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ナギ記  作者: 竜顔
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一緒に写ろ

 ピーチさんによって舞浜君の精神がぼろぼろにされた翌日。普段と変わらない様子の舞浜君を見てホッとして終わった学校から帰ると、私が帰り着いたことで昼寝から起き上がったお母さんに言われておつかいにいかされた。


 そのせいでログインが遅れ、みんなはすでにダンジョンに入った後だった。クゥちゃんに確認したところバカップルの二人が今日はいるそうで、私の代わりにピーチさんがいて6人そろったのでダンジョンに入ったということなようだ。


 その時に不用意にクゥちゃんが舞浜君に私のことを尋ねたのでピーチさんに私と彼が現実での知り合いとばれてしまい、舞浜君は今日も窮地に立たされたそうだ。


 しかし、今日は救世主としてバカップルが舞浜君をその窮地から救ったらしい。それによってピーチさんから彼への「口撃」はなくなったみたいだ。だけど舞浜君はピーチさんに口撃されるよりダメージを受けてるそうだ。…それって救ったことになるのかな?


 クゥちゃんの報告にはなんか腑に落ちない点がいっぱいあるけどこの際おいておこう。ピーチさんは今ゆうくんに【鉄壁】のコツの指導をしてるそうで、曰く舞浜君よりいい盾という評価をしているらしい。


 次外に出る時にヴォルカに戻ってくるからその時にピーチさんと私が交代する予定になってるらしい。


 なのでそれまで暇になる。


 クゥちゃんとのコールが終わってその間何しようか、と考え始めると周りからの視線を感じるので見渡すと、男女様々な視線が私を囲んでいた。


 何だろう? 気味が悪いなぁ。


 そう思って一時的に別の町に避難しようと動き出すと、


「トリック・オア・トリート!」


 とどこかからその声が聞こえて振り向くと男の人が後ろに倒れるようにこちら側に飛び込んできて、男性の背中が私の視界から横にずれて外れると同時にかぼちゃ頭がカメラを構えていた。


 パシャッ


「うし!」


 シャッター音の後地面に後頭部を打った男の人は起き上がることもせずにガッツポーズする。


「ずるい!」


「くそ、反応できなかった」


「ちくしょー!」


 周囲の人々の叫び声が聞こえる。


「どうかしたんですか?」


 とりあえず飛び込んできた男性に聞いてみると、あからさまに視線をそらされる。周囲に疑問の表情を見せても同様な反応。


 すると再び


「トリック・オア・トリート!」


 とどこかから声がすると、


「はぁ!」


 標的にされたと思われる女性がこれまたものすごいスピードでこちらに飛び込んでくる。


「いかん!」


 先ほどガッツポーズをした男性もすぐさま立ち上がり私の横に立つ。


 パシャッ


「よし」


「あー! あんた…また!?」


 喜ぶ男性を標的にされた女性は睨みながら声を上げる。


「おいお前! ずるいぞ!」


「いや、今のはよくやった! 俺の時は見逃せよ」


 とかいう声が聞こえてくる。そして心なしか周囲を取り囲むようにして立っていた人達の距離が近くなっている気がする。


「大体あんた一度写ったんだからもういいでしょ!? どうしてスリーショ「おいお前!」…」


 何か怒ってるらしい女性は男性への文句を続けるも途中ではっとして言葉を止める。


 スリーショ? スリーショ…なんだろう。


「あのスリーなんですか?」


 私は女性に聞いてみた。


「いえ、こちらの話です」


 あからさまな作り笑いでごまかされる。男の人はどこかを見て口笛を吹いて…吹けてないですよ。


 睨み付けるような視線で周囲を見回せば少しだけ距離が遠くなっている。


 これ幸いとその包囲網(?)から抜け出そうと一歩踏み出すとさっきの女性から腕を掴まれる。


「なんですか?」


「今は無闇に動いては行けません、ご存知ですか? 実はあのかぼちゃ頭、時間帯によって出現しやすい場所が違うみたいです、それで今はこのヴォルカだそうで不用意に動けば恥ずかしいところを写真に撮られてしまいます、だからこうしていつ来てもいいように構えておかないと」


