クゥちゃんを連れて
午前中にエイローにたどり着けた私達はそのまま午後からの集合時間を決めて一旦ログアウトした。
昼食を終えた後、諸々を済ませて集合時間に合わせてログインする。クゥちゃんはすでにログインしていて待ってくれていた。
「お待たせ」
「ううん、今来たところ」
と将来のデートの練習を終えて行動を始める。
エイローの外観はイベントの時からさほど変化は見受けられなかった。エイローの門は東西にあり、私達が入ってきた西門からの景色はイベントの時に見た光景と変わらなかった。
唯一のはっきりした違いはイベントの時はこの西側の門しかなかったのが東側にも門がある、ということぐらいだろうか。見慣れた景色に以前自分が泊まっていた(?)宿。そしてホテル「ヘルオアヘブン」。どれも記憶にある見た目のままだった。
「ところで、どこ行く?」
特に当てもなく街を見て回っていた私はクゥちゃんに尋ねる。クゥちゃんの視線が鋭くなる。
「え? ホテ、ル?」
あ、クゥちゃんは目的を持って動いていたみたいだ。
「イベントの時は頑張ってホテルまではメンバーズカード手に入れてるから…上のランクのカードを持ってる人と一緒ならどんどん先に行けるんだよね?」
とクゥちゃんは続ける。つまりは私に案内してほしいということだろう。エイローイベントではバニー・バーンによって最高ランク「バニードール」のメンバーズカードを私は持っている。イベントの時もメルサさんを連れまわしたし。その時の失敗のことは忘れよう。
エイローが実装されてからメンバーズカード関連で頑張った人は多いようで、バニードールのメンバーズカードを持っている人も増え始めている。そして聞いた話によるとバニードールの店内で定期的に公式主催のイベントも行われているようだ。
そこでの景品は不思議なスキルが取得できるアイテムが多いんだとか。その中には【魅力】を取得させるあのアイテムの下位互換に当たる物もあるみたいだ。なので【魅力】スキルを所持している人も増えているらしい。大抵は【小悪魔】の方に派生させる人が多いとか。
クゥちゃんとともにホテルに入る。この辺は慣れたものでささっと受付を済ませて中に入って行く。ホテルの内装もあんまり変わってはいないみたいだ。そこからカジノへと向かう。
カジノでもあっさりと紹介を済ませて中に入る。カジノの景品は曜日によって変わるらしく、その時々で顔ぶれが変わるとのこと。だけど近頃はギルドお抱えのギャンブラーなど、ギャンブルを専門にするプレイヤーも出始めたらしい。
カジノで遊ぶにはお金をチップやコインに換える必要がある。一日に換えられる枚数には限度があり、チップやコインの枚数で景品と交換するためお金の力で景品ゲットをする場合、景品によっては足しげくカジノに通う必要がある。
なのでギルドでお金やコインやチップを援助する代わりにギルドメンバーが必要としている景品をゲットしてもらう、と言う関係も出来上がっている。だけどこれを個人でやると「詐欺だ!」「違う!」のトラブルになることが多いそうなので注意。
カジノに知り合いの姿は見受けられなかったのでそのまま「エンジェルプレイス」へと向かう。丁度夜の時間帯が来ているぐらいだろうから「シャングリラナイト」も楽しめるはずだ。
カジノから通路へと出て、分岐路を曲がって受付にクゥちゃんの紹介を済ませて、階段を上がっていく。
階段を上った先、目の前に映るリラックススペース、それを見渡すように佇む一人の天使。
「あっ」
「ん?」
思わず声を上げた私の方を、天使が振り向く。
「あ、ひっさしぶりー! この世に舞い降りた天使、エンジェル・モーリンだよ♡」
その天使はエンジェル・モーリンだった。確かに危険性はあったけど会いたくなかった人物だ。
「誰?」
クゥちゃんは首を傾げながら私を見つめている。その目は「またNPCの知り合い?」と言わんばかりだけどクゥちゃん、この人は中身がある運営側の人間だよ。
「聞いてなかったの? この世に舞い降りた天使、エンジェル・モーリンだよ♡」
クゥちゃんの顔が引きつっている。私は呆れている。
とりあえずうるさい残念な天使は放置して、いったい何者なのかクゥちゃんに教える。クゥちゃんはより一層訝し気にエンジェル・モーリンを見つめていた。うん、運営の人間だよと言われても素直に信用できるような人柄じゃない。
「まぁまぁ、その辺はおいておいて、今なら『シャングリラナイト』に行けるよー、夜にしか行けない絶景が見える空中大浴場だよ」
とニコニコの笑顔でエンジェル・モーリンは話す。
「どうする?」
「私は一度行ったことがあるし別にどうでもいいけど」
いまいち信用ならない、と言う態度でエンジェル・モーリンを見た後、クゥちゃんが私に尋ねてくる。シャングリラナイトは水着着用不可だ。湯気で隠されると言ってもクゥちゃんと裸の付き合いはちょっと恥ずかしいので入りたくない、と言う気持ちもある。クゥちゃんが入いたいなら私は待ってればいいし。
「じゃあ、バニードールお願いします」
クゥちゃんはシャングリラナイトに入ることを選ばなかった。
「わかった」
と言ってクゥちゃんと二人でエンジェルプレイスを後にしようとすると、腕を掴まれる。
「「え?」」
ものすごい力で私達の腕をつかんだエンジェル・モーリンが不気味な笑顔を私達に向ける。多分彼女の意思次第では私達が抵抗しようともシャングリラナイトに連れて行くことができるだろう、と思えるほど彼女には――ステータス的な――力強さを感じた。
「次の機会にはぜひ! ご利用ください♪」
と戸惑う私達にエンジェル・モーリンは告げた。背筋に冷たい物が走り体が震える。
「「は、はい」」
クゥちゃんと二人で声を震わせながら頷く。
すると腕は解放され、私達はそそくさと階段を下りて行った。
彼女は敵に回したらいけない相手であることを深く理解した私達はもし次来るときがあるならば彼女がいない時にしよう、とお互いに誓い合った。
そしてバニードールへ、バニードールは特に何もなくゆったりとした音楽が流れていて大人な雰囲気を醸し出していた。バニー・バーンの姿はなく、店員のNPCにそれとなく尋ねてみたら今日はいない、とのこと。
それがこの世界に今はいない、なのか今は店にいない、と言う意味なのかは分からないけどあんなことがあった後なのでものすごく安らかな気持ちでクゥちゃんとの会話が弾んだ。
しばらく話し込んで店を出た後、クゥちゃんはなにやらやるべきことがあるとかでログアウトしていった。十分に遊んだ私もクゥちゃんがログアウトした後少しエイローを歩いて回り、ログアウトした。
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NAME:ナギ
【ブーメラン初心者】Lv21【STR増加】Lv42【ATK上昇】Lv36【SPD増加】Lv40【言語学】Lv41【遠目】L12【体術】Lv32【二刀流】Lv49【幸運】Lv50【スーパーアイドル】Lv8
控え
【水泳】Lv28
SP26
称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主




