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ナギ記  作者: 竜顔
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ランダム

 破壊のダンジョンは入るたびに構造が変化するランダムダンジョン。そこにはカッサの装備が初心者装備ではなくれっきとした破壊無効効果がついた装備だとか、私のスキルの中に【幸運】があるとか、クゥちゃんの野生の勘が鋭いとかは全く持って関係がない。


「…まだ1階層目だよな?」


「「うん」」


 カッサが疑心暗鬼になり始めている。たまたまカッサが発言しただけで私もクゥちゃんも思っていることは同じだ。


 1階層目で凄まじく広い構造に当たったらしい。20分近く探して次への階段が見当たらない。


「これはボスまで届かないだろうな…諦めて大蜘蛛狩りする…こともできるか微妙だな」


 ボスを目指すところから方針を変える。実際これに当たった人たちは何か別の目的がなければ1時間も耐えられまい。


 大きい蜘蛛…「スパイダー・マム」は、3階層目から目撃情報が挙げられている。といってもその数は少なく、狩りをしたいなら4階層目以降からしか出てこないと考えて探すべき、と言われているような状況だ。カッサによると8階層目以降から出現率も上がってくるそうで、多いときは3体そのフロアに出現するらしい。


 さすがに8階層目まで到達することはできないと思うので考えないとして、最低でも4階層目までは到達しなければならない。しかし下手すればそこにすら届きそうにもないとは…。


 このフロアの性質の悪さは何も広いだけじゃない。罠の数も凄まじいのだ。


 最初は罠の解除も危険な罠や、麻痺状態になる罠は解除していたけれどその時間すらも惜しい、と罠に引っかかればアイテムで即回復という手段を取っている。


 一向に次の階層への降り口が見つからない。


「うーん、ここの分岐か…あっちか、大分前の方にも分岐があるな~」


 徐々にカッサが壊れ始めている。カッサは確か「スパイダー・マム」狩りの案内役とかで何度も別のパーティに参加してダンジョンに潜っているはずだ。なのにこのリアクション、と言うことはカッサにとっても初めて経験する広さと性質の悪さなのだろう。


 そもそも元からダンジョンが大好きなカッサがこんな状態になるなんて…恐るべし破壊のダンジョン。


 カッサの精神は壊されかかっている。


 悩んだカッサが半ば投げやりにどの分岐を進むか私達に聞いてくる。最終的にクゥちゃんが指した通路を進むことになった。


 ちなみにクゥちゃんの勘はすでに何度も外れている。そのこともあって今の状況に陥ってるわけで…。それなのになぜクゥちゃんの意見に従うか、と言うと神頼みしていたからだ。今まで勘でスパッと物事を考えて結果に導いてきた…気がするクゥちゃんのそんな痛ましい姿を見ればその意見を聞いてあげるしかなかった。


 そんなボロボロになっていく二人の姿を見ながら私はアーサーの言葉を思い出していた。


 ――お主のその自信に満ちた顔! 我を倒さんとする野望! それらを壊されお主諸共壊れていく様を見ること――


 今まさにカッサの「ダンジョンなら俺の出番だ!」という表情は曇り、クゥちゃんの「勘」でも強く言い切る威厳のある姿は見る影もない。


 私がこれを作った側の人間ならばこれを見たら確かに楽しめるのかもしれない。となぜかアーサーに共感しながら歩いていく。


 クゥちゃんの神頼みは功を奏し、見事に次の階層へと至る階段を発見した。今回の件が影響してこれからクゥちゃんは勘よりも神頼みを重用しはじめるかもしれない。うーん、これまでのイメージもあって似合わないなぁ。


