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ナギ記  作者: 竜顔
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勇者デュラハーン

 念のために持ちっぱなしにしていたリーステスの剣の制限時間はすでに過ぎてしまい鞘に戻っている。再び使えるようになるには1時間近くかかる。それまでの間待機することも考えたけれど、それをしていると私の夜ご飯が抜きになってしまうのでみんながらいるから、と自分に言い聞かせてクゥちゃんの休憩が終わってすぐに壁に描かれた文様へと踏み出す。


「これ、どうしたらいいんだ?」


「普通に考えたら触れればいいんじゃないですかね?」


 文様を眺めながらジェットさんが呟くとゆうくんが答える。男同士ということもあって二人の仲は問題なさそうだ。


「そうなんだろうけど、触れて移った瞬間戦闘ってなると嫌だから…頼んだ」


「え! そんなこと言わないで下さいよ! 触りづらいじゃないですか」


 うん、仲が良さそうだ。


「みんなで一斉に触れればいいんじゃない?」


 こういうときに率先して意見を言うクゥちゃんが二人のやり取りに割って入る。


「横一列に並ぶのはできそうにないですし、僕とジェットさんは後ろに並んで前は女性四人で行きましょう」


 とゆうくんが言うと阿吽の呼吸でミカちゃんが彼の前に立つ。その横にクゥちゃん、私、シンセさんと右から順に並び、


「そして俺はナギちゃんの後ろから…いったぁ!」


 背後から聞こえるジェットさんの苦痛の叫び。下を向くと白い脚が見えたのでおそらくシンセさんのペットの「クゥちゃん」がジェットさんにかみついているのだろう。私の左腕はシンセさんに取られてしまっている。


「じゃあ一斉にいきますよ」


 とゆうくんの声掛けで全員が右手を前に出す。


「3、2、1、ハイ」


 の合図で全員文様に触れる。一瞬の浮遊感に襲われて別の部屋に訪れる。


「うわ!」


「キャァ!」


「ん?」


「いったぁぁぁぁぁあああ!」


 一瞬人影を確認できたぐらいにゆうくんとミカちゃんの叫び声が聞こえたと思うと視界が真っ暗になる。それに疑問符を浮かべているとジェットさんの叫び声が…。私の目をふさいでいるのはジェットさんの手……らしい。


「騒がしい連中…のようだ」


 聞きなれないこれが聞こえる。しかしその姿を確認することができない。


「ナギちゃん、よく聞いて」


 とジェットさんがおもむろに私の身体を回転させて、同時に目をふさいでいた手をのける。ジェットさんの顔がすぐ目の前にあった。


「これから見せる光景にはちょっとショッキングなことがあるかもしれない」


 と右肩にシンセさんのペットの方の「クゥちゃん」が食らいついたままのジェットさんが語る。こちらもそこそこショッキングな光景に思うけれど口にはしない。ふと横を見るとミカちゃんはゆうくんの胸に顔をうずめている。ゆうくん自身はなんとか耐えられたのか、顔をあげて相手がいると思われる方向を見ている。


 シンセさんはこちらに怖い微笑みを向けていて、クゥちゃん(本家)は納得がいかないけどジェットさんの行動の意味を理解して見守る方針のようだ。


 ジェットさんの真剣な目にホレイーズの時のゾンビが脳裏によみがえった私は顔をひきつらせながら恐る恐るこの部屋の主がいる方向に首を回す。


 そこには一人の鎧が立っていた。鎧甲冑に、縦幅は地面につけると膝上あたりまでで横幅は肩幅くらいの大きさの五角形の盾を左手で持ち、右手は普通の片手で扱えるサイズの剣。ややボロい紫に近いマントがその後ろで靡いている。


 そして…その鎧には首から先がなかった。


「……おお」


 私は何とも言えない声を上げる。これぐらいならまだゲームのモンスターだからと割り切れる。


「だい、じょうぶ?」


「あ、はい」


 ジェットさんから声がかかったので振り向いて頷く。心配そうにしていたクゥちゃん達もホッと胸をなでおろす。…そんなに免疫がないと思われたのか、と少しショックを受ける。


「…まぁ落ち着いたら言ってくれ」


 鎧はどこか悲しそうな雰囲気で告げる。未だミカちゃんは再起不能状態でゆうくんお胸に顔をうずめている。彼女は私以上にホラー系への免疫がない。私以上に! ここ大事だから。


