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ナギ記  作者: 竜顔
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あの子は今

 クゥちゃんと二人でブティックを見まわっていると店のドアが開く音が鳴る。その足音は少し歩くと止まり、また歩き出す。


「お待たせ」


 足音が近づいてくるとともに声をかけられる。振り向くと当然ながらシンセさんだった。


「ナギちゃんの方の用事は?」


「終わった」


「そう~、じゃあ行こっか」


 シンセさんは私の用事が終わったと聞くと早速狩りへ行こうと促す。


「どこにするの?」


 そんなすぐに決めたシンセさんに少し疑問を感じている様子でクゥちゃんは聞き返す。今はどこの狩場も騒々しいことになっているはずだ。


「いい狩場があるの」


 と言うのでシンセさんについていくような感じで店を出る。なんでもゴブリン王国に行くというので私は念のために持っていた仮面をつける。


 イベント装備は使えるので今でも普通に装備している。と言うことはもちろんゴスロリ衣装だ。一応セット装備になっているので全身埋め尽くされてると思ったら仮面が装備で着てホッとする反面、見た目が不安だ。


「…ゴブリン王国では顔を見られると大変なの!」


 若干、あくまでも若干表情が引きつっているクゥちゃんに私は力強く言い放つ。ちょっ視線をそらすな!


 なぜかシンセさんに頭を撫でられて私達はゴブリン王国の王都に転移する。


 ゴブリン王国王都にはプレイヤーらしき人は見当たらなかったけれど色々な種族の人々が目に映る。理由としては秘密裏にダンジョンが実装されていてそれ目当てのNPCが来ているとのことだ。


「種族も増えて割ともう一つの世界をやってるんだね」


 クゥちゃんはその光景を見て感心するかのように言う。プレイヤーがイベントをやってる頃にNPCたちは新たに表れたダンジョンに潜って訓練とお金稼ぎをしてたというとろかな。


 シンセさんは道のりまで心得があるみたいでさっさと進んでいく。普段であれば王都の外のモンスターと対峙するとなればもう少し身構えるところだけどイベント衣装のおかげでその心配もない。


 ダンジョンの性質は普通のダンジョンと同じなようで、他のPTとも接触するタイプのようだ。浅い階層なら罠がなく特に警戒せずに済む比較的に稼ぎやすい場所、とのこと。


 ダンジョンへ向かう途中シンセさんにあの猫がどうなったか尋ねたら


「ナギちゃんのおかげですくすく育ったよぉ、お披露目はあとでねぇ」


 とのことだった。楽しみだ。


 視線が集まってくるのが気になったけど無事に王都を出ることができてホッとする。私は仮面を取り去ってシンセさんについていく。


 あ、ちなみにシンセさんはエルフの仮装だ。身長はそこまで高くないのですぐに仮装だとばれてしまうけれど、そのシルエットはエルフらしくもある。そのせいか途中でエルフの男性…多分NPCから


「そんなにエルフにあこがれてるなら俺との間に子を産まないか」


 とナンパされていた。…これはアウトなんじゃないだろうか運営。単に遊び心のつもりで作ったふざけた人格のNPCに奇跡的に絡まれただけだろうか。それとも実はプレイヤーだったとか?


 途中でNPCの男たちからパーティに誘われたけれどことごとく躱してダンジョンに入る。


「では、呼び寄せます」


 ダンジョンに入ってすぐにシンセさんはテイムしているモンスターを呼び寄せる。ウルフと…白い獣だ。


「ん? …この子?」


「そうだけどぉ、どうかした?」


 私の問いかけにシンセさんも少し戸惑うような反応を示す。確かにあの子猫なのだろう、私を覚えてるのかすぐに近寄ってきて顔をすりすりしてくる…かわいい。でも虎ではなさそうだ。ただ真っ白で虎のような縞模様はなかった。


「虎だったんじゃ…」


 白い獣に手をぺろぺろされながらシンセさんに尋ねる。


「今は豹みたいねぇ」


 シンセさんの口からは衝撃の一言が出てきた。黒豹は知ってるけど白い豹とは…。じゃなくて虎だったんじゃないの?


