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ナギ記  作者: 竜顔
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トリック・オア・トリート!

 聖樹を抜け出してルージュナに出ると後ろを振り向きもせずに転移ポータルに乗ってカッサとの合流場所であるヴォルカの町に到着する。


「はぁはぁ…巻いた?」


「さすがに転移場所まではわからないんじゃ…」


 クゥちゃんと問いかけに舞浜君が返す。


 ナース服の不審者は聖樹から脱出した後も後ろから声が聞こえていたのでついてきていたのだろう。その人を巻くことができたとわかってホッと力が抜ける。


「よぉ、どしたの? えらくお疲れムードみたいですけど」


 そこへ訪れたカッサがみんなの様子を見て問いかけてくる。ちなみにカッサの今の恰好は海賊だ…下っ端だけど。


「トリック・オア・トリート!!」


 カッサの問いかけに答えようと舞浜君が少し動いた瞬間、突如として通りかかったマントを羽織ったかぼちゃ頭がやってきた。


 あまりの突然のことにポカンとしていると


 パシャッ


 とマントの中からカメラを持った手が出てきたと同時にそんな音が鳴る。


「え?」


「え?」


「では、お楽しみください!」


 そう言ってかぼちゃは戸惑う私達を置き去りにポンッと消えていった。


「何…今の?」


「あっ聞いたことあります」


 私の問いとも言えない呟きにミカちゃんが我に返って反応する。


「なんでもトリック・オア・トリート! って言われてクッキーを渡せばイベントに便利なアイテムがもらえるんだそうです、でも渡せなかったら写真を撮られるそうです」


「なるほど…っていうか今実際その目にあったしね」


 ミカちゃんがどこで聞いたのかわからない情報を口にするとカッサが頷く。


「そしてその画像が公式サイトに載せられるそうです…」


 ミカちゃんの言葉にみんなの表情が少し引きつる。…クゥちゃんの表情はわかんないんだけどそんな空気を出している気がする。


 さらに話によるとそれを知っている人でもなかなか、トリック・オア・トリートと言われてすぐにクッキーを差し出すことに成功するのは難しいらしい。確かにあの一瞬で全てのことが終わるならばそれにも納得だ。


 ミカちゃんが話をしている途中に冷静さを取り戻した私は、あの時の状況に考えが巡っていた。


 よく考えてみれば、カッサはカメラに背中を向ける状況だった、舞浜君は普段と大して変わらない騎士の恰好だった、クゥちゃんは一応顔が見えてないしバカップルは私を含めた四人の後ろに座り込んでいたからばっちりとられてはないだろう。


 …あれ? 私が一番被害にあう気が。


 その不安がよぎった私がみんなにこのことを話てみた。するとミカちゃんが


「そもそもナギさんに向けて言ってませんでした? 下手するとナギさんしか撮られてない可能性も…」


 とか私の不安をさらに募らせることを言う。


「でも多分イベント中だけでしょうから大丈夫ですよ」


 もはや慰めにもならないミカちゃんの言葉は一応ありがたく受け取った。


 気持ちが沈む私をよそに他のみんなはカッサにヴォルカにたどり着くまでのことを説明していた。カッサは「お前らが厄日なの? それともナギちゃんだけの厄日に巻き込まれたの?」と少し面白そうだったので抗議の意を目に宿す。


 聖樹から逃げてきたので整っていない準備をヴォルカで整えてダンジョンに向かって出発する。第六エリアは私達にとってはまだ楽に戦えるような場所ではないけれど、普段だと気が付けば囲まれるぐらいモンスターが大量に湧いて出るエリアなだけに人も多く、ダンジョンまで安全に進むことができた。


「じゃあ、このダンジョンには大きい部屋が一つあるからそこで狩り、でいいよね?」


 ダンジョンに入る前のカッサの確認にみんなが頷く。そしてダンジョンへと入って行く。


 ダンジョンの中を目的の部屋までカッサが慎重に罠を解除しながら進む。【鉄壁】は相手の攻撃とタイミングを合わせて発動することに成功するとすべてのダメージが0になるというもの、その性質の為か罠によるダメージは通してしまうみたいなので、斥候の重要度は普段と変わらない。


