから! キスとかじゃなくてよかった!


 私はその男女一組をスルーして自分のベッドにもぐりこみログアウトした。



 昼過ぎにクゥちゃんからメッセージの返事が来ていた。そこには了承の意味の言葉とログイン時間がかかれていた。ログイン時間は私同様ゲーム内で朝が来る時間に合わせてあるみたいだ。


 そのメッセージを見てすぐにログイン。


「ということでよろしくー♪」


 ログインするとどこかで聞き覚えがある声が…というか昨日聞いた声が。


「あ、ちょうど相方さんも来たみたいだな」


 昨日のローブの男性は結局あぶれて私達と相部屋になってしまったみたいだ。そのローブの男性の前にはクゥちゃんが立っていた。


「あ、ナギちゃん」


 クゥちゃんも私に気づく。


「まぁ折角だから、一緒に狩りでもどう? 爪の子が大変なことになったらまた俺が治してあげられるよ?」


「んな!」


 ローブの男性の物言いにクゥちゃんが目を見開く。


「大丈夫! そうならない方法を知っているから」


 と私が言い放つと二人して驚きの表情を見せる。あれ? そんな驚くことかな? 確かに機能は油断してというか、色々と考えて使うのを躊躇したけど…ちゃんと対策アイテムはあるし。


 携行雪玉製造機。雪が積もっている今ならその力を存分に発揮できるはずだ。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン初心者】Lv23【STR増加】Lv43【ATK上昇】Lv39【SPD増加】Lv41【言語学】Lv41【遠目】L18【体術】Lv34【二刀流】Lv49【幸運】Lv50【スーパーアイドル】Lv9


控え

【水泳】Lv28


 SP26


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主

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