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ナギ記  作者: 竜顔
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番外編:舞浜慎太②

しばらく出てこない(予定)の彼の話。

 ――ハロウィンイベント前


 コスプレ衣装を集める猶予期間中、一生懸命にテスト勉強をする松木さんに触発されて少し頑張っていたけれど、学校では彼女の目があるので頑張れるけど家にいるとどうしても続かずに野良で色々な衣装を集めていた。


 情報が出そろうまでは自分が狩れる範囲でクエストを受けて衣装ゲットをしていたけれどファルカナンドで騎士の衣装が手に入ると知ってファルカナンドを目指した。


 幸いファルカナンドへは一度も行ったことがない人も多かったので野良で寄生みたいな感じで連れて行ってもらったし、お金払って衣装がもらえるクエストを手伝ってもらったりした。


 テスト勉強で頑張っている松木さんも気になるみたいで、それとなく塚原さんの話を聞いていたりする。松木さんの後ろの席だから彼女がどんな話をしているかも知ることができる。


 自分はなれなれしく話すべきじゃないかなぁ、と思ってたところ。衣装のことで話を振られてそれとなーく頼まれた気がする。気のせいと思ってもよかったけど好きな人に頼まれたらアピールしたいじゃないか。家に帰ってからの勉強は捗らないけど新たな使命を持った俺は家に帰るとすぐにゲームを開始する日々を送ることになった。


 誰だ! テスト期間中ぐらい勉強しろとかいうやつは!


 とはいうものの相手の好みとか何がいいかとか分からない以上…それなりに種類を集めないといけない。一発で彼女の好みの衣装を当てられるリア充性能は持ち合わせていないし、何やっても許されるイケメン補正もない。


 そして、種類を集めてもなんとなく全て彼女の好みをはずしそうなので相談することにした。あくまで相談。俺が頼まれたんだからきちんとやりたい。あの水着以外装備がない状態の時は結局力になれなかったというか自分だけ得したような気分だし。


「ん? …舞浜?」


 男の声がする。相談相手は女のはずだったんだけど、そういう場合もあるか、と思って振り向く。


「よっ」


「お! やっぱり舞浜じゃん」


 ちょっと照れる感じで返事をすると驚きの表情をしながらも彼は近づいてくる。塚原さんの…キョウさんの彼氏、リュウだ。


「どうしてここにいるんだ?」


「色々あってね…そっちは?」


「京子にここでって言われてな」


 どうやら俺が相談したかった相手の彼氏が来たのは必然だったようだ。


「お! 京子!」


 リュウが大きな声を出すのでそちらをみるとキョウさんがこちらに向かっていた。


「あら? 竜ちゃん舞浜君知ってるの?」


「まぁな、1年の時同じクラスだったし…てか京子も舞浜のこと知ってるのか?」


「今同じクラスだし」


 あ、俺としてはどちらも知ってたから考えてなかったけど二人としてはお互い俺と相手が知り合いだと思ってなかったらしい。


 竜一の方とは1年の時一緒だった。本来なら仲良くなるようなタイプでもないんだけど、1年の時最初に俺の席と隣だった奴が男女関係なく交友が広いやつで、そいつに「マイケル」ってあだ名をつけられてからクラスで知名度が上がってしまって、その関係でいろんな人に絡まれる中で竜一とも仲良くなった。


「それに今日は舞浜君に呼ばれてここに来たしね」


「へぇ、てかこっちで会ったことあるんだ」


 今日何故俺がここにいるのかはっきりと告げる塚原さんに少し慌てたけど竜一は普通に流してる。まぁ、特に怪しいとか思われてないんだろう…変な誤解を与えたらどうするんだ。塚原さんがニヤッとしているので狙ってたのかもしれない。


