観戦
先日100万PV突破いたしました。
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大画面で映っているゆうくんとその相手黒士無双――やっと思い出した――は互角に渡り合っている。黒士無双は武士風の鎧甲冑という外見に違わず武器は刀を使用している。その一撃一撃はするどくて猛々しいけれど、その猛攻をゆうくんは防ぎ、隙を見て攻撃に転じるけれど有効だとはならずお互いに決め手を欠いている印象だ。
デス・サントラスはゴブリン王国開放の時とは違いシンプルな大きい鎌を使っている。時に両手で構え、時に片手で振る。音声は聞こえないようになっているけれどおそらく何らかの奇声をあげながら攻撃しているに違いない。
しかし、リーチと言う面でジェットさんにとって有利に働いていて、クールタイム中は回避、クールタイム明けにアーツ連発。という感じでジデス・サントラスはジェットさんに攻撃を当てられていない。ジェットさんが勝つのも時間の問題だろう。
ただ一つ気になる点と言えばジェットさんの顔がいやらしい表情になっていることだ。ニヤケ顔をこらえようとして却って気持ち悪い感じになるあの表情で、あれはデス・サントラスへの挑発のつもりなのだろうか。
ジョーカーにしては珍しく仮面をつけていないシンセさんの相手は槍使いだ。シンセさんは前衛を使役しているモンスター2匹で固めて自身は後衛としてサポートに回っている。そういった意味では有利に思えるけど相手の動きや攻撃の威力を見るに他のジョーカーよりも強い印象を受ける。それが人数(?)補正によるものなのか元からジョーカーの中でも強いのかはわからないけど。
それもあって戦況は拮抗しているように見受けられる。もちろんシンセさんが使役しているモンスター2匹のうち片方はあの「クゥちゃん」だ。
そして本家のクゥちゃんの相手はタイガー○スクを彷彿とさせるレスラーの恰好をしているだけあって武器はない、というよりも【拳】の派生先の一つである【素手】だろう。スピードはそこそこと言った感じだけど一撃の威力は凄まじく、いわば一撃必殺級だ。
クゥちゃんは機敏な動きでヒット&アウェイを繰り返していて見た感じ余裕がありそうだけど、少しでもミスをすればそれだけで終わってしまいそうな、ギリギリな戦いをしているようにも見える。
ここも気になるのは何か言葉を交わしながら戦っているらしいことだ。音声が聞こえないので何を話しているのかまではわからないけど、案外楽しそうだ。余計に内容が気になる。
色々とバリエーションに富んだジョーカーの面々を見ながらふとミカちゃんが戦った相手が気になった。
「そう言えばミカちゃんはどんな人(?)が相手だったの?」
「ぇぇ?」
私の問いかけにミカちゃんは答えづらそうにしている。負けたことを気にしている…とは思えないのでよっぽどの変人にでも遭遇したのだろうか。
「なんというか…女王様でした」
とどこか暗い表情になるミカちゃんの言葉を受けてパッとボンテージに身を包んで鞭を手に持った怖い女性の姿が頭に浮かぶ。
「ボンテージに、武器も…鞭でしたし」
想像通りなようだ。どんな戦闘で敗北したかは聞くべきじゃないと思うのでそっとしておく。
「マジむかつくんですよあの女!」
ミカちゃんがヒステリックになってしまった。私の方を振り返り色々と恨みつらみをべらべらと述べていく。私はオロオロしながらそれを聞いていた。というかたった一度の戦いでそこまで不快な気持ちにさせるなんて、ある意味その「女王様」を尊敬してしまったのは秘密。
「もう! ナギさんちゃんと聞いてくださいよ! ってあんな女のことはいいですよ、ゆうくんがんばってー! あ、ジェットさん終わったみたいですよ…ジェットさんって普段あんな表情なんですか?」
とミカちゃんが画面に映るゆうくんの応援に切り替える頃ジェットさんの戦闘が終わる。
「……普段からあんな表情じゃないと思うけど………多分」
「所々に変な間がありましたね」
と突っ込まれるけど実際ジェットさんに会うのは久しぶりだから、もしかしたら受験勉強のせいでジェットさんがおかしくなってしまったのかもしれないし。エイローで一度変な方向に壊れた前科があるので自信が持てない。
「んお? …ナギちゃーん!」
この部屋に送られてきたジェットさんはあの何とも言えない気持ち悪い表情からさわやかな笑顔に切り替わって私の名前を嬉しそうに呼ぶ。直前のジェットさんの表情を知らなければ労いの言葉をかけるくらいはしたと思うけど――
「いや、ナギちゃん! 足を運ぶ方向逆だよ! 後ろに足出しちゃってるよ!」
「おかしいですね、ジェットさんに近づこうとするとなぜか勝手に…」
足が私の身体より後ろの方向に動くんです。立ち尽くすジェットさんとの距離が徐々に離れていく。
「痛っ」
壁にぶつかった。
「フフフ、ナギちゃん…もう逃げられないよ!」
一歩一歩踏みしめるようにジェットさんが近づいてくる。目がぎらついている。あっなんか怖い。助けを求めるべくミカちゃんの方に顔を向けるとニコッと微笑みを向けてくれる。
――っておおおい! 助けてぇー!
