世界樹の森
学校から帰って来て少し経って延長もなくメンテナンスが終了した。
そのおかげでメンテナンス明けに昼の時間が来るように調整され、エルフの里に行くのも問題なさそうだ。
私がログインした後しばらくしてクゥちゃんもログインしてきた。
さっさと準備を整えて村を出発する。
ピクシー村から森にある道に沿って進んでいく。精霊樹から徐々に遠ざかって行き、その分だけ周囲の木々も小さくなっていく。今回は先を急ぐために極力モンスターとの戦闘は避ける。
何故急ぐのかというとエルフの里は道から外れた場所にあるため案内役がいてもそんなにすぐに着くわけではないからだ。それに今回は場所をよく知らない二人での移動なので余計に時間がかかるだろう。エイローに行ったことがある舞浜君でもいれば案内役にできただろうに、PCにガタが来たとかでしばらくログインできないみたいだ。まぁ、こういう時に限っていない役立たずだ。
モンスターとの避けられない戦闘をこなしながら、ついに精霊樹の森を抜けて世界樹の森に入る。
世界樹とは高さにおいては精霊樹にやや劣るけれど、その広がりようはまさしく驚異の一言。世界樹の森に入ったとわかる要因としては普通の背の木々の上にさらに緑が広がっているからだ。
世界樹の森とは、世界樹の葉が覆う範囲にある森のことを指す。そのことを考えると、ブライトさんが関わるクエストでしか入手できないとされる【世界樹の葉】や、ホマレに会ったりしてやっと手に入る【世界樹の枝】がこの森のあちこち転がっていて大してレアな物なんかじゃないんじゃ…と思えてくる。
元々【世界樹の葉】はブライトさんの関わるクエストを受注した時に誰でも受け取れるから大して希少じゃないのかもしれないけど。
世界樹の森に出現するモンスターは「キノミングリーン」「ポイズンローズ」「トレント」「ホーリートレント」「ボンバートレント」「ダイアオドリ」「ショウアオドリ」「ウルフストーカー」「夜迷い人」「ユニコーン」「ビッグシード」という11種類。ダンジョン以外では今のところ最も出現するモンスターの種類が多いエリアだ。
基本的にこの中でアクティブモンスターなのは「キノミングリーン」と「ウルフストーカー」と「夜迷い人」だけだ。
「キノミングリーン」は、いわずもがなキノミンシリーズの緑色だ。全ての攻撃に毒が付加されているので注意が必要。青同様自爆攻撃を使ってくるので一番気を付けるべきはそれだろうか。
そしてトレントシリーズ。「トレント」は第四エリアにも出現するけどそれと違ってこちらではノンアクティブなので警戒は不要。
「ボンバートレント」は「トレント」と見た目は全く同じだけどその生態は全く違う。攻撃方法は頭突だけとシンプルだけど、地面にぶつけると爆発を起こす。ノンアクティブモンスターと油断していると時々するくしゃみの勢いで地面に頭を叩きつけ爆発を起こしてきて大ダメージを負うことになるそうだ。
「ホーリートレント」はその幹がやや白く、光輝いているようにも見える。他のトレントと違って魔法攻撃を使ってくる。夜には光源となり周囲を照らしてくれて、夜にのみ出現するモンスターが近づけないので世界樹の森にいる間に夜の時間が来たらホーリートレントのすぐ近くで待機あるいはログアウトすれば安全だそうだ。
「ポイズンローズ」は黒いバラの花が顔(?)のモンスターで、数体が手足のような蔓を絡ませてオブジェクトのような物を形成する。そこから動くことはないけど、とげには毒があるので不用意に近づくことはできない。また、一体を攻撃すると蔓を絡ませている全員で襲い掛かってくるので注意が必要だ。
「ダイアオドリ」は大きい青い鳥。木々と世界樹の葉との間の空間を飛行しているので森を歩いているだけでは遭遇することはほとんどなく、夜は見かけることはない。しかし森のどこかに彼らの巣があるらしく、そこには昼夜問わずあうことができ、また巣に侵入すると襲い掛かってくる。