「で? 何のようなの?」


 普通の表情に戻った塚原…キョウさんに事情を説明する。


「んな! 舞浜お前!」


 リュウが慌てている。


「へぇ…渚に頼まれて衣装を…ねぇ」


 キョウさんはリュウを気にしない。


「え? 京子は知ってるのか」


「渚と一緒に行動してるみたいよ」


「まじか!」


 リュウのオーバーなリアクションにキョウさんと二人で首を傾げる。


「舞浜…俺のところにも噂は届いてるぞ」


「何の?」


 リュウが急に表情を和らげ俺に告げる。それを聞いてキョウさんは興味津々だ。


 ――なんか嫌な感じが…。


「いやなに、結衣ちゃんや京子を好きだという輩が多くてな」


 リュウがキョウさんに何か説明し始める。雲行きが怪しい…止めるべきだろうか。


「でも京子には俺がいるし、結衣ちゃんにはライバルが多いらしい…それで、あれ? 二人のそばにかわいい渚ちゃんがいるじゃないか、彼女なら俺でも…って思うやつがいるみたいだ」


「あちゃー、渚は優しくしたらついてきそうな感じだもんね…ペットとか妹みたいな」


 本人が聞いたらがっかりするだろう。まぁ俺も松木さん相手に庇護欲みたいなのがあるから塚原さんと一緒なんだろうけどね…。でもほらなんか松木さんは一人じゃできないこと多そうだし、人に手伝ってもらって「ありがとう」って言うのが似合いそうだし…。


「でもそんななか、俺は最初から松木さんしか興味ない、って言い放った勇者がいたらしい」


 ――しまった! 変なこと考えてたせいで止めるタイミングを逃した!


「なぜ…それを」


 そもそもなんでそれを知ってるんだ…情報源はどこだ。


 慌てる俺を見て塚原さんがにやりとする。


「渚は危ないオオカミさんから常に狙われてたのね」


「ぐふぅ!」


 精神的なダメージが…。本人に教えられるとまずい、と俺は冷や汗をかく。


「ムッツリだしな」


 リュウからの一言で俺は目の前が真っ白になるような感覚に陥る…この世界ってこんなに輝いていたんだ。


「まぁでも渚は彼氏がいないみたいだし…ほしいみたいだからチャンスあるんじゃない?」


 と言う塚原さんの言葉になぜか救われた気分になった俺は当初の予定である衣装の相談ではなく恋愛相談をしてしまったっこととその際に恥ずかしい話を惜しげもなくして自爆したのは言うまでもない。




 衣装の相談が不思議とうまくいかなかった俺は掲示板を頼りに人気の衣装を探してみた。男性からの任期はエイローで手に入るバニースーツやナース衣装あたり。エイロー近辺は狩れる範囲なので需要があるなら、と集めておいて他は彼女の好みであることを祈りながら仮装が楽しめそうな衣装を集める。


 一応クゥさんにもナギさんの衣装を集めてることは話してある、クゥさん曰く


「ナギちゃん周りに流されやすいから…ボクが動物の仮装してたらそれでもいいと思うんじゃない?」


 とのことなので動物シリーズも集めておいた。


 そんなところでクゥさんと会う。


「舞浜、集まったか?」


 クゥさんはナギさんへの衣装の収集状況を聞いてくる。


「まぁ…」


 とまずはエイローの衣装を言っていく。するとクゥさんは俺の肩を掴み真剣なまなざしを向ける。


「舞浜…欲望が透けて見えるぞ!」


 と勘違いされてしまった。確かに着てくれたらと思うと…ってそうじゃない。


 どんなに説明しても理解してもらえず最終的に


「舞浜…気持ちはわかるけど、焦って変なことしちゃダメだぞ」


 とか言われてしまった。


 後日掲示板でナギさんのファンが立てたスレッドを見ると、俺がエイローの衣装を必死に集めているところが話題に上がっていて「敵」認定を受けていた。


 …でもエイローの衣装を渡したことが発覚したら「勇者」とあがめられていたけどな。

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