防衛戦にむけて
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レフトさんによると、ゴブリン王国はβ時代からあったらしく、あの村に誰かがたどり着いた時に開放されるようになっていたらしい。スーパーゴブリンはその存在をほのめかす「鍵」として第二エリアに配置されていて、レフトさんが村への通行証の代わりとなる【猛者の証】を冒険者に渡すことになっていたらしい。
そして、スーパーゴブリンのみAIがあり、自身で考えて行動することができるようで、気づいているのにあえてスルーしているように感じたのも、私が身構えたときにレフトさんも身構えたのも、おそらく自身で考えて行動しているからだろう。
他のゴブリンは、村にたどり着いたプレイヤーが出たと同時にAIを持つ仕様らしい。一応はゴブリン族の冒険者という設定で、かつゴブリンは「種族」であり、同じ人間という「種族」の冒険者であるプレイヤーが、敵に攻撃していくのと同様に、ゴブリン達も人間を敵国の存在として襲ってくる。という理由づけもあるとか。
レフトさんたちは倒されると死に戻りするらしく、AIが与えられモンスターからNPC扱いとなったゴブリン達も死に戻りするようになったとか。しかし、特定の条件下では消滅する仕様になっているようで、その条件はレフトさんも知らないとのこと。
レフトさんは、直接的にゲームのシステムでどうなっているかという話をしてくれるのでわかりやすいが、
「この世界の住人にシステムの話とかさせるなよ、世界観が…」
とロマンさんはがっくりしていた。私も気持ちはわかる。「β時代から実装されていた」なんてあからさまな「現実」の言葉を用いられるのは…。
このゲームのスタッフは絶対世界観なんて考えてない、と私は確信した。
ジェットさんの質問が終ると、レフトさんたちはゴブリン達をつれて洞窟のほうに歩いて行った。おそらくあの村に帰るのだろう。
「こっち側からの転移ポータルはないのか…」
「おい兄ちゃん、イベントリを見てみろ」
「ん?」
「通行証とかいうアイテムがあるぞ、多分兄ちゃんにもあるんじゃないか?」
「ああ、ある」
どうやら、私には猛者の証があるので何もないが、二人にはあの村へ行くための通行証が与えられたらしい。
「なるほど」
「どうしたんですか? ロマンさん」
「いやなに、あの村には転移ポータルがあるけどこっち側にはないだろ? だからゴブリンが洞窟にいないようになってるんだなってな、そう思うとあながち世界観を蔑ろにしてるわけじゃなさそうだと」
それは深読みし過ぎだと思うけど、と心の中で呟く。
「それよりなんで北が関係あるのか、聞けばよかったかな」
とジェットさんがしまった、という表情になる。おそらく世界観を壊しながらわかりやすく説明してくれるレフトさんに面食らってたせいで聞きそびれたんだろう。
「聞けるんじゃないですか?」
「どうやって?」
「まだPT状態ですし…」
PTチャットという、PTのメンバーだけが会話を聞くことができるというシステムがある。まだリングさんもレフトさんもPTから離脱しておらず、PT欄から名前が消えていない。
「通じるの? この世界の住人と」
「さあ?」
ジェットさんは試しにPTチャットでレフトさん達に話しかける。結果は…できた。通訳は必要だったけど、普通にできた。
ゴブリン王国は第二エリアの奥に見える山々に囲まれていて、北門からの道ぐらいしか直接行くことができないらしい。一応通行証を持てば洞窟から行けるのでは? と聞いたら
「洞窟はダンジョンだ、トラップが設置してあるし道も狭く入り組んでる、しかし今回の目的は貿易ルートなんだから誰でも通れるような広い道が必要なはずだ、やっぱり世界観は蔑ろにしてないんだな!」
とロマンさんがうれしそうに語る。レフトさんたちも、異論はないみたいだ。
レフトさんもリングさんもゴブリン王国側から参加するらしいので、PTから離脱するかは状況次第で、ということになった。
ただ、ロマンさんはリアルの都合があるらしく、街に帰ってきたところでフレンド登録したあとログアウトしていった。
東門から近くを見回すとさっきまであった露店群が無く一軒だけになっていた。その見慣れた店に足を運ぶ。
