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ナギ記  作者: 竜顔
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火山

 翌日。


 結局【勇者の力】は頭上にかざしているときは武器を持っている状態とみなされるようで、左手でかざして右手で何かを投げる、という時に攻撃の威力は下がっていた。つまり【勇者の力】を使っている最中、【二刀流】がないと武器が使えないということだ。


 能力強化の効果は体感で分かるほどだけど、効果の高さからか思ったより使いどころが難しい物だ。


 さて、そんなことより学校から帰ってくるとお兄ちゃんにつかまった。なんでもルーナさんの相手をしてほしいんだそうだ。


 付き合っているのかもわからないけど、もしかして喧嘩? 破局? とか私がルーナさんの相手をする理由を考えながら部屋に入る。PCを起ち上げてチェックするとルーナさんからも一緒に「火山」で狩りをしてほしいという胸のメッセージが届いていた。


 それを確認した後ログイン――


『ナギちゃん、待ってましたよ? それでどうですか?』


 ログインして間もなくコールが…。その速さは私が今ゲームの時間帯が昼か夜か判別するよりも速かった。ちなみに明るいので一瞬で昼だということがわかる。


『あ、すでにクゥちゃんは来てますよ』


 外堀はすでに埋められているらしい。というかルーナさんの、クゥちゃんを抑えとけば私を釣ることができる感は何なんだろうか。


『わかりました、今行きます』


 と返事をする。えぇ、釣られますとも。ルーナさんに関しては私の中では未だに気になることが多い不思議美人だ。特にお兄ちゃんとの関係とか…。


 まぁ、その辺は置いておいて、ヴォルカへと移動する。ヴォルカに移ると、転移ポータルのすぐ近くにルーナさんとクゥちゃんが待ち構えていた。


「お待たせしました」


「そんなに待ってないから大丈夫ですよ」


 ルーナさんは笑顔で出迎えてくれる。


「このメンバーで行くんですか?」


「あとは舞浜も呼んだから待ってる」


 私の質問にクゥちゃんが答える。肉壁…ごほん舞浜君も来るらしい。


「ところでルーナさん、今日はどうして火山に?」


 私はわざわざお兄ちゃんにまで言われたことと、あとはログイン直後にコールをしてきたことも含めてルーナさんが何か特別な状況じゃないのかな、と思って口にしてみた。


「ほしい素材があるんですよ」


 ルーナさんから返ってきた答えは予想に反して普通の回答だった。


「それならお兄ちゃん達に頼めばいいんじゃないですか?」


 ルーナさんがお兄ちゃんやホムラ達と普段一緒に行動していることは知っているので聞いてみる。


「ふふ、そこは内緒」


 とルーナさんは笑顔のまま答える。つくづく謎が多い人物だ。


「あ、今日は洞窟にも入るんだってさ、それでカッサがすでに火山の洞窟で待機してる」


「そうなんだ」


 クゥちゃんが思い出したかのように話す。話によるとルーナさんの目的のアイテムは火山にある洞窟の方が手に入る確率が高いとかで、火山の頂上に向かうわけではないらしい。


「ナギちゃん達に任せっぱなしで…この場合はクゥちゃんかな? 盾の彼も洞窟で待ってくれてるカッサさん? もクゥちゃんが連絡取ってくれましたし」


 ルーナさんのなかなか崩れることのないその微笑みは私からクゥちゃんへと向けられる。…今思えばそもそもクゥちゃんはどうしてルーナさんと一緒に行動すると決めたんだろうか。クゥちゃんのことだから気分でとか言いそうだけど。


「あ、舞浜ログインしたみたいだね」


 とクゥちゃんが言うや否やルーナさんが黙る。様子を見るにコールをかけているみたいだ。なるほど、私の時もこんな風にしてコール仕掛けてきたのか。と感心する。


 しばらくして舞浜君もヴォルカにやってきた。少しの準備をした後、火山へ。


 火山エリアはヴォルカの南にあるエリアで、ヴォルカからのみ入ることができるエリアだ。今のところその先はなく南の終着点でもある。


 火山に出現するモンスターは、「キノミンレッド」「カレキソウ」「プテラ」の三種類。そしてどれもがアクティブモンスターだ。


 「キノミンレッド」はもはや何も言う必要のない○○記における便利屋ことキノミンシリーズのモンスターだ。赤い木の実に擬態し、火を吐くことができるので多少距離があっても一方的に襲われてしまうことがあるので用心が必要。


