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ナギ記  作者: 竜顔
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破壊王スケルトン・アーサー

 目の前の玉座に座る骸骨の頭には王冠。そしてファンタジーなんかで王様が身に着けているようなマントを纏っているようだ。


「お主よ、お主は何故(なにゆえ)ここにやってきた?」


 年老いた声の骸骨が問いかけてくる。うーん、理由を聞かれても…。


「あなたに…会うため?」


「我に会う? 会ってどうするのだ? 我など所詮ただの老いぼれた屍よ」


 私が答えると、再び質問を返してくる。会ってどうするかって言うと答えは決まっているので問題ない。それより老いぼれた屍って…屍になってから時間が経っているって解釈でいいんだろうか、変な言い回しをするものだ。


「あなたに会って…あなたを倒すために来ました」


 これが求められている答えだろう。


「グハハハ、面白いことを言うものだ、気に入ったぞ! どうだ、我と手を組まぬか? 我が世界の全てを壊し、手に入れた暁にはその半分をくれてやろう!」


「は?」


 どうしたらそういう話になるんだろうかと首を傾げる。


「そうか、言ってみたかっただけとはいえ、残念だがなぁ」


 骸骨は頬杖をついたままがっくりとするような雰囲気を醸し出す。


「この世のすべてを壊して奪い、その半分をお主に与えてそれを壊して手に入れる、とても面白いことになりそうではないか?」


 骸骨は私をジッと見つめて淡々としゃべり続ける。


「何がいいたいの?」


「しかしそれも元から叶わぬことだ…」


 私の問いかけには答えず骸骨はそう言うと、すっと玉座から立ち上がる。


「我が名はアーサー! 他人の物を壊すことこそが我が至上の喜び! お主のその自信に満ちた顔! 我を倒さんとする野望! それらを壊されお主諸共壊れていく様を見ることに比べれば、世界を壊すなどなんと面白味のないことか! さぁ、その壊れ行く姿を晒せ!」


 骸骨――アーサーは声高らかに宣言する。その直後、姿がふっと消えたと思うと同時に私の前に現れる。


「な!」


 背中を向ける形で現れたアーサーは振り返りながらマントでうまく隠していた剣を私に振るう。それにぎりぎり気づけた私はなんとか躱して距離を取る。


「フフフ、躱したか?」


 声は楽しそうだけど、表情の変化に乏しい骸骨ではただ不気味なだけだ。


 アーサーは今度は左の人差し指を差し出す。その指先から黒いレーザーが放たれ、そのスピードに反応が遅れた私は避けきれず掠る。


「う…そ」


 HPバーの8割が消えていた。高威力の魔法攻撃だろう。物理攻撃ならば圧倒的なDEFでなんとかなるけど取得スキルから考えてREGはそこまで高くないであろう私にとっては厄介極まりない攻撃だ。


 しかも、溜めることなどせず普通に使ってきたのでボスの必殺技的な部類ではないだろう。


 魔法攻撃ならレーザーの色から考えて闇属性だけど、インベントリの枠の関係でオスカーは倉庫に置いてきた。こんなことならダンジョンに入る時用の初期装備1セットだけ持ってきて、ダンジョンに入ったら最初からこのバニーガールの姿で挑むっていうアイテム構成にしとけばよかった。


 後悔しても遅い、と動き回る。予想通りレーザーは必殺技の部類ではないみたいで連射してくるので回復もままならない。隙をついて誘惑を使いたいところ。


 レーザーが止んだ、と思うと目の前にアーサーが現れる。


「おわ!」


「変な力を持ちおって、戦いづらいわ!」


 アーサーの右ストレートが私の腹部に当たる。ダメージは大したことはない。


「グハハ! これで戦いやすくなった!」


 と隙だらけのアーサーに誘惑を使って動きを止める。アーサーの言うことを確認するために装備を確認すると魅了効果付与の文字が薄くなっていた。おそらく魅了系の状態異常をどんどん重症化させていたあのコンボは使えないということだろう。


 それだけならばそこまで問題ない。【風切】でダメージを与える。そのあとすぐにハートショットで親衛隊状態にして念のため鉄のブーメランで削る。


 数発当てたら元の状態に戻ってアーサーが動き始める。すぐに左の人差し指を私に向けるので横に逃げる。


 レーザーレーザーまたレーザーでなかなか攻勢に出れない。少しでも動きを止めようものなら大変なことになる。しかも玉座のところが壇になっているせいで部屋をぐるりと回り続けるだけ、と言うわけにもいかない。


