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ナギ記  作者: 竜顔
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落ち着き

 一周年記念&ハロウィンイベント終了後はランキングの話題で盛り上がる中、行ってないエリアに足を伸ばす人、自分の適性に合った狩場に戻る人などによってイベント中の殺伐とした狩場競争はなくなった。


 そのかわりホレイーズ終了後から地味に続いている生産系プレイヤーの素材不足解消のために走る人々によって別の意味で狩場は殺気に満ちている。


 イベントが終了した日曜日は私達もそのために奔走。キノミンイエローのドロップはイベント諦め組の人々の手によってある程度数が揃ったらしく、他のも新規の人達の手によって少しはどうにかなってるみたいだ。


 だけどそれでも個人個人でみると足りない物が多いそうなので現在はその細かい依頼に応えてる感じになっている。仮装衣装で普段と違ったスタイルで戦った人たちもこれで勘を取り戻したりしている。


 月曜日。


 学校終わりにログインするとゲーム内は昼。街は素材収拾に奔走するような人も減って普段の落ち着きを取り戻しつつある。


 ただ私達のパーティはイベントが終わってから忙しいみたいだ。


舞浜君とバカップルはピーチさんと一緒。カッサは先日シンセさんの「クゥ」ちゃんが活躍したゴブリン王国王都の隣にあるダンジョンで斥候として引っ張りだこらしい。イベント期間中にトッププレイヤーみたいな人たちから変に名前が売れてしまったらしくてオファーが尽きないそうだ。本人曰く「儲かってる」らしい。


 トッププレイヤーともなると斥候役も一人はパーティにいるんじゃないか、と思うけどトッププレイヤーと言われるような人たちにそれだけのためのスキル構成にする人は少ないそうで、ダンジョン攻略の時には固定パーティを多少いじって斥候役を入れるらしい。


 ということで私がよく一緒に行動するメンバーはクゥちゃん以外は別の場所で頑張っている。


 それと水曜日から一週間限定で「破壊のダンジョン」という完全ランダムダンジョンが設置される。詳細については触れられてないけど、ブレイクが使われるんじゃないかということで装備が破壊されてもいいように安い防具を買い漁ったり依頼したりする人が増えてきているそうだ。


 「Berry Workers」のブティックもすごいことになってるらしい。だけどラズベリーさん達にとっては使い捨て品のように買われていくので複雑な心境だそうだ。


 なんて考えているとクゥちゃんがログインしたらしい。


「ナギちゃん、今日はどうする?」


「どうしよっか」


 クゥちゃんの問いかけに悩む。時間的にはすぐに夜が来てしまうだろう。と言うことを考えるとどこかのダンジョンへと向かうのが無難。罠とかもなくて二人で狩りができる聖樹辺りがいいだろうか。


「聖樹…ぐらいしかないかな」


「だよねぇ」


 私の聞き返しに答えるクゥちゃんも同じことを考えていたみたいだ。


 早速準備を整えて聖樹へと向かう。人の数も減って以前の状態に戻っていた。…わけでもないらしい。どうやらイベントで素材をゲットして装備をパワーアップした人々が試しに、と最強説もある25階のボス「バラオー」に挑戦しまくってるそうで、ボス前の待機部屋には行列ができてるらしい。どうやら戦績は悪いみたいだ。


 まぁ、それ以外の階層はイベント前の状況と変わらないので気にする必要はない。


「10階のボスで苦戦してから結構経つんだね…」


 13階での狩りの途中ふいにクゥちゃんが感傷に浸る。


「そうだね、苦労したよね」


「あの時は強すぎとか思ってたけど…弱点を利用した時の弱さが…ショックだったね」


 そういえば、初めてルーナさんに会った時にも戦ったんだっけ…。あの時はバジルさんが簡単な火魔法を使っただけで一気に弱体化してあの苦労は難だったんだろうか、と呆然としたんだっけ。


「20階のボスはちゃんと研究して挑もうね、もうあんなむなしさは感じたくないし」


 クゥちゃんの瞳に力がこもる。


「どうしたの? やる気に満ちてるけど」


 私は苦笑いしつつクゥちゃんに問いかける。


「ん? ああいや、ちょっとね? ははは」


 クゥちゃんにはぐらかされた。もしかしたら今は私のペースに合わせてのんびりしてくれてるけどクゥちゃんはもっとガンガン強くなっていきたいタイプなのかもしれない。私も少しは見習わなければ。


「じゃあ舞浜君が戻ってきたら20階に挑戦だね」


「うん!」


 私が目に力を込めて言うと、クゥちゃんも思い切り頷く。


 やる気に満ちるクゥちゃんはイベントの時のノーガード癖が度々出てしまってすぐにダメージを受ける。回復アイテムの減りも早い。


「クゥちゃんアグレッシブすぎるよ」


「ご、ごめん気を付ける」


 私が注意するとクゥちゃんが慌てて謝る。うん、おかしい。確かにクゥちゃんは今、猛獣のような殺気を放ち、戦闘に入るといつものように先手を取る。でもいつもの猛獣モードに比べると集中力と言うか…空気が違う。


 そういえばさっきの言動も単にやる気があるんだと思ってたけどいつものクゥちゃんらしくないかも。でもはぐらかしてたから触れないのがいいかもしれない。どのみちクゥちゃんが先に進みたいと思わせる何かがあるんだろう。


 ぱんぱんと両頬を叩いたクゥちゃんはいつもの感覚を取り戻し、きれいなヒット&アウェイを繰り返した。ここ最近ノーガードで一方的に殴り続けるクゥちゃんを見てきたけど、こうやって機敏に動き回って戦う姿を見ると、クゥちゃんて感じがする。


 もっともイベント中は着ぐるみ着てたから顔が見えなかったからクゥちゃんって印象が薄いのかもしれないけど。


 最初が最初だけにアイテムの消耗が激しかったので狩りを早めに切り上げて休憩する。ビギに戻ってモンスターのドロップを必要としている人に売り払う。


「げっ!」


「ん?」


 露店群を回っているとクゥちゃんが変な声を出す。


「ごめんナギちゃん、ちょっと今日はもう無理かも」


「え? ああ、そうなんだ、じゃあまた」


 と私が言い終わるかぐらいにクゥちゃんは颯爽と走り去っていった。ログアウトじゃないんだ、と思いながらその後ろ姿を見送る。


 もしかしたら悩み? の原因に呼び出されたのかもしれない…。もしかして、シンセさんの「クゥ」ちゃんに本格的にライバル心を燃やしてるとか!?


 それなら先を急ぐような発言も納得ができ…ない。


 その後一人で歩いていたらローエスさんにつかまって露店の売り子として手伝わされた。それと仮装の衣装をまだ持ってるなら買い取ってくれるということで結構な値段で買い取ってもらった。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン初心者】Lv9【STR増加】Lv35【ATK上昇】Lv26【SPD増加】Lv30【言語学】Lv41【視力】Lv47【スーパーアイドル】Lv3【体術】Lv30【二刀流】Lv46【幸運】Lv50


控え

【水泳】Lv28


 SP12


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主

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