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ナギ記  作者: 竜顔
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期末

学校回にするつもりでしたが…日常回に。

「次の章までが期末の範囲だ、このままだとギリギリになるかもしれないからこれまでのところを今のうちに復習しておいた方がいいぞ」


 4時間目の終わりのチャイムが鳴るとともに先生がその一言を残して教室から去っていく。


「再来週から期末テストかぁ」


 京ちゃん達とお昼を一緒に食べるために京ちゃんの机と私の机をくっつけた後、私は伸びをしながら一言。


「渚は中間の時頑張ってたもんねぇ」


 くっつけられた私と京ちゃんの机のもとに結衣ちゃんがやってくる。結衣ちゃんはそこら辺の適当な席から椅子だけ拝借して座る。


「そうそうゲームをやるためにねぇ」


 そう言いながら京ちゃんは嫌らしい笑みを浮かべる。


「目的がおかしいような気もするけど…まぁ、やらないよりはいいと思うよ」


 とフォローなのかよく分からないことを言う結衣ちゃん。


 でも最近毎日のようにログインしてるし、考え方がゲーム優先になってきている節があるので勉強をやらないよりはやる方がいい、という結衣ちゃんの言葉は十分フォローになってるのかもしれない。


「でも中間の時もなんだかんだ流されてしまいそうになったんでしょ? 科目も範囲も増えるのにモチベーション保てるの?」


 京ちゃんが心配そうな表情で私の顔を覗き込む。しかしその辺は問題ない。


「大丈夫、今回は明確な目標と言うか、野望があるから」


「ほぉ」


「へぇ、以外」


 京ちゃんも結衣ちゃんも驚いた表情を見せる。私が何か目標を持つのって珍しいことかな…。


「それで、目標って?」


 体を前のめりにして京ちゃんが尋ねてくる。


「合計点で舞浜君に勝つこと」


「ゴホッゴフ!!」


 私が目に力を込めて宣言すると背後から咳き込む声が聞こえる。…汚いなぁ。


 本来後ろの席である京ちゃんの方に向けて机をくっつけているので後ろで咳き込んだのは本来は私の前の席である舞浜君なんだけど。


 中間テストの時そんなに勉強している風でもなかった舞浜君に負けたのはそこそこ悔しかった。期末テストになれば範囲も広がるし科目も増えるので今回も一夜漬け勢であろう舞浜君に勝つことも不可能ではないはずだ。


「でもそんな堂々と宣言しちゃったら舞浜君だって頑張るかもしれないよ?」


 結衣ちゃんが私の後ろを気にしながら言ってくる。後ろからは未だに咳き込むような声が聞こえている。


「勉強しないようにお願いした方がいいのかな?」


「いやいや、それはダメでしょ」


 私の口から出た言葉に珍しく京ちゃんが悪乗りせずに否定する。


「ライバル相手ならたとえ相手がどんな状況だろうと完膚なきまで打ちのめさないとダメでしょ!」


「ゴフッゲホッゲホッ」


 どうやら京ちゃんは熱血だったらしい。そして私の背後では一旦は咳き込むのが収まった舞浜君がまたむせる。男子が笑う声がするので舞浜君は誰かと一緒にお昼を食べているらしい。一緒に食べる男子もいい迷惑な気がする。


「ほら、あんまり変なこと言わない…舞浜君がすっごい苦しそうだよ」


 結衣ちゃんは私達二人を咎めるような目を向ける。舞浜君を笑っている男子は「気にしなくていい」とか言ってるけど、と思って振り返ると舞浜君の顔が真っ赤で予想以上に苦しそうにしていた。


「マジで…のどに、ゲホッ変な…入った」


「プフ! すまんすまん! でも…クス」


 苦しそうにしながらも舞浜君は友達を睨み付けている。だけどその甲斐むなしく友達はいまだに笑いのツボに入って抜け出せないようだ。


 少しして落ち着いた舞浜君がこちらに顔を向ける。何事もなかったかのように取り繕おうとしているけど、あの醜態をさらしては今更な気もする。


「なんか…ごめん」


「大丈夫だから」


 私が謝ると舞浜君は自然な笑顔で問題ないアピールをする。それすらも何となく痛々しい。


 謝罪を済ませた後またくるりと体の向きを変えてくっつけている机の方に向ける。


 それから私達の方は普通の話に切り替わったけど、舞浜君はいじられ続けたのか、背後からは舞浜君と一緒にお昼を食べていた男子と会話していると思ったらすぐその男子の笑い声に変わっていた。


 そんな感じで昼休みは過ぎていった。


 昼休みが終わったと思ったらあっという間に今日の授業は終了。別に授業中寝てたわけじゃないよ…集中力の問題かな、集中してましたよ? 授業以外のことですけど…。


 授業が終わった後の掃除を済ませて帰りのホームルーム。特にプリントは配られず舞浜君がこちらを向く機会は一度もなかった。


 そして放課後。いつものように女三人、と思わせて結衣ちゃんと二人で帰った。誰かさんは恋人と一緒ですよ。


 さて、学校から帰って来てログイン。これからまたテスト期間に向けてログインが減るということをクゥちゃんに伝える。


「そっか、また寂しくなるねぇ、ボクもテスト期間どうしようかなぁ」


 とクゥちゃんも悩んでいた。クゥちゃんが悩んでいるのはテスト期間中はログインしない、と徹底するか、いつもより短く時間を設定してログインするか、という二択らしい。


 今日は狩りを早めに切り上げて私はログアウト。テスト期間中の大雑把な予定表を作ってみた。大雑把な予定表でも予定通りにできないことが多いのが私だけど。


 そして、よく考えればあんまり勉強している感じがしない舞浜君に負けたのが悔しくて頑張るんだから舞浜君にはそのスタイルを貫いて負けてもらう必要があるんじゃ、と言うことに気づいてしまった。


「やっぱり勉強しないで、ってお願いするべきだったかも…」


 その言葉は私の部屋の空気へと溶けていく。

短めですが。

明日は用事があるので次回は日曜日になります。

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