 モンスターと遭遇するたびに戦闘を行いながら目的の部屋にたどり着く。


「じゃあこの階層の罠全部解除してくるから、それまで来たやつを倒す、で」


 と言ってカッサは大きな部屋から出ていった。


 カッサが戻ってくるよりも早くモンスターが襲来する。普段ならもっと気を張って戦う相手なんだけどめちゃくちゃゆるんで戦うことができる。


 そうやってやってくるモンスターを聖樹の時と変わらずクゥちゃんがノーガードで殴り伏せて対処する。


 何体かのモンスターがやってきて、それを返り討ちにしているとカッサが戻ってきた。


「ただいま」


「うぉ!」


 姿が見えないようになっていたカッサが急にクゥちゃんの後ろから声をかける。モンスターをKOしてその余韻に浸っていたクゥちゃんは見事に驚かされて虎のように吠えた。


 驚かすことに成功したカッサはお腹を押さえて笑い、着ぐるみを着ててもわかる怒りのオーラがクゥちゃんから漂う。


「で、誰がトレイン行く?」


 と怒りのオーラを纏うクゥちゃんを気にもせずカッサがみんなに話しかける。


「…てか罠がないならみんなでそれぞれかき集めてこの部屋に戻ってくるでいいんじゃない?」


「じゃあそうしようか」


 舞浜君の提案にカッサが乗る。誰からも意見が出なかったので舞浜君の案はそのまま採用され、カッサがダンジョンの大体の構造をみんなに教えると同時にルート分けをおこなって、それぞれ部屋から駆け出してモンスターをかき集める。


 一応ダメージは0になるといっても吹き飛ばされたりすることはあるのでそれに気を付けながらそこら辺にいるモンスターの標的となって走っていく。


 割り当てられたルートの、ちょうど折り返し地点辺りの時


『渚、公式サイト見た?』


 と京ちゃん…キョウからコールが来た。


『さっきトリック・オア・トリートと言われて写真を撮られたことかしら?』


 ミカちゃんの言うことが本当ならば、わざわざ京ちゃんが公式サイトのことに触れてくるのはそれぐらいしか考えられない。


『口調がおかしくなってるわよ、…クク、まぁ、似合ってププ』


 声だけでも必死に笑いをこらえているのがわかる…というかこらえきれてないし。


 運営、仕事が早いな! と心の中で皮肉を思い浮かべながら部屋に戻ってくる。スピードでは私にも匹敵するクゥちゃんと距離の短かったミカちゃんがすでに部屋で大量のモンスターに囲まれていた。


 クゥちゃんはここ最近のノーガードを極力封印しヒット&アウェイで視覚からの不意打ちで体勢が崩れないように注意している。一方ミカちゃんはその不意打ちで詠唱の邪魔をされるみたいで、今は諦めて杖で殴るにシフトしている。


 私はミカちゃんの方に近づくと【スポットライト】でミカちゃんの周辺にいたモンスターごと私に注意を向けさせる。そして私を中心に【サークルスラッシュ】を発動してブーメランを投げる。


「あ、ありがとうございます! 詠唱します!」


 なぜか変にかしこまっているミカちゃんを無視してそのまま攻撃を続ける。ブーメランを投げては当たらなかった連中にダガーを投げて突き刺す。そしてリーステスの剣をもって【ファルカナンド・エンブレム】でモンスターの群れを壁と壁に挟ませる。


 それによってできる隙はミカちゃんの光魔法が埋めてくれる。


 そのタイミングで男三人が戻ってきて部屋はもう飽和状態になる。


「とりあえずミカチャンを守って光魔法で消して…」


 舞浜君の言葉が終わる前に私がすぐさま【ファルカナンド・エンブレム】で飽和状態のモンスターを壁に押し付ける。先ほどと違って全く余裕がないぎゅうぎゅう詰めにされたモンスターが消えるエフェクトがちらほらと目に入る。


 それに目もくれないうちに【スポットライト】のクールタイムが終了し、すぐさま発動する。そして部屋中のもほとんどのモンスターが私に目を向ける。


 それからアーツを使える時にふんだん無く使い、みんなの頑張りもあって部屋に集まったモンスターは気が付けばいなくなっていた。


「…ふぅ、すっきりした」


「何かあったのですか?」


 さっきから妙にかしこまっているミカちゃんの質問に、京ちゃんから言われたことを言う。するとみんな納得したような表情になる。


「…ナギちゃんってたまに狂気的になるよね?」


「プリンセスバタフライの時もですよね?」


「あ、そういえばテスト期間中もなんかすごかった」


 クゥちゃん、ミカちゃん、舞浜君のこっそりとした会話は私の耳に入り、「クゥちゃんも人のこと言えないんじゃ…」という私の非難の目は誰も受け取ってくれなかった。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン使い】Lv29【STR増加】Lv29【ATK補正】Lv22【SPD増加】Lv24【言語学】Lv41【視力】Lv44【アイドル】Lv30【体術】Lv30【二刀流】Lv43【水泳】Lv28


控え

【幸運】Lv50


 SP42


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主

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