このままでは何かよからぬことがありそうだ、と原因の解明をして注意をそらすことにした。
「そ、そういえばジェットさん戦ってるとき気持ち悪い顔でニヤついてましたけど何かあったんですか? 頭」
「え? どうしてそれが? あいつにも気持ち悪い顔浮かべてどうかしたのか聞かれたんだけど…」
ど、どうやら窮地は脱した。ジェットさんは私がジェットさんの情報を持っていることに驚いていた。
「ほら、あれです」
私相手に次いで本日二度目のモニターの紹介をミカちゃんが行う。ここは手助けしてくれるらしい。ジェットさんは感心しながらモニターを見ている。
「それで、二人はどうだったの?」
冷静さを取り戻したジェットさんが話を振る。それに私達はそれぞれ答える。その間もジェットさんは画面に映るみんなの様子を気にしていた。
「じゃあナギちゃんは割と早く倒したんだね」
「接近戦に持ち込もうと思ってたら運よく向こうが近づいてきてくれたので」
「ナギちゃんと…接近戦……」
画面に目を向けていたジェットさんの視線がどこか遠いところを見つめる目に変わる。それからフッと我に返った表情に戻ると
「ところでどうして彼だけ大画面になってるの?」
「かっこいい勇姿を見るためですよ! ジェットさんだってナギさんが戦ってたらこうしますよね!?」
ジェットさんの質問にミカちゃんが力強く答える。
「あ、そっか、そうだよね!」
ジェットさんは納得した。そして
「恋人の勇姿を見るためにちゃんと大画面にするなんて、君は彼女の鑑だね!」
と褒めちぎる。
「えぇ~? それほどでもぉ~」
とミカちゃんは頭を掻く。その態度になぜか少しだけイラッとする。ところで
「あの、ジェットさん」
「何だいナギちゃん!?」
私が声をかけるとジェットさんはさわやかな笑顔を張り付けて素早く振り返って私に顔を向ける。
「私の質問なかったことにしようとしてません?」
「ええ? シテナイデスヨ」
私の問いにジェットさんは目を泳がせる。別にそれならそれでいいと思う反面、ジェットさんが話をそらそうとするところを見ると嫌な予感がするので聞かずにはいられない。いや、多分聞かない方がいいんだろうけど。
ジェットさんの顔を正面から見つめているとジェットさんは降参、とばかりに息を吐く
「そんなかわいい顔で睨み付けられたら答えないわけにはいかないじゃないか…、以前デス・サントラスと戦った時に押し倒して跨るナギちゃんを思い出していただけだよ」
あ、やっぱり嫌な予感は的中した。
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NAME:ナギ
【ブーメラン初心者】Lv21【STR増加】Lv43【ATK上昇】Lv37【SPD増加】Lv41【言語学】Lv41【遠目】L15【体術】Lv33【二刀流】Lv49【幸運】Lv50【スーパーアイドル】Lv8
控え
【水泳】Lv28
SP26
称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主