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ナギ記  作者: 竜顔
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ウオーン

 一気にHPを削られたカッサは後方にステッする。それと同じように狼も後方に着地。


 その狼にクゥちゃんが爪を使わずに素手で殴りつける。ブーメランを壊した時と同様に狼は首を振って何かしようとするけど素手のクゥちゃんには意味もなく、そのまま顔を殴られる。


 可愛らしい声を上げて狼は吹き飛び、HPも半分ほど削られる。どうやらカッサへの攻撃に気を付ければそこまで怖い相手ではないみたいだ。


 狼は起き上がるとクゥちゃんの方を向く。位置的に私に背中を見せる格好と言う隙だらけの状態なので思い切りダガーを投げつける。それが刺さると狼のHPは0になって消えていく。


「勝った…っていうほどの相手でもないのか?」


 ポーションを飲みながらカッサは首を傾げる。


「武器が壊されて焦ったけど、考えたらボクは素手でも問題なかったね」


 クゥちゃんが自身の手を見つめながら呟く。


「私も正面から堂々と攻撃したのが悪かったのかな、鉄のブーメラン壊されちゃったし」


 狼がいきなり襲いかかってきたので咄嗟に攻撃したけど、背後からなら脅威にもならない相手だったかも、と考えると少し勿体ない。


「とりあえずあの狼の脅威は空中でグルグルしてたあれか、次遭遇したら気を付けよう」


 最後はカッサが締めて部屋を見渡す。どうやら行き止まりになってるみたいだけど下へ降りる階段はない。


「…無駄足?」


 私の声に無言の肯定が返ってくる。部屋を出て、来た道を戻っていくつかの分岐路を散策して下への階段を見つける。


 第三階層は下へ降り切る前から光が見えて嫌な予感がした。そして降りるとそこは部屋でさっき戦った狼さんが一匹待ち構えていた。


「とりあえずダッシュ!」


 カッサの叫び声とともに完全に部屋に入って左右に分かれる。クゥちゃんとカッサが一緒の方向だ。


 狼はすぐさま飛び上がるとクゥちゃんに向かっていく。クゥちゃんはさっきの反省を踏まえてなのか屈んで狼の口を回避するとのど元を掴んでそのまま地面に叩きつけた。


 一撃。頭から地面に叩きつけられた狼は一瞬にして光となった。


「……やった!」


「いや、遅いから!」


 しばらく呆然としていたクゥちゃんが思い出したかのように喜んでみせるとカッサが突っ込む。さっき苦戦したのは一体なんだったんだろうか。


「こんなことなら叫ぶ必要なかったなぁ…」


 気が付けばカッサが遠い目をしていた。


 カッサを宥めた後部屋から出る。この階層は直線状になっているみたいで分岐路もなく通路をまっすぐ進んでいると小さなは光が奥の方に見え始める。


「またか!」


「さ! 投げるよ!」


 ちょっと嫌そうなカッサと、やる気満々のクゥちゃんのコントラストに少し笑いながら部屋に近づくと、同じ狼が今度は三体いた。


「ナギちゃんも体術持ってるから投げられるよね? …だから二人で二体、カッサは狙われないように気を付けてね」


 クゥちゃんが作戦と言えるかわからないけど、作戦をみんなに言い渡す。空中ぐるぐるがなければ特に危なくはないだろう。


 強いて言うなら私がクゥちゃんと同じように狼を投げられるか、という問題があるだけで。


 部屋に入ると狼達はすぐさま地を蹴って飛び上がる。それに負けないような速さで二手に分かれる。そして今更ながらどういう原理なのか空中で方向を変えた狼がクゥちゃんとカッサ方面に一匹、私の方に一匹。


「なんで!」


 と言いながらもクゥちゃんのように投げ技を決めるべく待ち構えていると狼たちは空中で止まる。どうやら【スーパーアイドル】のアビリティが効くらしい。


 せっかくそれだけの隙ができたので迷わず【風切】を投げて狼たちを消す。クゥちゃんの方もすでに終わっていた。


「何があったの?」


「釘付け状態になったみたい」


 クゥちゃんの問いかけに答えると、クゥちゃんは首を傾げる。


「最初戦った時効かなかった気がするけど?」


「うーん」


 クゥちゃんの問いかけに首を傾げる。


 【魅力】時代にアクティブノンアクティブ関係なく範囲内のモンスターを釘付けにしてエンカウントしてくれた迷惑なアビリティは【アイドル】時代に私を標的とするモンスターのみに作用するようになった。


