嵐
書き始めが遅かったので更新遅れました。
申し訳ありません。
本日も学校から帰ってきたらすぐにログイン。
昨日ログインできなかったカッサは今日は問題ないらしいけれど、どうやらバカップルの二人は来れないらしい。
まぁ4人でも無敵状態の今の時期ならばそこまで気にする必要もないか。と第六エリアのダンジョンに向かってヴォルカから出ようとした時だった。
「やっと見つけたわ! ハァハァ…」
何となく感じる周りの視線とその目の光は同様に、だけど彼らと違って私達に向かって猛然と歩み寄ってくる人影に私達は戦慄した。その人影は聖樹で出会ったナース姿の不審者さんだった。今も何故か顔が紅潮している。
「見つかった! 逃げろ!」
舞浜君の言葉が早いか、よく事情も知らないであろうカッサもその異常を察知してすぐに逃げる。
「あ、ちょっと!」
女性の呼び止めるような声も聞かず門を出てそのまままっすぐダンジョンへと向かう。そのまま後ろも振り返らずに走ったこともあって、おそらく最速記録を達成したんじゃないかというくらい早くダンジョンにたどり着いた。
ここを目的とする人も多いのでそこに並ぶ人の列の最後尾に着くと呼吸を整える。
「で、誰なんだあの人?」
あの不審者と接触していないカッサは一息ついたところで問いかけてくる。
「ほら、この前聖樹で不審な人に会ったって言っただろ?」
「あ、ああなんか言ってたな」
舞浜君が答えると、カッサも思い出したようで納得している。
「だーれが不審者だって? 舞浜」
「ひぃ!」
声がする方を振り向いた舞浜君が悲鳴を上げて少し飛び上がる…ちょっとかわいいと思ってしまったのはその声の主がここにいることから現実逃避しようとしているせいだろう。あれ? これ仮想現実だっけ。
私はギギギという音がしそうな感じで首を声の方に向けると、その声の主と目が合う。その声の主はニコッと笑うので、こちらも作った満面の笑みを投げかけるとその声の主は両掌を頬にあてて左右に首を振り始めた。
「キャ、ナギ様からその微笑みをもらっちゃった」
「病気だ」
声の主…こと不審者さんの言動にカッサが魂の抜けた声で即座に突っ込む。
「そ、それよりもカッサ君とは会ったことないけど三人とは会ったことあるでしょ? なのに逃げられてもめげずに探してやっと見つけたって人が悦に入ってそれに浸りながら一歩一歩踏みしめているところをまた逃げるなんてひどいじゃない」
とカッサの言葉に反応しつつも視線を舞浜君からそらすことなく言い募る。ちらっと別の方向を見るとクゥちゃんがさっと身構える。
「キャ、クゥ様」
クゥちゃんを見ても私の時と同様の行動をとる女性にカッサは呆れている。
「じゃ…俺達このまま」
「待って! 私も連れてって!」
ダンジョンは人が多くて並んでるとはいえ、別にただ入るだけなのですぐに前に進み私達の順番がやってきた。そのまま何事もなくダンジョンに入ろうとした舞浜君を不審者さんは呼び止める。
「いやぁ、でも」
「今は空きがあるでしょ? ありますよね、ナギ様?」
戸惑う舞浜君に不審者さんは詰め寄って、埒が明かないと思ったのか私の方に顔を向けて問いかけてきた。
「え…まぁ」
あ、みんなの視線が痛い。後ろからの視線が痛いのは「早くダンジョンの中に入れよ」という意味だろうけど、パーティからの視線が痛いのはどうしてかな。
「じゃあオッケーね、舞浜、あんたがリーダーみたいだから早く招待して」
女性は舞浜君に顔を近づけ逃げられないように両手首をつかむ。どうやら女性は、私とクゥちゃんには様付、カッサは君付けなのに舞浜君だけ呼び捨てらしい。
「後ろもつかえてるし…とりあえずパーティに入れて早く入ろうぜ」
カッサが諦めたように舞浜君に言うと、舞浜君から私に向けて少し抗議の視線が飛んでくる。それに気づいた不審者さんは「メッ」と舞浜君に軽いチョップを繰り出していた。
不審者さんことピーチさんを加えた私達はカッサに先導されながらいつも狩りを行っている部屋へと向かう。道中にどうやって狩りを行うかをピーチさんにも教える。
