倉庫の守護神
8階層目。【視力】のスキルLvが最大になっていたのでSP6を払って【遠目】に進化させる。暗闇で見える範囲も広がるようで敵の存在にも幾分かは気づきやすくなるはずだ。
ボスは10階層目なので後二つ。9階層を突破した時点で制限時間はストップするのでボス戦を考えずに時間を考慮すれば十分最後まで行ける時間が残っていると思っていた。
しかし8階層目から出現するモンスターが大きく変化。変化すること自体は事前に分かっていたのでそこまで問題はないけど完全に釘付けにならないことなどもあって時間が取られてしまう。
まず厄介な存在としては片手に斧を持った大柄な骸骨「スケルトン・リーダー」はその大きな体に似合わず動きも人並みに軽快だ。そして攻撃の威力も高く、破壊されてもいいような装備とはいえ一撃で9割ほど持っていかれた。
遭遇するのは基本は部屋。そしてリーダーと言うだけあって複数のスケルトンを従えていることもあれば、スケルトン・リーダーが2体、ということもある。どちらが厄介かというと釘付けにするのに誘惑を使う必要がある以上数が多い分前者の方が厄介だ。リーダー2体なら一方にハートショットを使って同士討ちさせてる間に、ということもできるし。
そしてもう一つ厄介な存在が「スケルトン・ストーカー」だ。【遠目】で見える範囲が広がったとはいえ身を隠すのがうまく攻撃する瞬間、あるいは攻撃してきてしか気づくことができない。こちらは部屋よりも通路でよく遭遇し、不意打ちを何度か許してしまった。
曲がり角で襲われないように爆発系のアイテムを使ってあぶりだそうとするけど思ったよりうまくいかなくて、途中からもったいなくてその方法はやめた。実際曲がり角で襲われるというよりは人二人通れるかと言う狭い通路でふっと横から剣を振り上げて襲い掛かってくることが多いから心臓に悪い。油断すれば一体いつから!? と背後から攻撃されることもある。
反射的に防御したせいでスミフさんお手製の鉄のブーメランが二つお亡くなりになった。防具の方もボトムスはまだ予備があるけどトップスは最後の一着。
スケルトン・ストーカーの攻撃力はリーダーに比べれば劣るとはいえ4割ほど削られるので通路を徘徊しているただのスケルトンに気を取られてるうちに襲われたら大変なことになる。
この階層で引っかかった罠は毒や、わずかなダメージ、あるいは防具を破壊する罠で、動けなくなるということがないのが救いだ。
「っとまた!」
ぬっと横から現れたスケルトン・ストーカーに悪態をつきながら前方にダイブして剣を躱す。ボトムスに掠ったみたいでごくわずかなダメージとともにボトムスが破壊される。
誘惑で釘付けにして、そのまま【風切】で倒す。一対一ならば誘惑で釘付けにして【風切】で一撃なのでなんとかなる。しかし【風切】が破壊されてしまったら心が折れてしまいそうなので簡単に使えない。
破壊されてもいい鉄のブーメランも残り一つ。そしてそれでは簡単に倒せなくなっている。
残り時間は…まだ希望がある。正直あれは使いたくなかったけど…これまで麻痺の罠にかかるたびに動けなくなったり、毒の罠にかかるたびに気分が悪くなったり、攻撃を受けるたびに装備が破壊され薄着にされたり、それをもう一度乗り越えるよりはまだマシ……かな? あれ? ここに来て自分の考えに自信が持てなくなってきたかも。
ええい! 悩んでいる時間が惜しい。どうせ誰にも見られてない…運営の人には見られてるかもしれないけど、男性でないことを祈ろう。うん、あと自分の事情を少しでも知ってる人しか見てないと思えば問題ない。
私はインベントリを開いてとあるアイテムを確認する。
【バニードールの制服】
装備カテゴリー:セット装備
DEF:+320
効果:回復効果増加(中)
セット効果:DEF2倍、魅了効果付与
エイローの伝説の店『バニードール』の制服。普通のより一回り大きくもふもふのしっぽ飾りが自慢。
この制服と言う名のバニースーツを装備する。恥ずか…誰も見てない誰も見てない。ってかよく見たらDEF2倍の効果があるから実質+640って重鎧もびっくりな性能じゃん。
そしてもう一つ大事なアイテム。
【ウサギのぬいぐるみ】
特殊アイテムアイテム
効果:「バニードールの制服」の耐久力∞化、および破壊無効化
発動条件:イベントリ内に所持
不思議なウサギのぬいぐるみ、持っているだけで意味がある。
これで防具は破壊されないからここのモンスターの攻撃も怖くない。スケルトン・ストーカー? ストーカーはジェットさんで間に合ってます。
さあ倉庫で待機し続けた装備よ、運営を…じゃなかったボスをぶっ飛ばしに行こうじゃない!!
