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ナギ記  作者: 竜顔
152/276

折り返し

 イベントが始まってから一週間が過ぎた日曜日の11:00に公表されたランキングは以下の通り。


1位 ホムラ

2位 アッキー

3位 ガイア

4位 ジェット

5位 センタロウ

6位 ホーク

7位 ライガ

8位 カラテオウ

9位 ムサシ

10位 ガッツ


 この10位までが褒賞がもらえて、3位までの褒賞に【猛者の証】が含まれる。


 上位の傾向としては前衛の人が多く、特に物理アタッカーが多い。大量のモンスターを短時間で倒すイベントの特性上、詠唱が必要な魔法系はPTプレイでないと数が稼ぎにくく、前衛の人はちょっとした暇があればソロでもさくっと狩りに行けることが要因だと考えられている。


 イベントも折り返しを過ぎこの中の上位陣から1位になるプレイヤーが出てくるだろう。という予想がほとんどで、頭一つ抜けた状態のホムラがこのまま1位で突っ走ってしまいそうだ。


 そんな上位陣には追い付けないとあきらめて、かぼちゃで獲得できるポイントと交換できるアイテムで、自分がほしい物が手に入るくらいには頑張りたい私達は第六エリアにあるダンジョンをメインに狩りを行っていた。


 途中休憩のために街に戻ると、かぼちゃ頭がやってきてミカちゃんに「トリック・オア・トリート!」と言い放つ。するとミカちゃんは冷静に、かつ機敏に応対して写真を撮られることを回避した。





 月曜日。


「クク…アハ、渚、お、おはよぅ…クク」


 笑いながら挨拶してくるのは京ちゃんだ。画像で笑うことはもうなくなったらしいけど実物を見てぶり返したらしい。


「ひどくない?」


 むすっとして抗議する。


「大丈夫、似合ってるから…ただ普段との違いで…ね?」


 顔は赤くめちゃくちゃいい笑顔で京ちゃんは弁解する。もはやそれは弁解かどうかも分からないけれど。


 京ちゃんからは約一日いじられ、しかもその画像を結衣ちゃんに見せて結衣ちゃんも少し笑いながら「でも似合ってるよ」と優しく笑いかけてくれたけど何の慰めにもならなかった。


 テストの方もようやくすべての教科が返ってきた。結果的には自分の中で納得のいくいい点数が取れていたけれど、合計点では舞浜君に負けていた。…落ち込んだのは言うまでもない。





 家に帰ってきたらログインする。ゲーム内の時間は夜になっていた。普通なら最強状態の「狩人殺し」が出てくる夜の時間帯に第六エリアに出る人はいない。しかし死なないイベント、ということで夜の狩人殺しの恐ろしさを知っている人も時間帯に関係なく第六エリアに出ていく。


 もっとも夜の狩人殺しを倒せた人はいないみたいで、その存在に度々狩りの邪魔をされるそうだ。私達も夜の時間帯にヴォルカとダンジョンを行き来するときに妨害にあった。突如襲われたと思うと吹き飛ばされて、目的地にたどり着くのに無駄に時間がかかった。


 前日はヴォルカでログアウトした私達の、集合場所になっているヴォルカの門の前に着く。最近周囲から見られている気がするけれど気のせいだろう、ということいしている。


「ナギちゃんが一番?」


 門について少しするとカッサがやってきた。


「なんかめっちゃ視線感じる」


 やってきたカッサは苦笑いしながら周囲を見渡していた。


 それからクゥちゃん、舞浜君、カップルの二人がやってきた。カップルの二人が今日は少し距離が遠いのは気のせいだろうか。


 全員なんとなく触れてはいけない気がしたのかスルーしてダンジョンの方に向かう。


「狩人殺しには気をつけろよ」


 松明を持って歩くカッサが全員に言い聞かせる。カッサは【視力】のスキルを取ったらしく、松明を持たずに姿を消すなりして一人でダンジョンまで行けるんだけど、一人で行って待つと他のPTと間違ったり面倒なことになるかもしれないから、とみんなと一緒にダンジョンに向かっている。