 横によけたりしゃがんだり、後ろに下がったりしながら私の目線にまっすぐ飛んでくるレーザー、足元を狙ってくるレーザー、胴体を狙ってくるレーザーを避ける。


 ありがたいことに回避先を読んだ攻撃はしてこないので、来ると思ったら即動く、で躱せないことはない。


 もう一つのパターンとしては瞬間移動直後は絶対に物理攻撃を仕掛けてくる、というのも私の命を救っている。瞬間移動してすぐレーザーだと多分何度か死に戻ってる。


 ふっとレーザーが止まり背後にアーサーが現れる。【ブーメランの初心者】lv10で習得したアーツ【エアブーメラン】を発動。


 背中を向けた状態から体を回転させ剣を振り払おうとするアーサーとは逆回りで私も体を回転させながらアーツの発動によってできたブーメラン型の空気の刃を放つ。


 物理攻撃ならほとんどダメージを受けない私にとってこの瞬間ぐらいしか攻撃するタイミングはない。


「グォオオ!!」


 空気の刃は見事にザシュッとアーサーの身体に当たる。ゲームでなければ今頃切り傷でもできているだろう。


 同時に私もアーサーの剣を受けて少し吹き飛ぶ。体勢を戻してすぐに誘惑、そして風切を投げて攻撃。


 カン!


「しまっ!」


 勢いよく投げた風切はアーサーを腕を通過した後壁に当たって落ちてしまった。その直後動きを取り戻したアーサーがレーザーを放つので慌てて避ける。


 位置的には今のところ大丈夫と思うけど早く回収しないとどんな攻撃で壊されるか分からない。それに他の武器ならまだしも風切が壊されてしまうのは困る。


 とりあえずレーザーの雨を躱していきながらアーサーと距離を取る。


「グハハハ、どうやら我を倒しに来たというのは冗談ではないようだな!」


 初めて骸骨がカッと笑ったかと思うとすぐに消えて背後を振り向くと顔があった。


「ひっ!」


 さすがに骸骨の顔のアップは予想してなかっただけに声が漏れる。驚きのあまり尻餅をついたのが功を奏し、口から放たれた黒いビームを躱すことができた。首を左右に動かし扇状にビームを飛ばす。高さは私の顔の位置ぐらいなので風切は壊されずに済みそうだ。


 仕組みが分かったら低姿勢のまま風切を回収。背後にアーサーの気配を感じ振り向くといつの間にか来ていて、右手で拳を作って振り上げていた。


 右に体を転がして避けるとアーサーの右の拳が思い切り地面に叩きつけられる。


 ドン!


 という爆発音とともに一瞬だけ砂煙の柱が立つ。


 背後に回り込んだ私を探すかのようにアーサーが首を動かす。しかし、この決定的なチャンスを逃すつもりはない。アーサーの首が私を捉える前に私はリーステスの剣を鞘から抜いて右の拳をアーサーに突き出す。


「ファルカナンド・エンブレム!」


 出現させたファルカナンド王家の紋章を前へ押し出しアーサーに当てる。


「ん!」


 そしてそのまま壁に押し付け、挟む。


「グォォオオオオオオオ!!!」


 アーサーは絶叫する。リーステスの剣を持っている状態ならMPを消費しないのでこのまま消え去るまで続けることができる。


「グゥオオオ! こんなもの、我が!」


 ほとんど身動きが取れないアーサーは口から先ほどのビームを出して紋章を壊そうと必死だ。


 このままじゃ壊れるという感覚が伝わる。壊れる前に一旦消すか、それとも壊れるまで待つか。


 バリィィン!


 悩んでいるうちに紋章が壊れた。ふりまかれる口からのビームを避ける。


「ふぅぅぅ…今のは効いたぞ」


 アーサーは両手をだらんと下げ、肩で息をしている。できれば今のでそのまま一気に倒したかったけどそう簡単にはいかないみたいだ。


 誘惑。


「な!」


 私が誘惑を使った瞬間アーサーはマントで顔を隠して防ぐ。


「何度も同じ手を食らうと思うでない!」


 そう叫ぶとともにアーサーは両手を広げ天を仰ぐ。するとそこに巨大な黒い玉が発生する。


「さあ、我が壊れるか、お主が壊れるか」


 アーサーはゆっくりとその顔と両手を前に向ける。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン初心者】Lv13【STR増加】Lv37【ATK上昇】Lv30【SPD増加】Lv33【言語学】Lv41【遠目】Lv4【スーパーアイドル】Lv5【体術】Lv31【二刀流】Lv47【幸運】Lv50


控え

【水泳】Lv28


 SP15


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主

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