表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ナギ記  作者: 竜顔
186/276

エイロー再び

 エルフの里に到着した翌日は時間の都合で軽く散策するだけで終わった。こういうことがあると自分で昼夜を入れ替えられればいいのに、と歯がゆく思ってしまう。


 その翌日。土曜日。本日ようやくエルフの里からエイローへと向かう。


「今の時間からなら昼前…遅くても昼を少し過ぎるくらいかな」


 クゥちゃんが時間の予測を立てる。


「じゃあ、よろしくお願いします」


「は~い」


 私が頭を下げると、エルフの女性が軽く返事をする。この女性はエルフの里まで案内してくれた女性の知り合いで、今回世界樹の森のエイロー側の出口まで送ってくれることになっている。


「出発するわよぉ~」


 ブロンドのウェーブのかかった髪と、スレンダーな体型がほとんどなエルフにしては珍しく豊かな胸にエルフらしい細いウエスト、そこから下へ行くと再びエルフらしくないふくらみを持つヒップ、とグラマーな体型をしている。


 前日の里の散策の時も長身痩躯の多いエルフの中でがっしりとした体格の男性がいたり、と男女関わらず例外はいるみたいだ。


 準備がばっちりなことを再確認して出発する。


「危ない!」


 里を出た瞬間エルフの女性が叫ぶ。クゥちゃんはそれが何を意味するか気づいたようで瞬時にステップして距離を取る。私は反応が遅れて――


「クシュ!」


 目の前に緑が叩きつけられると同時に目の前が真っ赤に染まる。


 ドガアアアァァァン


「ナギちゃん!」


 ボンバートレントのくしゃみだった……。その頭が地面に叩きつけられることによって発生する爆発に巻き込まれた私は見事に吹き飛ばされて宙を舞い、地面に叩きつけられた後転がって行った。


「大丈夫! …みたいですねぇ~」


 慌てて駆け寄ってきたエルフの女性はホッと一息ついてほんわかした雰囲気を再び醸し出す。大丈夫ってHPの8割消えてるんですけど…いや、死に戻りしてないので大丈夫なのかもしれませんけど、でも、あんまりじゃないですかね。


 エルフの女性の態度にどこか納得がいかない私はせめてもの反抗にキャラを作ってる認定はさせてもらう。


 クゥちゃんが駆け寄ってきた後、エルフの女性の回復魔法で全快する。


「ごめんなさいねぇ~、こんなところにボンバートレントがいるなんて思わなくてぇ~、一応声かけましたしぃ~」


 と女性は微塵も――あくまで個人の見解です――反省を感じさせない口調で謝ってくる。色々思うところはあるけれど「危ない!」の叫び声は本気だったのでとやかく言うことはしない。


「まぁでもぉ~、頭が直撃しなくてよかったですねぇ~」


 とエルフの女性は続ける。地面にぶつける時より爆発範囲は狭くなるけど頭が直撃すると本当にすごい威力をたたき出すらしい。


 エルフの女性が周囲を確認しながら先ほどのボンバートレントから距離を取って移動を再開する。


「あの、さっきはどうやってボンバートレント、しかもくしゃみするって分かったんですか?」


 クゥちゃんがエルフの女性に尋ねる。クゥちゃんならば感知系のスキルで近くにモンスターがいることは察知できていただろう、しかしその種類やましてくしゃみをするというところまでは読み取れなかったようだ。


 里を出てすぐだったためいかに自身のマップにモンスターの反応があっても咄嗟に細かな状況判断はできなくても仕方がない。


 だからこそクゥちゃんはどうやって見極めたのか気になったのだろう。


 まことしやかに流れる噂としてNPCはプレイヤーのようにスキルを取得して、その能力を発揮しているというものがある。クゥちゃんもその噂を信じている一人なのかもしれない。


「ふふふ、それは内緒ぉ~、でもエルフなら誰でもできるわよぉ~………タブン」


 エルフの女性はクゥちゃんの質問にホワンとした笑顔で答える。最後の最後が凄まじく小さい声だったのが気になるけど、エルフなら誰でもということなので…NPCから伝授してもらう系のスキルなのだろうか。


