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ナギ記  作者: 竜顔
197/276

ゴブ

予約ミスってました。

申し訳ありません。

 翌日――



【勇者!:Fromジェット】

あれからデュラハーンにぎゃふんと言わせてやったよ!

これで俺も勇者。

ナギちゃんもいつでも勇者様を頼りにしていいからね!

ナギちゃんの為ならどこにだって行くさ!



 学校から帰って来て早速ログインするとジェットさんからこんなメッセージが届いていた。昨日あれからカッスール公爵の館に通い詰めたみたいだ。今ジェットさんはログインしてないみたいなのでとりあえず「よかったですね」とメッセージを返しておく。


 あ、どこにでも来なくていいです、と言っておくべきかも…。


 さて、今日はとある人と待ち合わせだ。と言っても現実出会う人なんて数人しかいないから…あの人ぐらいなもんだけど。


「ナギさん、お待たせしました」


 今や私の犬だとかペットだとか呼ばれている舞浜君がやってきた。PCを買い替えてログインできるようになったそうだ。その代り財布が大変なことになったらしい。


 今の時間帯は夜。町の外に出て狩りをするのは憚れる。


「あの…聞いてる?」


「ん?」


 舞浜君が私の表情をうかがうように聞いてくる。


「返事がなかったから…、それで今日はどうする?」


 私が反応を示したことでほっとしたのか表情を綻ばせて尋ねてくる。誘ってきたのはそっちなんだから決めておいてほしいと思うのは贅沢だろうか。


 あ、誘ったのは私だったかも。


 学校で復活したことを教えてくれた舞浜君にうっかり昨日のことを話してしまった。すると彼は「呼んでくれれば駆けつけることができたのに」とちょっと不満そうな表情で言うもんだから、良心の呵責でつい、ね。


 まぁ別に嫌いじゃないしなんだかんだ結局一緒に行動してただろうから問題はないんだけど。


「狩りをするなら時間帯的に聖樹になるか」


「そうだね」


 舞浜君の思いつきに相槌を打つ。私も聖樹を考えていたし、町の外に出ずに狩りをしようと思ったらそこぐらいしかないしね。


「あとは…公爵の館って、今でも行けるの?」


「…さあ? 条件を満たせばだれでも行けるらしいよ」


 舞浜君にとってはカッスール公爵の館も気になるようだ。


「【勇者の証】だっけ? それを持ってたらもう入れないの?」


「入れるかもしれないけど、舞浜君も一緒に入れるかわからないし、入れたからって期待してるようなことができるとも限らないし」


「えっと…その」


「試して、みる?」


「え? いいの!?」


 私の発言で舞波君の表情がパッと明るくなる。いいのも何もそういう流れを期待したくせに。と思いながらどうもクラスで見るみんなに頼りにされている彼と、こっちの世界で二人、あるいはクゥちゃんを含めた三人ぐらいのときの頼りない彼は違う人なんじゃ、と疑うような気持ちも出てくる。


 カッサ辺りがいるとクラスで見る姿になるんだけどね。


「行くだけなら別にいいけど」


「うーん…自分で言い出してなんだけど、やっぱり今日はいいかな、聖樹に行こう」


 ふむ、彼の中で何か思うところがあったみたいだ。


 聖樹に行くなら、実証する余裕があるかな、と倉庫に放り込まれていたあれをインベントリ内に入れる。



【勇者のゴブリン

 特殊アイテム


勇者の力が封印された玉。伝説の勇者ゴブリンの力が封印されている。



 これが使えるようになるとどうなるのかな、と少し楽しみだ。


 早速二人でルージュナに移って聖樹へと向かう。今では強い人に連れられてきた私と違って自力でルージュナまでたどり着ける人も増えてきたためこういった夜の時間は聖樹は混むようになってきた。


 そしてルージュナまで自力で来れるような人たちならば10階のボスを倒すことはできるので大抵10~20、25の間辺りが狩場になるので、私達と被る。


 そのことを念頭に置いて行動すれば、トラブルになることもあんまりないはず。


 人が少ない階層を探してそこで狩りを行うことにする。聖樹に来る途中にログインしたクゥちゃんも今向かっているところだ。


 せっかくなので【勇者の力】がどういった物か検証するのはクゥちゃんが来てからにしよう。


 意外とあっさりと人が少ない場所を見つけて、そこを中心に舞浜君がモンスターを釣りに出て行く。舞浜君が戻ってくるまでモンスターに注意しながら私は待機だ。


 舞浜君が連れてきたモンスターを狩り終わるころクゥちゃんと合流した。


 そこで次は【勇者の力】を使うことを伝える。


「じゃあ一体つれてくればいいかな? 俺が連れてくる前に使わないでよ」


 と言い残して舞浜君は近くのモンスターを釣りに行く。


「どうする? こっそり使う?」


 とクゥちゃんがいたずらっぽく提案する。


「えぇ? どうしよっか?」


 私もまんざらではないといった表情で返す。結局女二人の悪巧みは、舞浜君がモンスターを連れてくる前にひょっこり現れるモンスターがいなかったので実行することはできなかった。