「ショウアオドリ」は小さい鶏ぐらいの大きさの青い鳥。ダイアオドリとは違ってこちらの方がよく遭遇する。こちらも巣の外では昼間しか見かけず、巣に触れたりすると襲い掛かってくる。
「ウルフストーカー」は夜にのみ現れる狼型のモンスターで、昼間に遭遇するモンスターより能力は高め。ホーリートレントの周囲には近づけないらしく、やられそうになったらホーリートレントの近くで夜が明けるのを待つといいらしい。
「夜迷い人」は黒いローブに身を包んだ人型のモンスター(?)世界観的には怨霊みたいなものだそうだ。剣を使って攻撃してきて、その攻撃には毒や混乱なんかの状態異常にする攻撃があり、即死攻撃も使えるので注意が必要。ウルフストーカー同様夜のみ出現するモンスターで、ホーリートレントには近づけない。
「ユニコーン」は、エルフ(NPC)達によると出現するモンスターだそうだけど現在プレイヤーでは遭遇報告はないため情報もない。
エイローイベントでレイドボスとして登場したビッグシードもヘラクレスキングカブト同様普通のボスとして登場。純粋な攻撃力、防御力、HPは削られているけれど技のバリエーションと使える状態異常の数が増えて却って戦いづらい相手になっているらしい。
ここまで散々モンスターの説明をしてきたけれど、昼に気を付けるなら「キノミングリーン」と「ボンバートレント」のくしゃみぐらいだ。
キノミングリーンはクゥちゃんの感知で早めに判別できるけどボンバートレントは普通のトレントと見た目が同じなので不意のくしゃみがいつくるか恐怖だ。
世界樹の葉と森の木々の隙間からの優しい木漏れ日にショウアオドリと思われる鳥のさえずりやダイアオドリと思われる鳥の声。そしてそんなのどかな雰囲気をぶち壊すどこかから聞こえる爆発音。
「確かこの辺から…かな」
一度すぐ後ろで爆発音が鳴ったこと以外特に何事もなく進んでいたところ、クゥちゃんが周囲を見渡しながら確認する。何度も言うようにエルフの里は道から外れた場所にあるためどこかから本格的に森に入らなければならない。
「クゥちゃんその辺の見極めできるの?」
一応私もその辺事前にちょっとは調べたけれどよく分からなかった。説明では確か…
「ううん、でも世界樹の森の道の半分に来たなって辺りで森に入れば行けるって」
とクゥちゃんが答える。全く私の事前調査の結果と同じことを述べるとは。それでクゥちゃんは理解できたのだろうか。いや、この様子じゃあんまり理解できてないな。
「多分この変なんだけど…世界樹の葉の広がりを見る限りこっちかな」
とクゥちゃんは道から左側の森に入って行く。私もここはクゥちゃんの野生の力を信じてついていく。もし見つけられなくてもホーリートレントのそばでログアウトすれば問題ないはず。確信できないのは他の人にそのホーリートレントが狩られてしまうかもしれないから。
森に入って道なき道を歩いてしばらく。
「おわっと」
爆発音とともに大地が振動する。思わず腰を低くしてバランスを保つ。ボンバートレントが近くでくしゃみをしたらしい。ふとそれが原因で火事になったりしないんだろうか、と考えながら森を歩いていく。
『ねぇナギちゃんあれ!』
すぐ目の前を歩いていたクゥちゃんがコールで話しかけてきて、森の中を指さす。その指の先に目を向けると、きらびやかな白い光をばらまく、額に角をはやした白い馬。
ユニコーンを発見した。
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NAME:ナギ
【ブーメラン初心者】Lv20【STR増加】Lv41【ATK上昇】Lv34【SPD増加】Lv39【言語学】Lv41【遠目】L11【体術】Lv32【二刀流】Lv49【幸運】Lv50【スーパーアイドル】Lv7
控え
【水泳】Lv28
SP22
称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主




