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ナギ記  作者: 竜顔
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番外編:心配

 ここしばらく続いていたテストの時間が終わりを告げて、あとは午後の一時間だけとなった昼休み。テスト前もちょいちょいログインしていたけど今日から本格的にまたゲームが楽しめる、とか考えながら昼食をとり終わったころニヤニヤ顔の「嫌な奴」がこちらにやってきた。


「なぁ末吉、テストはどうだったんだ?」


「普通」


 ボクの回答にも嫌な奴こと長髪メガネはそのいやらしい笑みを崩すことはない。


「それもそうだよなぁ…結果がわからないのに聞かれても困るよな」


 と何かひとりでに勝手に納得している。


「用がないならどこかへ行ってくれる?」


「用がないわけないじゃないか」


 睨み付けるとにんまりと気持ち悪い笑顔で返してきた。と思ったら急に真剣な表情になり


「なぁ末吉…かわいい女の子の条件って何だと思う?」


「は?」


 全くどうせ変な趣味の話だろう…。


 かわいい女の子の条件…ねぇ。うーん、ナギちゃんみたいな感じだろうか? なんかみんな可愛いって言ってるし、実際ボクよりキャピキャピしてる感じはあるし。というかほっとけない愛くるしさみたいなのがあるしね。


 シンセに言わせると


「クゥちゃんもほっとけない愛くるしさはあるわよ? そうねぇ、ナギちゃんはすぐに抱っこをねだってくる子供みたいな感じで、クゥちゃんは無理に我慢して気づいたらお漏らしして泣いてるような子供みたいな感じね」


 とよく分かるような分からないような例え話をされた。この時シンセの実年齢が気になったけど聞いてはいけない気がしたのでそこはあえて触れないことにさせてもらった。


 でも元々シンセは「かわいい子猫ちゃん!」とか言って近づいてきたんだっけ。こっちが警戒心むき出しにしているのに何となく怖い優しい微笑みで近づいてきて抱きとめられた。


 そこから半ば強制的に会話させられて胸部的な意味で意気投合、それからは一緒に行動するようになった。


 そのころからなんとなく戦闘では【調教】したモンスターと一緒のような扱いを受けてきた気はするけどまさか本当にモンスターに同じ名前を付けるとは…。


 っと話が逸れた。


 えーっと、舞浜とかはナギちゃんに対してシンセと同じような感じなのかな、カッサはそうでもなさそうだけど。


 まぁでも皮肉なことに舞浜は心配してるつもりでも空回りして逆にナギちゃんから心配されてしまってるけど。


「……そんなに考え込むほど真剣な話をしているわけじゃないんだけど、なんかすごいテーマで考えてないか?」


 長髪メガネの言葉にはっと我に返る。


「考えてたらゲームでよく行動するみんなのことが思い浮かんでね」


「そうかぁ、ナギさんだっけ? 早く紹介してほしいなぁ彼氏としては彼女の友人とも仲良くしたいじゃん?」


「別に彼氏じゃないでしょ」


 真剣な表情はいつの間にか消え去りいやらしい顔つきで言うので、きっぱりと否定しておく。


 最近「二人は付き合ってるの?」と聞かれることはなくなった。それだけだとうれしい限りだけど、もはや聞くまでもなくカップル認定がなされてしまった。


「じゃあゲームの中でだけ恋人ってことでいいじゃないか」


「よくない!」


 そんなことしたらリア充爆発しろ勢でやってきたのはなんだったの? ってナギちゃんに変な目で見られるじゃん。


「なんでぇ? どうせ現実では知らない仲じゃん」


「うるさいなぁ…長髪メガネを彼氏です、て紹介したら現実の心配されるでしょ?」


「そうかぁ? 趣があるって言われるかもしれないぞ」


「………………あればね」


 こいつのこの自信は一体どこから湧き上がってくるんだろうか。


「ところで、そういうそっちこそ最近呼んでこないけど、友達でもできたの?」


 こっちの話題から長髪メガネの方に話題を変える。以前は狩りを手伝って、とかあれを教えて、とかで呼びつけていたのに、最近ぱったりだ。


「えぇ? やぁっぱり俺のことが気になるんじゃん!?」


 失敗だったかも。より一層気持ち悪さが増した笑顔でしかたがないなぁ、と長髪メガネは話し始める。


「確かに最近は一緒に行動するメンツもできてはきたかなぁ、今度紹介しようか? 女はいないから浮気なんてしてないぞぉ?」


「浮気以前に相手がいないんだから浮気にもならないでしょ」


 と言い返すけど長髪メガネはうれしそうだ。


「案外俺もてるかもしれないぞ?」


 と長髪メガネは得意げな表情を作る。だからその自信はどこからくるのか。


「現実では大して友達もいないくせに」


「ぬぁ! いるぞ! いや、末吉がいてくれるなら他にはいなくたっていいじゃないか、頼むよ、痛っ!」


 手を取ってきたのでその手を叩いておいた。


「結構いてぇ、まぁでも、もう少し強くなったら呼ぶかもしれないからな」


「強さ自慢のために呼ぶの?」


「弟子が師匠に成長した姿を見せるのは当たり前じゃないか」


 笑顔で長髪メガネは答える。それに呆れるようにため息をつく。


 そんな風に長髪メガネと会話しているうちに昼休みが終わる。…こんなことしてるからカップル認定されちゃうんだよね。






 放課後の帰り道。昼休みの末吉との会話を思い返す。まさか「かわいい女の子の条件」であそこまで深く考え込まれるとは思わなかった。


 単純に「すぐに暴力で訴えてくるのはかわいい女の子の条件に入らないよね」っていう方向に話を持っていくつもりがあんなに真剣に考え込んでるときにそんなこというと殴られそうなので言えなかった。身体、安全、第一。


 まぁその後手を叩かれたけどな。でもあんなの奴にとっては暴力に訴えるに含まれないからな。


 なんてったってお尻にタッチしたら回し蹴りが飛んでくるんだもんな。実際にタッチはしてないけどな。本人曰く「お尻に違和感を感じた」と言って後ろにいた俺に回し蹴りを炸裂させた。蹴られる身にもなってほしいという話だ。そんな状態で二重表現の指摘などできまい。


 その達人の域にまで達した研ぎ澄まされた感覚には驚嘆の一言だが、男子の中にはさわらぬ神に祟りなしみたいなやつもいる。


 最近では動きの切れが増してきているので余計に男子が遠ざかっているわけだが、これでいいのだろうか。多分ダメだろう…俺の身体が。


 そのこともあって今回その部分に触れようと思ったわけだが…考え込んだ割にその回答は出てこなかった。……自覚、ないんだろうか。


 それとも俺に対してだけあんなナチュラルにアグレッシブなのだろうか。それにしてもそんな場面を幾度となく見ていれば敬遠もされるだろう。事実近寄る男子が俺しかいないし…。


 ………あれ? もしかして俺が悪いんじゃね?


 よし! この辺のことはそのうち考えよう。


 こうして見事に頼まれていた買い出しを忘れていた俺は家に帰ってすぐ母ちゃんに怒られたとさ。

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