「スミフさんどうしてここに?」
スミフさんは南に拠点を移していたはずだ。
「ナギちゃん、よかった、ナギちゃんが東に行くって言ってたからもしかしてと思ってきてみたんだ、さっきの知らせを聞いて生産メインは北とか中心街に群がってるからな、見つけられないと困ると思って、ほれ、数は少ないが…今ある全部だ」
そういってダガーを渡される。
「じゃあ、俺も中心街か北の方に行くから」
そういうとすぐさまスミフさんは走り去っていった。
それから私たちは食事をとろうということになり混雑を避けるため中心街から離れた店に入る。どうやらNPCの店のようだ。
「ナギちゃん…怒ってる?」
「ん?」
唐突にジェットさんが口を開く。
「いや、さっきの秘密っていったこと怒ってるのかなって思って」
私に対してジェットさんがここまで弱気なのは初めてな気がする。
「怒ってはないですけど…ジェットさんはいつも肝心なところを秘密にするなぁって、投擲用の武器のこととかギルドのこととか」
「それは、申し訳ないけど迂闊にしゃべれないんだ、まぁ【猛者の証】のことも結局聞いてしまったわけだから」
と投擲用の武器と【投擲】スキルがLv30になったときに特化することができるスキルの特徴について語ってくれた。
ブーメランは依然言った通りで、ダガーは武器としては威力が低い代わりに最も取り回しやすい武器で、スキルもアーツの種類が牽制向きから攻撃手段となるものまであり扱いやすい、一方で中途半端で器用貧乏ともいえるとのこと。
ボールは武器としては【石ころ】などのように武器自体に効果がついていたりするため、プレイヤーのステータスの影響を受けにくい武器であり、スキルは牽制向きのアーツが多いが、失敗もしやすくコントロールアシストもあるのかないのかよくわからない程度のため、上手に扱うにはコツが必要という癖が強い武器だとか。
そして他にはないのか聞くと
「それは、秘密だ」
と優しい表情で答えた。それはきっと「あるよ」という意味の「秘密」だと感じた。
「――っと、俺達ってこのままだと二人で防衛戦に出ることになるな、スキルを入れ替えておく必要があるな」
そうやってジェットさんが操作し始めた。そういえば私も何をとるべきか悩んで放置状態だった。
「ナギちゃんもそろそろ10枠解放したんじゃない?」
「はい、でもまだ5個しかとってなくて…」
「え!? 10枠になったんならいくらか場当たり的にとっても大丈夫だと思うけど」
「場当たり的に言語学はとったんです」
サブウェポンとして他の武器スキルをとるのもありだろうし、防具のこと考えてとか、補正? 特殊スキルって何がいいの? と困惑。ジェットさんはブーメランを目指すなら保険に【二刀流】を薦めてきた。
まだ何に特化するか決めてないので、二刀流は今回見送る。今回は、今後一人で洞窟を探検するかもしれないこと、防衛戦が夜に行われる事を考えて【視力】のスキルをSp7を払ってとっておいた。
「加護のスキルってどうですか?」
「ん? ああ保険にはなるって感じかな」
加護のスキルは複数のアビリティを習得できるスキルで、主に死んだときに復活するとか、デスペナルティの軽減とか、自分にとって都合の悪いことを防いだり、緩和したりしてくれる。その代りレベルを上げるためにはそういう目に何度も会わなければならないので、効果に期待して積極的にとるより、あくまで保険として取るスキルだそうだ。
「じゃあ場当たり的に…とっておこうかな」
「スキルレベルが上がらないとSpがもらえないことも考えてる?」
基本的にSpはスキルレベルが10で1、20で2、というように獲得できる。だから大体レベル上げに必要な行動がかぶっているスキルを一緒にとって行くのが効率がいいとか。
そこでようやく気付く、自分がどういうスタイルでやっていくのか全く考えてないということを…
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NAME:ナギ
【投擲】Lv28【STR補正】Lv22【幸運】Lv19【SPD補正】Lv20【言語学】Lv18【視力】Lv1【】【】【】【】
Sp15
称号 ゴブリン族の友