 「カレキソウ」はトレント種のモンスター。火山エリアの木は大抵枯れ木っぽく、それに擬態している。他のトレント種と違い軽快なフットワークで動くので不意を打たれると下手をすればPTが崩壊する危険がある。


 「プテラ」は鳥みたいだけどなんか違うといった感じのモンスター。空から襲ってくるうえにキノミンレッドのように火を吐くので接近してきたと思ったらすぐに撃退したいモンスターだ。


 そしてそれらのモンスターとは別枠で、火山の頂上に君臨するのがレイドボス「クレイドル」。黒い色をしたドラゴンらしく、最強モンスター候補の一角を担っている。だけどレイドボスなので数の暴力で解決できてしまうこともあってそこまで強い印象がないという人も多い。


 洞窟があるのは火山の丁度中腹あたり。そこまで歩いて登って行くことになる。


「っていうかカッサは何故洞窟に?」


 第一「プテラ」をブーメランで駆除した私はクゥちゃんに問いかけてみる。


「丁度火山に用があるPTがいたらしくてついていったらしいよ」


「そうなんだ」


「下調べは先にしておきたいとか言ってた」


 なんだ、偶然カッサが火山の洞窟にいたとかいうわけじゃなかったんだ、となぜかホッとする。


 それから洞窟に向かう道中何度かモンスターと遭遇する。山頂まで一本道なためモンスターの存在に気づいたからと言って安易に避けて進むことができないのが、他の場所とは違うところだ。


 カレキソウの軽快なフットワークを生で見て気持ち悪いなぁ、と感じたり、クゥちゃんにボコボコにされる姿を見ていると、これボクシングゲームだっけ、とかいう考えが頭をよぎったり。


「ふふ、クゥちゃんはいつみても元気ですね」


 ルーナさんはそんなクゥちゃんの姿を見て微笑んでいる。でも目の前で行われていることはそんな和やかな雰囲気ではないんですが…。


 バキッバキッと枯れ木の乾いた音が幾度か奏でられた後、洞窟に到着する。


「よっと、待ってました」


 入口に立つと先ほどまでなかった人影がパッと現れる。言うまでもなくカッサだ。


「あんまり人はいないみたいだから狩場が被ることはないと思うって感じだな」


 洞窟に入りながらカッサが洞窟内のプレイヤーの状況を教えてくれる。


 目的のアイテムをドロップするのはデュラハーンとの戦いで味方を窮地に追いや…じゃなくてシンセさんが呼びだした小さい赤いドラゴン「ベビードラゴン」だ。


 その可愛さに攻撃するのがためらわれる私と違い、みんなベビードラゴンを次々と倒していく。


 その日はそのまま時間いっぱいベビードラゴンを狩り続けた。結局ルーナさんの意図もクゥちゃんがルーナさんにつかまってた理由もわからないまま…。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン初心者】Lv23【STR増加】Lv43【ATK上昇】Lv39【SPD増加】Lv41【言語学】Lv41【遠目】L16【体術】Lv34【二刀流】Lv49【幸運】Lv50【スーパーアイドル】Lv9


控え

【水泳】Lv28


 SP26


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主

アッキー「ルーナと行動するようになってしばらく経つし、そろそろホモとか言われないだろ」

バジル「最近、とある美女がホモ集団をはべらせてるって噂になってるぜ!」

「!!!」

ホムラ「実際ルーナが女プレイヤーと一緒のところを見た記憶がないし…」

アッキー「たまには女の子と一緒にやらせた方がいいのかな…」

――ルーナが来る。

アッキー「今日はナギ達と遊んでくれ」

ルーナ「? わかった」

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