「連れて来たよ」


「じゃあ、使います」


 【勇者の力】の使用条件は手に持って頭上に掲げることだそうなので、それに沿って頭上に掲げる。すると青い炎が玉から発生し、それが私、クゥちゃん、舞浜君のそれぞれの周囲に輪っか状になってまとわりつく。


「おお! なんか動きが速くなった気がする」


 舞浜君が何らかの変化を感じ取ったのか声を上げる。そして彼は感じるままに剣を振り下ろす。


「やっぱり」


 見事にその一撃でモンスターを消し去った。


「能力強化みたいだね」


 実感があるのか舞浜君は私達の方へ振り返って告げる。


「クゥちゃんの方はどう思う?」


「普段より体が軽い感じはするよ」


 と舞浜君の考えを否定する感じではなさそうだ。私? 玉を掲げっぱなしなのでよく分からない。


「じゃあ次は数を増やしてやってみよう」


「そうだね、あっ」


 舞浜君の提案に頷き【勇者の力】を掲げた状態を解除すると炎がふっと消えた。


「掲げてないとダメみたいだね…」


「でもMPは減らないんでしょ?」


 これ使ってる間私は身動きがとれないことを嘆いていると、クゥちゃんは嘆く必要があるの? といった表情で尋ねてくる。


「減ってはいないみたいだね」


「じゃあ無制限に使えるってことじゃん! すっごい便利だね、それ!」


 これはいい物のように思えるけど、なんだろう…サポート役としての能力を手に入れていってる気がするのは。元々後衛とか中衛だからプレイの幅が広がると考えればいいのかな。


「じゃあ行ってくるよ」


 と言い残して舞浜君はモンスターを釣りに行く旅に出てしまった。


 今度連れてきたのは5体、舞浜君が全員を受け止めているうちに私は【勇者の力】を掲げる。そしたら同じようなエフェクトが出てきて、今度はクゥちゃんも能力の上昇を実感するように戦闘に参加。いつもよりも軽いフットワークだった。


 その後【勇者の力】をインベントリに入れると表記が変わっていた。



【勇者の(ゴブリン)

特殊アイテム


効果:鼓舞(味方の能力上昇)

   ※パーティ時のみ使用可


勇者ゴブリンの力を封印した玉。勇者ゴブリンの鼓舞は多くの戦士を奮い立たせた。



 勇者関係はゲームの世界の歴史と関わってきそうな感じだ。


 他にも発動条件としては私がターゲットになっていないことや、舞浜君かクゥちゃんのどちらかがターゲットになっていることもあるみたいで、何度か発動に失敗した。


 あと、一度発動したら【勇者の力】を掲げ続けている限り発動したままのようだ。持ちかえることも許されないので現実なら右腕が痛いことになりそうだ。


「結構癖があるね」


「うん、これを掲げてる間戦いづらいから舞浜君、ちゃんと守ってね」


「任せてよ」


 舞浜君が笑顔を向ける。よし、舞浜君は肉壁としてのランクが上がった。


「ねぇナギちゃん、今黒いこと考えてなかった?」


 クゥちゃんが訝しげな眼を向ける。


「なぁーんにも考えてないよぉ?」


「そういう時って大体ナギちゃん考えてるよね!?」


「…話の流れからして俺? 俺のこと?」


 能力アップの恩恵をほとんど受けられない私からのささやかな反撃だ。【勇者の力】を左手で持って、右手でブーメランを投げるということを思いつかなかったなんて言えない。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン初心者】Lv22【STR増加】Lv43【ATK上昇】Lv38【SPD増加】Lv41【言語学】Lv41【遠目】L15【体術】Lv33【二刀流】Lv49【幸運】Lv50【スーパーアイドル】Lv8


控え

【水泳】Lv28


 SP26


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主

明日更新できないかもしれません。

ご了承ください。

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