「あナイト気取りの舞浜! なにナギ様を見つめてるの! あなたもしかぐふぅ!」
「うるさい」
ピーチさんはおしゃべりな人でものすごいマシンガントークだ。事実誰一人ついていけずピーチさん以外だんまりだ。そして少しアクセルを踏むとこうしてクゥちゃんに殴られている。
「あぁ…クゥ様ぁ」
『ナギちゃん…俺正直もっと反対するべきだったと後悔してるんだが』
クゥちゃんに殴られては恍惚の表情になり、私が適当に相槌を打てば喜び、舞浜君のことは悪口言ったと思ったら激励したり、カッサにはほぼノータッチだったピーチさ…不審者さんをそろそろカッサも本当の意味で危ない人だったと考え始めたらしい。
『私も、嘘でも枠空いてないというべきだったね』
まだ一度も戦闘してないのにもう疲れていた。
部屋にたどり着くとカッサが例のごとく各所の罠を解除しに向かう。部屋に取り残された4人黙っていると、
「舞浜! 私はナギ様とクゥ様のファンよ! あなたもそうだろうからライバルになるわね! …ぁ、ライバルから始まる恋もあるかもしれないけどそれは…」
不審者さんはまた一人で妄想の世界に旅立ってしまった。
「あのさぁ…」
妄想の世界に旅立ったのだから放っておけばいいのに舞浜君は不審者さんに不満の声を上げる。
「何!? 何々? 私にも何かいかがわしいことを? ある筋からの情報ではあなたがナギ様にいかがわしい衣装を渡したって聞いてるんだからね!」
不審者さんの反撃に舞浜君は精神ダメージを受けて一瞬で再起不能にまで陥った。舞浜君落ち着いて、彼女は元々そのいかがわしい衣装着てる人だから。
「そ、その話どこから!」
「…あなたがそういうの集めてるって聞いただけだけど本当だったなんて! スケベ!」
ピンク色のナース服相手に舞浜君は墓穴を掘ったらしい。南無。
「前は静かだったのに今日はうるさいね」
クゥちゃんが依然と違って見える不審者さんに突っ込む。
「はぅぅぅぅ…クゥ様ぁ、はぁはぁ」
違わないかもしれない。
「はっ! 私としたことが、えーっとこの前は皆さんの関係性を探っていたと言いますか…人と人との関係がどんなものか想像するのが好きなんですよねぇ、私」
どうやら様子を探っていたので静かだったみたいだ。
「でもカップルの二人は大して見てる感じじゃなかったよね?」
「想像するまでもないあの関係は見ててつまらないですよね…」
クゥちゃんのさらなる質問には俯くようにして不審者さん答える。このときばかりはバカップルがかわいそうだと思ったのは秘密だ。
「リア充は憎いよね」
「…それとは違います、クゥ様はリア充が嫌い、と」
「は!」
落ち込むかのような雰囲気ながら不審者さんはちゃっかりクゥちゃんのことをメモしていた。クゥちゃんにとってはジョークだったらしいけど本音としてメモされてしまったみたいだ。
「今日ついてきたのはちょっと気になることがあったのと、それを知る前に逃げられそうだったので」
「気になること?」
真剣な表情になったピーチさんの言葉にクゥちゃんが首を傾げる。「はぅぅぅ!」とか聞こえるけど気のせいに違いない。きっとピーチさんはちゃんと真剣な表情のままだろう。うん。
「そのためにはカッサ君に戻ってきてもらわないと…」
「ん? ただいま」
今日は精神ボロボロな舞浜君の背後から現れたカッサが、神々しい救世主に見えた。
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NAME:ナギ
【ブーメラン初心者】Lv2【STR増加】Lv32【ATK上昇】Lv9【SPD増加】Lv28【言語学】Lv41【視力】Lv46【スーパーアイドル】Lv1【体術】Lv30【二刀流】Lv43【水泳】Lv28
控え
【幸運】Lv50
SP6
称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主