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ナギ記  作者: 竜顔
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決闘

 老紳士――執事のオルデさんは数歩進めたところで右に曲がり階段の方へと向かう。


「歩きながらですがご説明させていただきます、こちらの転移ポータルは各ジョーカーの部屋へと繋がっております、公爵様のお許しを得た場合にのみここから自身の相手をお選びいただくことができますが、今回はその許可が下りてませんのでここからの挑戦はできません」


 と階段を上る前に横並びになっている扉の前の転移ポータルの説明をしてくれる。残念ながらあの扉は開けても壁になっていて中には入れないらしい。扉に描かれている絵には鬼のような顔やピエロの顔があり、ジョーカーの面々がつけている仮面の絵が描かれていると考えることができ、その相手のもとに繋がっているんだろう。


「じゃあ、俺達の相手はそちらが選ぶってことか?」


「はい、組み合わせはこちらで組ませていただきます、では、二階へ」


 とオルデさんはジェットさんの質問に答えて階段を上って行く。


 階段の先には大きな両開きの扉があるだけで他には何もなく、オルデさんはどうやって移動しているんだろうか、と気になった。


「中にお入りください」


 と言って両開きの扉を開けてくれる。中は広間になっていて、大きな転移ポータルと部屋の中心の床に描かれ、右の壁際には紫色の甲冑が並べて飾られていて、左側は黒色の甲冑が並べられていた。


 奥には小さな扉があり、オルデさんによるとあそこから向こう側がカッスール公爵家に仕える人間すべてのプライベートルームになっているらしい。


「大変お待たせいたしました今回の決闘についてご説明させていただきます、先ほども言いましたように組み合わせの方はこちらで決めさせていただきますが、今回は6人での参加となりますので各一人ずつ一人のジョーカーの方と戦っていただくことになります、特別なギミックはございませんので普段通り戦っていただいて構いません、また、決闘でのアイテムの使用はご自由ですが消費したアイテムの負担は一切こちらは負いませんのでご注意ください」


 部屋に着くとオルデさんが説明を始める。


「今回は挑戦状を受けてのご来館でございますのでジョーカーへの勝利、未勝利に関わらず公爵様の御眼鏡に適えば褒美が出されることになっておりますが、勝利者と未勝利者によって多少内容が変わりますので是非勝利できるようにご尽力ください、また敗戦後にデスペナルティを受けることも本館から別の場所に移されることはございませんのでご安心ください」


 とオルデさんは淡々と続ける。


「そして、挑戦状を受けてご来館いただいた皆様方には特別にジョーカーとの一戦の後、とある方の部屋につないであります、こちらは勝利者も未勝利者も関係ない全員参加となります」


 と言って頭を下げた後一泊を置き、


「それではご健闘を」


 と私達の前に立ちふさがるかのように立っていたオルデさんが道を開ける。


「がんばろう!」


「一対一はきつい気がしますけどぉー」


 やる気を漲らせるクゥちゃんとは対照的に基本ヒーラーとして動いているミカちゃんはちょっと不安そうだ。


「まぁ負けてもいいみたいだし気楽に」


「ナギちゃん、俺は勝つから! 勝ったら是「ナギちゃんも頑張ってねぇ」」


 ジェットさんの言葉の終わりにシンセさんが被せて結局ジェットさんが何を言ったのか聞こえなかった。


「そろそろ行った方がいいんじゃないですかね?」


 と言いながらゆうくんが転移ポータルの方へと踏み出す。


「じゃあ行こう…の前に頑張るぞぉ!」


「「「「「おー!」」」」


 とよく分からないやり取りをしてみんなでタイミングを合わせて転移ポータルを踏む。


 ふっとした浮遊感が終わると体育館ぐらいの広さがある殺風景な大きな部屋にいた。床はクリーム色のタイルに、壁も白色と、外の紫や黒の不気味さとは真逆の雰囲気を醸し出す部屋だった。


「ふむ、そなたが来られたか…」


 殺風景な空間に響く凛とした男性の声。真っ白な部屋の中で異質な真っ黒な存在が一つ。黒いレザースーツにレザーブーツ、手元は真っ白な手袋で覆い、首から上は黒の全身タイツを着ているような感じで髪型なんかの特徴が全く分からない。そして肝心の顔には真っ白で塗られ人の顔がかたどられてはいるもののそこからは何の感情も感じない表情の仮面がつけられていた。


「まずは自己紹介を…、わたくしはジョーカーが一人、仮面のキリング・マスロー」


 顔に付けている仮面の表情のように全く感情を感じさせない声色で淡々と自己紹介をする男。


 こんな状況の中で自分も自己紹介するべきなのだろうか、とかのんきに考えていた時だった。


 ――!!