 しばらく全員で歓喜した後階段を下りて次の階層へ。


「やっぱり2階層目は空気が違うね!」


 クゥちゃんが目を輝かせて伸びをする。今のクゥちゃんなら詐欺にも簡単に引っかかりそうだ。


「はぁ、現実は甘くないか…」


 カッサがため息をつく。厳密に言えば仮想現実なわけだけど。


「どうかしたの?」


 カッサの言葉の意味がよく分からなかったので問いかける。


「いやぁ、あれだけ広い後はすぐ階段かな、ってかるーく思ってたんだけど」


 と言った後カッサは両頬をパンパンと叩く。


「じゃあ早速行きますか! さすがに連続であんな広いのは引かないだろうし」


 といって行動を再開する。カッサが戦闘になり、私がその後ろ。背後から凄まじい殺気を感じるせいで後ろを振り向けない。クゥちゃんも集中力を取り戻したようだ。


 集中力を取り戻したクゥちゃんは自信を取り戻し、勘の鋭さも戻ってきていた。分岐路を寸分も迷わず進む道を決め、そして見事に次の階層へと至る階段を見つけた。


 3階層目へと突入する。


 3階層目は部屋がいくつもあるフロアで通路が短く、部屋を出たらすぐ次の部屋、と言うような感じだった。


 しばらく探索していたところとある部屋の前で、


「モンスターの反応が重なってる、大きい蜘蛛がいると思う」


 ほぼ出現しないとされる3階層目で「スパイダー・マム」と遭遇。これは帳尻と考えるべきなのだろうか、という余計な考えを振り払う。


「じゃあとりあえず確認してみる」


 と言って私は部屋を除く。天井に引っ付いていることは分かっているので身をかがめて蜘蛛の口からの糸の射程範囲内に入ってしまわないように慎重に近づいていき上を見る。そこに大きな影が映りこむ。


「いる」


 二人に報告する。となれば簡単カッサが弓矢を携えて私の隣から蜘蛛を狙う。そして放つ。耐久力がないに等しい大きい蜘蛛は地面に落ちてそのまま消える。


「リベンジ感ゼロだね」


「あぁー二人にとってはそうなるんだっけ?」


 大きな蜘蛛がやられる姿を見ていたクゥちゃんが残念そうな口調で言う。


 そう言えば私も昨日遭遇した時は捕縛を解いただけで結局倒すことはしなかったっけ。


「さ、取り巻きを倒すよー!」


 大きな蜘蛛へのリベンジは呆気なく終わったクゥちゃんはその近くにいたスケルトンめがけて部屋の中に飛び込んでいった。


 3階層を突破し4階層目の途中で時間が来てダンジョン前に戻されてしまった。ほとんど同時に他の数人が戻されてくる。


 すると



<ボス撃破報告>


破壊のダンジョンの二人パーティ専用ボス

「ブレイクスパイダー・クイーン」の撃破を確認いたしました。


これに伴いましてカッスール公国領の武器屋に破壊無効の武器が追加されました。


それでは引き続き『○○記』をお楽しみください。



 と言うアナウンスがされる。一瞬クゥちゃんとカッサに視線が集まるが、二人は違うと否定する。


「俺達だ」


 その視線に気づいたのか、同時にダンジョンに戻ってきた人達の中から二人の男女が出てくる。


 そこに人が殺到するけど、二人はそれをうまくかわす。


「情報は後でまとめて出す、あとは公式サイトの動画を参考にしてくれ!」


 男性が叫ぶとダンジョン前に並んでいた人達も少しおとなしくなり、ダンジョンに潜っていく。これで二人パーティのボスが倒されてしまったので即席で人数を増やす人達も出て来た。


 少し落ち着いたとはいえ未だにざわつくその場を後にし、私はビギに戻る。クゥちゃんとカッサもそれとなく後ろについてくる。パーティチャットで反省会は行う。でも今回は全て1階層目の広さが悪いという結論で終わった。


 カッサはトラウマ克服のためにまた他のパーティに混ざってダンジョンに潜るそうで、クゥちゃんはリアルの知り合いの面倒を見なければならないとかで聖樹に向かうそうなのでビギに着いてすぐに解散した。


 さて、私もボスの素材で何ができるか聞きにでも行きましょうかね。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン初心者】Lv17【STR増加】Lv39【ATK上昇】Lv30【SPD増加】Lv36【言語学】Lv41【遠目】Lv8【スーパーアイドル】Lv7【体術】Lv32【二刀流】Lv49【幸運】Lv50


控え

【水泳】Lv28


 SP15


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主

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