 狩人殺しに妨害されることなく無事にダンジョンまでたどり着いて、そのまま中に入る。


 何故ダンジョンから出るのか。第六エリアのダンジョンは、元々いるモンスターを倒しても再び湧き出るけれど、時間が経つとともにその間隔が長くなる。


 なのでそれをリセットさせるためにダンジョンから出る。


 そうするとダンジョン内の罠もリセットされ、何度も繰り返せば当然カッサが酷使されることになる。もっとも本人としては罠解除に走り回るよりトレインのために走り回る方がきついらしいけど。


 途中で会うモンスターを蹴散らしながらいつものように大部屋へとたどり着く。そこからカッサが罠解除のために走り去ってその間は寄ってくるものは消し、何も来なければ雑談。


「あのぅ、他に衣装って持ってないですか?」


 これまではこういう時ゆうくんと二人で世界を作っているミカちゃんが私とクゥちゃんに話しかけてくる。


「どうかしたの?」


 これは何かあると考えてミカちゃんの質問には答えずに聞き返す。そもそも二人はお揃いのピクシー衣装で、他に衣装がないか、と尋ねられればそのペアルックをやめたいということだろうし、バカップルの二人にはありえない事象だ。


「別れたの?」


 クゥちゃんもカップルの二人に何かあったと気づいたみたいだ。…でもクゥちゃん、昨日まであんなに仲が良かった二人が一日の間にそこまで行くのは早すぎないだろうか。


「…かもしれないです」


 か弱い声でミカちゃんはつぶやく。きっとこれは別れ「た」かもしれないではなく、別れ「る」かもしれないという意味だと思う。


「喧嘩でもしたの?」


 こういう時自分に経験があれば色々言えたのかもしれないけど、今の私には聞くことぐらいしかできない。


「そんなところです…あんな人とは思いませんでした」


 ミカちゃんの言葉は前半は暗く、後半は少し怒気がこもっていてちらりと視線はゆうくんの方に向いていた。私もそれにつられてちらりとゆうくんを見ると、向こうも舞浜君に話しかけていた。


 確か二人とも現実でクラスメイトなんだっけ? だとしたら今日の学校で何かがあったのか。


「あんな人といつまでも同じ格好じゃ嫌ですし…他の衣装持ってないですか?」


「うーん、ボクは他の全部売っちゃったし」


 マジで!? カップルの二人このことを考えていた私の思考はクゥちゃんの一言で吹き飛んだ。驚きのあまり目を見開き、クゥちゃんの方を見た。


 他は全部売ったってことは…虎しかないの!?


「あのぅ、ナギさんは?」


「え!? あ、えーっと」


 ミカちゃんの問いかけに私は我に返る。といっても私は舞浜君から渡されたエイローシリーズ(天使、バニーガール、ナース)と着ぐるみが少々。


「えーっと天使とか着ぐるみとかかな」


「…舞浜渡したんだ」


 私が「危ない衣装」は伏せて説明すると、クゥちゃんが何か知っているのか小さな声で呟いていた。


「じゃあ着ぐるみお願いします」


 と言われたのでミカちゃんに兎の着ぐるみを渡す。顔が出ないタイプで、これで私達のPTに新たな着ぐるみが加わることになった。ゆうくんの方はヴァンパイアになっていた。


 カップルが二人で世界を作ることである程度空気が柔らかくなっていたのかもしれないと思うほど部屋には重い空気が漂っていた。そこにカッサが戻ってきてそのままトレインのためにみんなが部屋を出ていく。


 戻ってくるとクゥちゃんも戻ってきて戦闘中だった。私は狂気じみていると言われたあの時から暴れまわることはやめてちまちまと戦っている。


 ミカちゃん、カッサ、ゆうくん、舞浜君の順に部屋に戻ってきて、全員が揃ってからモンスターを消していく。


「ナギちゃん、あれ…」


 モンスターをすべて倒し終えてホッと一息つくとクゥちゃんに肩をつつかれる。そしてクゥちゃんの指さす方を見るといつの間にやら仲直りしていたらしいバカップルがいちゃついていた。


 とりあえず二人の仲が戻っってよかったと思う反面、以前よりアツアツ度が増した二人のおかげで別の意味で部屋の空気がピリピリしていた。


 獣神様。お怒りを御鎮めになってください。



――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン使い】Lv30【STR増加】Lv32【ATK上昇】Lv8【SPD増加】Lv28【言語学】Lv41【視力】Lv46【アイドル】Lv30【体術】Lv30【二刀流】Lv43【水泳】Lv28


控え

【幸運】Lv50


 SP46


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主

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