 自分でも何があったかわからないけど咄嗟に顔をそらして「何か」を避ける。カッという音とともに壁にダガーが突き刺さっていた。全くと言っていいほど何の動作も感じさせないうちにダガーを投げてきたのだ。


「ふむ、見切られたか」


 シュシュシュ、左手を仮面のあごの部分に当てながら小さな動きで連続して何かを投げてくる。そのスピードに何とか目を追いつかせるので精一杯で一本が体に刺さる。


「うぐぅ」


 ダメージは2割ぐらいのダメージだけどあのスピードでは一瞬でも隙を見せたら気づかないうちに0になっていることだろう。


「目がいいようで…」


 一言ずつぽつぽつと語るマスロー。その最中もほとんど体を動かすそぶりもなくダガーを投げてくる。


 そういったことを何度か繰り返す。ひとまず分かったことはダガーを一本だけ投げてくるときはいつ投げたかすら気づかないスピードで投げてきて、投げるダガーの本数が増えるほど動き続ける時間が長くなるせいなのか、動きも大きくなりタイミングもつかめやすくなる。


「ふむ、よく集中しているようで…」


 マスローが右手を顎に当てる…ダガーは投げてない? と目を凝らしてみても体を左右に動かしてみても何も起こらない。


「では…」


 と何かいい手でも考えたのか顎から右手が離れる。


「――つぅ」


 おなかのあたりに赤いバラが刺さっていた。しかも継続ダメージを与えるようで地味にHPが削られている。しかしそれにばかり気を取られていると他の攻撃を受けてしまうかもしれないのでマスローを凝視して目を離さない。彼は再び顎に右手を当てている。


「よいのですか?」


 と両手を広げて問いかけてく――


「うぅ」


 また気が付けば今度は青いバラが刺さっていた、こちらはMPを削っていく。そしてマスローが再び顎に手を当てるので、その隙にバラを取り除――


「え?」


 気が付けば目の前にダガーがあった。反応できずにそのまま眉間に突き刺さる。


「いったぁ!」


 もちろん痛覚は相当軽減されているのでせいぜいデコピンされたくらいの痛みしか感じない…デコピンがうまい人並の痛さだけど。


 さっきは顎に手を当てているときには投げてこなかったはずなのに。そういえば今は「左手」を顎に当ててた。最初も左手を顎に当ててるときはダガーを投げてきていた。右手で投げているので右手を顎に当てた時は投げられないのかもしれない。


 そうと分かれば右手を顎に当ててくれるのを待つわけだけど、もちろんわざとやっていたはずで、私がそのからくりに気づいたのにわざわざやるわけもなく連続でダガーを投げてくる。HPは残り2割を切るぐらいギリギリなのに全く回復する隙がない。


 せめて誘惑の範囲内に入れればいいんだけど全く動きを見せずに投げてくるのでこの状況では距離を取らざるを得ず誘惑が届くか微妙な位置になり、誘惑を使っている最中に攻撃を受けるか否か、と誘惑が届くか否か、とギャンブル要素が強くなってしまっている。


 なすすべなく、HPだけが削られていく。



――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン初心者】Lv21【STR増加】Lv42【ATK上昇】Lv36【SPD増加】Lv40【言語学】Lv41【遠目】L12【体術】Lv32【二刀流】Lv49【幸運】Lv50【スーパーアイドル】Lv8


控え

【水泳】Lv28


 SP26


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主

クゥ「虎! 覆面の虎! …これはまさか!」


覆面虎男「ガッハッハ! 俺はジョーカーの一人、覆面の…レスラー・タイガーだ!」


クゥ「パクリだ! 絶対にパクリだ!」


レスラー・タイガー「ガッハッハ! 言うのぉ! だが身も心も虎の俺だからこそ被れるってもんよ!」


クゥ「頭だけ虎だからって虎になれるわけじゃないよ、ボクの方が虎に近いよ!」


レスラー・タイガー「ガッハッハ! その雰囲気……話が分かる奴が来たみたいだな、だが同士よ、お前さんはどう見たってただのちんちくりんじゃねぇか?」


クゥ「ボクの爪は虎の爪にも牙にもなるんだよ!」


レスラー・タイガー「ガッハッハ! いい目をしてやがる、だがなぁ、真の野生はそんな道具なんて使わず素手で戦うもんよ!」

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