 と女性は周囲の人達を指さす。周囲の人達は少し頷く。


「でもお二方は相当恥ずかしい姿を撮られてたと思いますけど?」


「それは気のせい! です、気のせい、ねぇ?」


「ああそうですとも!」


 私の疑う視線での突込みに大げさなリアクションを取る二人。私のレーダーが二人を怪しいと言っている。


「あっ」


 女性が指差す。


「トリック・オア・トリート!」


「キター! うぉぉぉおおお!」


 今度標的にされたのは私の周囲を取り囲んでいた男性。ものすごい形相でこちらに向かってくるので私も顔が引きつっていることだろう。


「とりゃ!」


「おら!」


 すでに標的にされた二人は私の近くでポージングを取る。


 パシャッ


「くそぅ! お前ら!」


「あの!」


 今標的にされた男性が先に標的にされていた二人に怒りをぶちまける前に私が大きな声を出して黙らせる。周囲の人達も私の大きな声に呆気にとられてるみたいだ。


「私で遊んでますよね?」


「そ、そそそそそんなわけないじゃないか、ハハハハ…自分が有名人だからって自意識過剰になっちゃだめだよ」


 私の一言に周囲が驚いて目を丸くする中最初の男性だけが反論する。私はその男性を睨み付ける。


「ごめんなさいナギさん、どうしても一緒に写りたくて、でもスクショやら【画像珠】やらじゃ一緒に写ってくれないし、ヒミツに撮ったらいけないし…でもかぼちゃ頭は公式だからそれを利用すればって考えただけなの!」


「そうですごめんなさい! 俺はこんな男みたいに嘘をつくことはできません」


 と標的にされた女性と、さっき撮られた男性が謝ってくる。スリーショ…はスリーショットのことね。最初の男性は必死にツーショットになったと。


 それから周りの人々も次々に謝罪と一緒に写真を撮ってほしいという要望を言ってきた。とかやってると何度かかぼちゃ頭がやってきて撮られたけれど…よく分からないうちに撮影会が行われて、最終的にかぼちゃ頭も呼び止めて集合写真まで撮った。


「ブログに載せてもいいですかぁ?」


「「「いいですよ!」」」


 とブログをやってるらしい人が集合写真をアップしていいか尋ねている。もちろん私はツーショット写真は載せちゃダメと言ってある。


 一通り終わるとほとんどの人が去って行った。何人か残ってる人からパーティに誘われてるけど一応当てがあるのでと断っている。


 もう写真はこりごりだ。


 にしてもみんな遅いなと思ってたらヴォルカの門からみんながやってきた。


「ナギ様ー!」


「うげ」


 来て早々ピーチさんがその欲求を抑えられず私に抱きつく。すると


「トリック・オア・トリート!」


 と私の目の前にかぼちゃ頭が現れた。私はすぐさまクッキーを取り出して差し出すも標的は私ではなくピーチさんだったみたいで無情にもシャッターが切られる。


「やったぁ、ナギ様とツーショット」


 と頬を抑えて喜ぶピーチさんとは対照的に私はぐったりする。


「何かあったの?」


「えーっとね…」


 クゥちゃんに何があったのかを報告する。クゥちゃんからの「お疲れ様」の言葉をもらった後、自分を奮い立たせてダンジョンへと向かって、いつものように夜ご飯ごろにログアウトした。


 公式サイトにはかぼちゃ頭によって撮影された写真だけでなく集合写真も掲載され『ナギ様と一緒に写り隊のみなさん』と他の写真とは違いタイトル(?)が付けられていた。


 そして最後にピーチさんとのツーショットは余裕でピースサインするピーチさんと慌ててクッキーを差し出す私の姿が見事に写されており、こらえることすらできないほど京ちゃんから笑われ、散々いじられる要因となった。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン初心者】Lv5【STR増加】Lv33【ATK上昇】Lv17【SPD増加】Lv29【言語学】Lv41【視力】Lv46【スーパーアイドル】Lv2【体術】Lv30【二刀流】Lv44【水泳】Lv28


控え

【幸運】Lv50


 SP7


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主

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