 改めてゆっくり部屋を観察する。広さはジョーカーと対峙した時よりやや狭いけれどそれ以外特に変わったところは見受けられない。


「ふうぅ、すいません、落ち着いてきました、また見てみます……ヒィッ!」


 一旦落ち着いたらしいミカちゃんは鎧の方に顔を向けると再び顔をひきつらせて後ろに下がる。


「…まさか! そうやって拙者の精神へダメージを与える算段か!?」


 鎧はハッとしたような様子を見せるも私達の同乗の表情を見て違うことに気づいたらしい。誰だって自分の姿を見てこんな反応をされては傷つくだろう。


「大丈夫です、もう、大丈夫です!」


 ミカちゃんは力強く宣言する。


「そうよ、ゴーレムみたいなものと思ってみれば平気でしょ?」


「「「あ~、確かに」」」


「わぁ! 本当です!」


 シンセさんの言葉に私とゆうくんとクゥちゃんが納得する。ミカちゃんも同じようで先ほどの表情が嘘のように明るくなる。


「本当に…作戦ではないのだな?」


 なぜか鎧には哀愁が漂っていた。


「よし、こっちは準備万端だ」


「そうか、ではまずは名乗るとしよう」


 とジェットさんの言葉の後、鎧は一歩前に踏み出て剣を頭上…? に掲げる。


「拙者の名はデュラハーン! 勇者を名乗ることを許されし者なり! 一人の勇者として、汝らの腕前を見せてもらおう! いざ、尋常に勝負!」


 と高らかに宣言すると一気に走りこんでくる。それに反応してゆうくんも盾を構えて駆け出す。シンセさんはすぐさま楽器を構えて演奏を開始する。


「コリージョン!」


 デュラハーンが叫んだ直後に二人の盾と盾がぶつかる。すると衝撃波が生じて横から攻撃に入ろうとしていたクゥちゃんズは吹き飛ばされ、ゆうくんもわずかに後退する。


「とお!」


 と叫ぶとともに前方宙返りをしながらデュラハーンがゆうくんを飛び越えて、その背後にいた私達の方へと剣を振り下ろす。


 どうやら標的は私だったみたいだけど後ろに下がることで回避することができた。


 すぐさまジェットさんが【一閃】を発動するも、デュラハーンは盾で防ぎ、何事もなかったかのようにミカちゃんに向かって走り出していた。


「むむ」


 ミカちゃんにたどり着く直前でシンセさんのミニゴーレムが間に入ってミカちゃんを守ろうとする。――だけど剣を薙ぐだけでミニゴーレムを弾き飛ばしミカちゃんに猛進する。


 一瞬でも動きを止められれば、と思って私はホムラのおさがりのマキシマムEXを投げつけた。


 今まさに剣を振り上げたところ、その状態のまま盾をこちらに右脇に構えるようにして私の投げた斧を防ぐ。思ったより威力があったのかその衝撃でデュラハーンの動きが一瞬止まり、その一瞬で私はデュラハーンに追いつき、やや正面にたどり着く。それと同時にミカちゃんも詠唱を終えて動き始める。


 しかしミカちゃんがデュラハーンの攻撃から逃れるのに間に合いそうにはないので、効くのか不安があるけれど私は誘惑を発動する。


「ぬぉ!」


 ピタッとデュラハーンの動きが止まったのでどうやら効いたようだ。っとほっとしてられない。


「あ、メンテナンスで効果時間が縮んでるみたいなので注意してください」


「分かりました」


「了解!」


 私の言葉に返事をしたのはミカちゃんとジェットさんの二人だけれど多分全員に伝わっているだろう。


 すぐにデュラハーンの後ろに回り込んで体勢を立て直す――この時に斧も回収する――。立て直したところでクゥちゃん(ペット)が全身に何かのオーラを纏って体当たりを放つ。


 デュラハーンはその衝撃で地面にキスしそうなところから前転して立ち上がり、それどころかその瞬間を狙ったジェットさんの紙飛行機を弾き落してこちらに振り向く。


 デュラハーンが再び駆け出すのとほとんど同時にシンセさんが演奏する曲が変わる。何らかの違和感を彼女は感じ取ったのかもしれない。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン初心者】Lv21【STR増加】Lv43【ATK上昇】Lv37【SPD増加】Lv41【言語学】Lv41【遠目】L15【体術】Lv33【二刀流】Lv49【幸運】Lv50【スーパーアイドル】Lv8


控え

【水泳】Lv28


 SP26


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主

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