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ナギ記  作者: 竜顔
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ピクシーの村

 学校から帰ってきてログイン――


 ピクシーの村の入り口でもあるアーチをくぐった先でログアウトしていたので、そこに降り立つ。


「あ、ナギちゃん」


 丁度そこにクゥちゃんが現れる。ほぼ同時にログインしたみたいだ。


 「村」というけれど元々巨大な精霊樹を中心に、その周囲を見上げても頂点が見えないような大きな木々が囲っていて、森林の高層ビル街に訪れたような感覚だ。


 精霊樹を囲う木々はそれぞれの間にほとんどスペースはなく村の防壁としての機能もあるみたいだ。だけど、村には基本的に村の入り口以外に結界が張られていて村を守っているらしい。


 精霊樹を含めて木々の幹に穴が開いており、そこがピクシー達の住まいになっているようだ。そして木の枝から枝をつなぐ橋が架けられていたりと木の上での生活が見えるけれど、地上にも簡単な露店が開かれたり木での生活だけがピクシーの村の生活ではないみたいだ。


 まだ昼の時間帯のようでその巨大な木々の葉の隙間から漏れる光が村の中を照らしている。


「まだ夜まで時間があるし、ちょっと狩りでもする?」


「そうだね」


 クゥちゃんの提案に乗り、村の外に出る。


 村の周囲をぐるりと回りながら狩りをしようか、と考えていたけど想像以上に範囲が大きかったので断念し、村の入り口付近で狩りを行った。


 プチマンティスやビートルナイトを数体倒したところで切り上げて、村の中に入る。


 さて、そこで村を見て回ることになった。


 どうやら精霊樹は役所にもなってるようで、そこでクエストの受注等ができるようになっている。他にも周囲の木の幹の中にはデパートのような木もあり、その近くの木々はピクシー達で言うところの高級住宅街のようだ。


 不思議なことに子供ぐらいの背丈しかないピクシー達の村なのに、出入り口や道幅などは大柄な「人」でも問題なく通れるような大きさになっていた。


 デパートや露店でピクシーと行商人のゴブリンが何かの交渉を一生懸命やっている姿はここだけでしか見られない光景で、クゥちゃんと二人でその結末をジッと見つめていた。だけど途中で気づかれてしまい、二人でごまかしながらその場を後にした。


 破壊のダンジョンが設置されている最中と言うこともあってかここを活動の拠点にしているプレイヤーは少ないみたいで、散策中にはプレイヤーの姿を見ることはなかった。だけどゴブリンの行商人もさることながら、私達と同じとされるホーマ族やエルフや獣人族なんかの姿はあり、種族に関係なくNPCたちが話し込んでる姿をよく見かけた。


 ちなみに夜の時間帯になると空中に無数の光の玉が現れて、木々の枝や、地上を照らしてくれる。何かの魔法だろうか。


「ん? あんなところにお店が」


 あらかた村を散策したところでクゥちゃんが不思議な店を見つける。不思議だというのは木の幹に穴をあけてできたお店でもなければ、地上にある露店ではなく、木の枝のところにぽつりと丸太小屋が一軒建っていたからだ。


 その丸太小屋の前に「OPEN」と書かれた看板が置かれていたのでその小屋が何かのお店であることが分かった。


「入ってみる?」


「ここまで来たら入るでしょう」


 クゥちゃんの問いかけに、もうピクシー村の散策に飽きてきていたけれど他に特にやることもないしここまで来たら一緒だと思った私は頷く。


 クゥちゃんが扉を開けて店の中に入る。


「いらっしゃいませ~」


 店の中に入ると子供の背丈と変わらないくらいのひげ面のおじさんが出迎えてくれる。もちろん普通のピクシーのおじさんだ。


 その店の中に置いてある品物は…着ぐるみだった。しかも一周年記念&ハロウィンイベントの時の着ぐるみと違って一応普通の装備としての着ぐるみだった。


「当店は着ぐるみ専門となっております、とはいえ他のお店ではまずお目にかからない品物でしょう、何故なら仮装用の物なのではなく実用品なのですから」


 と店主と思われるピクシーのおじさんは説明する。仮装用だって場合によっては実用品なのではないだろうか、と思ったけどこの場合は単純に戦闘に用いることができるという意味だろうと思って黙っておいた。


 ふと店主の笑みが若干いやらしい笑みに変わり視線が逸れたので、その視線の先をたどるとクゥちゃんが早速虎の着ぐるみの方に向かっていた。


「クゥちゃん…相当虎好きだね」


 私の呆れたような呟きにクゥちゃんの身体がびくっと反応する。


「ち、違うよ、単にイベントの時とどう違うのかな、て気になって見てただけで」


 とクゥちゃんが弁解する。ちょっと怪しいけど嘘を言っているわけではないみたいだ。


「それに、今の装備の方が性能はいいし、シンセみたいにマイホーム持ってるなら飾ってもいいけど…」


 と続けるクゥちゃんの言葉を聞いて店主の顔がいやらしい笑みから真剣な表情に切り替わるクゥちゃんに着ぐるみを買わせるための策を練っているのかもしれない。


「クゥちゃん、店主さんの顔が怖いから逃げよう」


 私が小さい声でクゥちゃんに言うと、クゥちゃんも店主の方に視線を向ける。


「確かにそうだね」


 とクゥちゃんも頷く。


「じゃあ、そろそろ帰ろうか」


「そうしよう」


 わざとらしく大きな声を出して帰ることを示唆した私にクゥちゃんもわざとらしく頷く。店主は一瞬悔しそうな顔をしたけれどすぐに笑顔に切り替わる。


「さようでございますか、当店は夜にしか営業しておりませんのでまたお越しくださるときはくれぐれもご注意ください」


 そうやって頭を下げる店主さんを背に店から出る。結局クゥちゃんに買わせる策が練り終わることはなかったみたいだ。


「次来たらあの手この手で買わされることになりそうだよ」


「そうだね……次来るときは買う時じゃないとだめだね」


 私の発言にクゥちゃんも頷く。


「あ、そういえば転移ポータルの登録してないね」


 とクゥちゃんが気付いたので二人で向かう。そして登録を終えた後。


「もうボクはログアウトしようかな、ナギちゃんはどうする?」


 クゥちゃんに尋ねられて時間を確認すると結構いい時間だった。


「私もログアウトするかな」


「そっか、明日は破壊のダンジョン終わりのメンテナンスがあるはずだから……時間が変わると思うけどエルフの里に行けるかなぁ」


「行けないならその時考えよう」


「そうだね、じゃあまた明日」


「また明日」


 お互いに別れを告げて、ログアウトした。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン初心者】Lv20【STR増加】Lv41【ATK上昇】Lv34【SPD増加】Lv39【言語学】Lv41【遠目】L11【体術】Lv32【二刀流】Lv49【幸運】Lv50【スーパーアイドル】Lv7


控え

【水泳】Lv28


 SP22


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主

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