 もしかしたらエルフから教えてもらえる心得スキルと関係があるのかもしれない。聞こうか迷ったけど聞いても答えてくれそうな人でもないな、と思ってあきらめる。こちらは今度エルフの里に案内してくれたエルフのお姉さんに聞いてみよう。


 ボンバートレントのどこかで爆発を起こす轟音をBGMに世界樹の森を進んでいく。その道中にもどれが普通のトレントで、どれがボンバートレントかを言い当てていく女性にクゥちゃんも負けじと対抗して見せようとしていたけど途中から諦めたのかのどかな森の景色を眺めていた。


 クゥちゃんが対抗心を見せなくなってつまらなくなったのかエルフの女性もボンバートレントの時だけ注意をしてくるだけになったころ、ピクシーの村からエイローに向かって整備された道を見つける。


「別に道まで出なくてもいいんだけどぉ~、こっちの方が分かりやすいでしょぉ~?」


 どうやら女性なりに配慮してくれたみたいだ。


 その道を少し進んだところで森が開けて草原に出る。


「は~い、私の出番はこれまでぇ~、次里に来ることがったらエイフをよろしくねぇ~」


 と手を振りながら女性は去っていく。そして女性が「エイフ」さんということがここで明らかになった。


 気を取り直してエイローに向かって草原へと踏み出す。


 エイロー周辺の草原に出るモンスターは「ヒツジ太郎」「ヤギ次郎」「馬三郎」「キノミンエイロー」「バッファ朗」の五種。


 ヒツジとヤギは特に気にするべきこともないモンスターだ。強いて言うなら魅了系の状態異常に弱い。両方ともノンアクティブな平和主義。


 馬三郎は後ろ脚での蹴りで盾役ごと吹き飛ばしたりしてくるそこそこ厄介なモンスター。カッコつけた顔、風になびくたてがみがトレードマークで、油断すると魅了系の技を使ってくる。称号のせいで魅了系への耐性が皆無な私にとって天敵と言える。アクティブモンスターで足が速いため逃げづらい。


 エイローイベントではエイロー近くの森に出現していたキノミンエイローがここで出現。草原の所々にぽつりと佇むその名も「キノミンの木」から定期的に発生し、枝がいっぱいになると一気に地面に落ちて飛び跳ね回る。もはや擬態などしない。


 頭に当たった時の魅了効果が強められ、それより効果は弱いとはいえただの体当たりにも魅了効果が付加された。そして一匹のキノミンを攻撃すると同じキノミンの木から発生した連中が一気に押し寄せてくるので注意が必要。キノミンエイロー自体はノンアクティブになっている。


 しかしキノミンの木は射程範囲内に入ると枝に生っているキノミンエイローを投げつけてくる。そのキノミンに当たるとエンカウントして同じ木からなるキノミンが…割愛。当然当たらなければ何の問題はない。


 こんな迷惑なキノミンの木はモンスター扱いでも素材扱いでもないようで攻撃しても意味はなく、そして伐採もできない。


 最後にバッファ朗。エイローイベントのレイドボス級からただのボス級に降格。それに伴って攻撃力は削られている。牛系モンスターの特性上一方的に殴ることができるせいかHPには変化はないらしい。しかしイベントの時と違い、視線をバッファ朗に固定させるアーツを使うそうで、その効果中はバフも回復魔法もバッファ朗にかかってしまうということで、単純に弱体化されただけではないみたいだ。


 キノミンの木から何度かキノミンエイローが投げられてきたけど、クゥちゃんの感知系スキルで事前に察知し回避できるので特に困ることはなく、無事に到着した。


 欲望の町――でよかったっけ?――エイローに。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン初心者】Lv21【STR増加】Lv42【ATK上昇】Lv36【SPD増加】Lv40【言語学】Lv41【遠目】L12【体術】Lv32【二刀流】Lv49【幸運】Lv50【スーパーアイドル】Lv8


控え

【水泳】Lv28


 SP26


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主

次回は火曜日になります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