 それを考えれば先ほどの狼二匹が動きを止めたのは納得がいく。しかし最初に戦った時は動きを止めなかった…となると最初の狼は私より格上と言うことなんだろうか。


「ナギちゃんに攻撃した時ってぐるぐる状態だったろ? あれって無敵状態みたいになるんじゃないか?」


 理由を考えているとカッサが推測を述べる。その線もあるかもしれない。


「弾かれたら装備は破壊されるけどダメージはほぼなし、でも受け止めたら大ダメージ、そしてあの状態の狼にはどんな攻撃も通じない、とかそんな感じの技なんだろう多分」


 カッサは自分の推測に納得がいったのか一人頷く。ここで考えても結論は出なさそうなので、仮設としてカッサの案を採用し、先に進む。


 一本の通路をただ直進していくと再び小さな光が目に入る。


 これまでと部屋の主(?)のシルエットが違うので警戒しながら近づいていく。


「「「おっ」」」


 三人同時に声が漏れる。部屋にいたのはこれまでと全く同じ狼…の上にスケルトンが乗っていた。スケルトンは簡素な兜を被り小さな盾と剣を持っていてさながら騎士のようだ。ただスケルトンを乗せているせいなのか狼得意の地を蹴って飛びかかってくる攻撃をしてこなかった。


 正方形に近い部屋の中央奥でただじっとしている。


 部屋に入って恐る恐る二手に分かれて周囲を歩く。狼は微動だにせず背中のスケルトンの首だけが動く。ちょっとしたホラーだ。


 彼らの真横の位置ぐらいの時に狼がおもむろに前進し始め、ちょうど部屋の中央のところで止まる。するとスケルトンは持っている剣を真上に振り上げてかざす。


「危ない!」


 クゥちゃんが叫ぶ。私はそれにしたがって屈みながら狼たちの動きを見ると、狼はその場で一周し、背中のスケルトンはそれに合わせて円を描くように剣を薙ぎ払う。すると同時に何かが先ほどまで私の頭があった場所を通り過ぎる。


「斬撃飛ばして来たぞ!」


 カッサも驚いている。いち早く気づいたクゥちゃん側どうやら問題ないみたい。


「ナギちゃん!」


「ん?」


 一瞬モンスターから視線をずらした私を見ながらクゥちゃんが叫ぶ。モンスターの方を見ると宙に飛びあがったスケルトンが前方へ回転しながら私の方に落ちてくる。


 横に回避すると、先ほどまでの位置にスケルトンが着地。すぐにダガーを投げるも剣で弾かれると同時にダガーが砕ける。


 それでも問題はない。【誘惑】で釘付けにする。狼を確認するとクゥちゃんがひきつけている。強さ的にはこれまでの狼と差はなさそうだ。


 それを確認すると【風切】を取り出してスケルトンに投げつける。一瞬で首と胴体がお別れして消えていく。パッとクゥちゃんの方を見ると狼を処理し終わっていた。


「不意打ちに会い過ぎだね」


 クゥちゃんが苦笑いしながら近づいてくる。


「イベントの時の気持ちが抜けきってないのかもね」


 自分達ではそのつもりがないけれど、やっぱり安易に攻撃を受けている感は否めないので、攻撃されてもダメージを受けないという心の余裕を持ちっぱなしになっているんだろう。


「あっ」


 唐突にクゥちゃんが声を漏らす。


「どうかした?」


「なんかね、時間制限があるみたい、ダンジョンの前に飛ばされるから、防具が壊れたまんまだと恥ずかしいことになるよって」


 どうやらシンセさんからの報告なようだ。


「時間制限があるって…思ったより進めないね」


 とカッサ肩をすくめる。


 とりあえず進める限り進もう、ということで進む。次の階層に降りると罠だらけでスピードが一基のちて、そのままダンジョンの前に戻された。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン初心者】Lv10【STR増加】Lv35【ATK上昇】Lv26【SPD増加】Lv30【言語学】Lv41【視力】Lv47【スーパーアイドル】Lv3【体術】Lv30【二刀流】Lv46【幸運】Lv50


控え

【水泳】Lv28


 SP13


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主

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