「でも前虎だ、て」


「まぁ色々あるのぉ、見てれば分かります」


 とどこか教師口調になるシンセさん。クゥちゃんはこれまでのやり取りがよく分かってないみたいで、尚且つ虎と言う単語が聞こえたので興味津々だ。どうやらシンセさんは名前を借りた相手には話してなかったらしい。


 だけどどんなに尋ねてもシンセさんから内緒と言われて私に詰め寄ってくる。


「ねえ、何か知ってるの? 虎って何?」


 と聞いてくるクゥちゃんに大まかに事情を説明する。それとシンセさんの顔にどこかイタズラっぽい表情がうかがえる。なるほど。


「クゥ! おいで」


「え?」


 シンセさんの掛け声に戸惑うクゥちゃんと、何の戸惑いもなく駆け寄っていく「クゥ」ちゃんこと白い豹。


「クゥちゃんがんばろうね」


「うん、え?」


 私は振り向いたクゥちゃんをスルーして白い豹に駆け寄り撫でる。向こうも乗り気みたいで頭を擦り付けてくれる。


 「本物」だけがぽかんとしている。


「あ、クゥちゃんには紹介がまだだったわねぇ、この子クゥって言うの」


「ええ! 勝手にボクの名前使わないでよ!」


 やっと事情を理解したらしいクゥちゃんがシンセさんに抗議する。


「でも可愛い猫ちゃんだったんだもん」


 シンセさんも負けじと抗議の表情で白い豹を抱き寄せる。


 「クゥ」ちゃんの戦う姿は中々カッコよく逞しかった。あんな可愛かった猫が洞窟のようなダンジョンを駆け回って敵を切り裂き、敵にかみつく。


 そして戦闘が終わるたびに「褒めて」というようにシンセさんのもとに駆けよっていく。甘えん坊なようだ。


 そしてシンセさんの言っていた「虎」の意味が分かったのは、シンセさんが「解放」というとそれまで真っ白だった体に黒いラインが浮かび上がり体が一回り大きくなって正真正銘の虎になった。


 その現象にクゥちゃんは興奮し、そしてどこかライバル視するかのように張り切りだした。


 しかしシンセさんによるとまだ豹の方は幼体らしく、戦闘に飽きてくると敵をほっぽりだしてどこかに走って行ったりする豹を叱るシンセさんの


「クゥ! だめでしょ!」


 と叱る言葉に虎の着ぐるみが勢いをそがれている。


「うぅ…自分が叱られているみたいでやりづらい」


「そんなことないよ、ほらクゥちゃんよしよし」


 私は最高の笑みで虎の着ぐるみの頭を撫でる。



「うぅ…馬鹿にされてるみたいだ」


「さっきのお返し」


 不本意ながら傷つけてしまったみたいなので、仮面をつけた時に目をそらされた仕返しとすることにした。


「ナギちゃんってさぁ…時々黒いよね」


 ぽつりと呟かれる言葉に内心大慌てなのは秘密だ。


 それから「クゥちゃん」と呼ばれてもそう簡単に動揺を示さないほどタフになった虎の着ぐるみはむしろ「本家」としてその豹をしつけるかのように色々と注文を付け始めるようになった。


 白い豹も最初こそ「この人うるさい!」と言う感じでシンセさんや私に「なんとかして」とでもいうかのように擦り寄ってきていたけれど、最終的には獣同士分かり合う部分があったのか「本家」になついていた。


 みんながみんな白い豹を中心にするかのようにかまっていたので、頑張っているのに全く相手にされないウルフがどこか哀愁漂う表情になっていたのは気のせいに違いない。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン初心者】Lv8【STR増加】Lv34【ATK上昇】Lv24【SPD増加】Lv29【言語学】Lv41【視力】Lv47【スーパーアイドル】Lv3【体術】Lv30【二刀流】Lv46【水泳】Lv28


控え

【幸運】Lv50


 SP9


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主

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