通路の先には部屋。スケルトン・リーダーが3体いたけれど、他2体を無視して1体の至近距離に近づいてダガーを投げつける。当たったリーダーが動きを止める。魅了効果付与というのは、どうやら普通の攻撃に付与されるみたいだ。
おまけに釘付け状態のリーダーを殴れば親衛隊状態になって同士討ち。また殴れば心酔状態になって私に抱きつこうとするので蹴りつける。すると骨抜き状態になってそこで膝をついてぼけーっとしている。
それらを残りの2体にも行ってあとは一方的に攻撃して消し去る。で、よく見ると次の階層への階段があった。…無駄な時間を使った気がする。
通常のテンションに戻りながらも急いで次の階層へと降りる。
降りたら蜘蛛に気を付けながら走り回ってボスへの階段を探す。骸骨どもはひとまず無視し、邪魔をするならばタックルで弾き飛ばす。そうすれば釘付け状態になって少しは着いてくる数を減らせる。蜘蛛の糸を受けてもいいように爆発系のアイテムを常に手に持っておく。
その甲斐あって一度捕まるも爆発の炎で焼け落ち振り払うことができた。蜘蛛は倒して走り回るを続ける。気づけば私のために戦ってくれる骸骨も出てき始めたけど、そんな光景を楽しんでる余裕もないほど残り時間が少なくなっている。
「えーっと、ここは通ったね…じゃあこっちかな」
慌てると分岐路はどこを通ればいいのか判断も鈍ってくる。途中で狼の部屋も通った。狼も変化していて、一回り大きくなり毛並みも全身真っ黒だ。
5体出てきてボールみたいなバウンド攻撃を行ってきたけど奇跡的に間をすり抜けることに成功し、しかもついてきていた骸骨どもがそれで妨害されて引き離すことができた。
進んだ先に階段を発見。爆発系のアイテムをふんだんに使い邪魔してきそうな存在に牽制する。…結局そんなものはおらず、そのまま階段へと到着。一歩降りると制限時間のタイマーが止まる。
「ふぅ…とりあえず間に合った」
残り時間を確認すると1分もなかった。あの狼たちの部屋で足止めを食らっていたら間に合わなかったかもしれないと思うと、今日は運がいい日みたいだ。
モンスターの間を走り抜けたということもあって地味にダメージを受けていたので回復。満腹度と渇水度も減っていたので食事を取った。
腰にはダガーホルダーと風切。反対側にはリーステスの剣を納めた鞘。
待機を使ってトイレを済ませ準備は万全。
階段を下りた先には両開きの扉があった。その両脇に小さな松明が燃えて周囲を明るくしていた。
その扉にそっと手をつけて押していく。ギィというような音を出しながら扉は開いていく。そしてその先には少し開けた部屋があった。壁には火の灯った蝋燭が各所に置いてあり、その優しい明かりが部屋を照らしている。
バタン!
私が部屋に完全に入りきると扉が閉まる。
「ほぅ、こんなところに来るとは…物好きがいるものだな」
私の視線の先少しばかり高い壇の上の玉座に肘掛に右ひじを乗せ、その握った右手に頬を乗せる骸骨が口を開く――
――――――――――
NAME:ナギ
【ブーメラン初心者】Lv12【STR増加】Lv36【ATK上昇】Lv29【SPD増加】Lv31【言語学】Lv41【遠目】Lv4【スーパーアイドル】Lv4【体術】Lv31【二刀流】Lv47【幸運】Lv50
控え
【水泳】Lv28
SP12
称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主